✒ 新年!あけおめ 3
──*──*──*── 社寺
白い雪がチラチラと降る中、和傘を差しながら近所にある社寺へ向かう。
近所の社寺は人気がないのか──、雪がチラチラしている所為なのか──、初詣に来る人は少ない。
歩けないぐらい人間で混み合っている神社へ初詣に行く事を避けたいオレにしてみれば、参拝者の少ない近所の社寺は、貸し切りみたいで嬉しい気持ちになる。
霄囹
「 フン!
何だよ。
ガラガラじゃないかよ!
新年早々しけてるなぁ 」
マオ
「 シュンシュン!
社寺にお祀りされてる御霊に失礼だろ! 」
セロフィート
「 何処の神社,お寺に参拝しても、感謝の祈りは〈 久遠実成 〉へ届きます。
態々遠くの神社,お寺へ足を運び、人に揉まれながら大変な思いをして参拝する必要はないです。
御近所にある神社,お寺を大事にしましょう 」
マオ
「 そうだよな!
遠出すると疲れちゃうもんな! 」
霄囹
「 つまり何処の神社,寺で初詣したり参拝しても御利益は同じな訳だな 」
セロフィート
「 人間の霊を神格化して祀っている神社,お寺は駄目です。
諸天善神,諸菩薩に対する冒涜です。
あくまでも諸天善神,諸菩薩がお祀りされてる神社,お寺に限ります。
人間の霊を神格化し、信仰の対象として崇めても、所詮は人間の霊です。
諸天善神,諸菩薩にはなれませんし、諸天善神,諸菩薩の様な不思議な力は無いです。
神格化し、信仰の対象として崇め奉るよりも、諸天善神,諸菩薩へ冥福を祈り、供養する事が大事です 」
霄囹
「 人間の霊を神格化してる神社,寺でも御利益はあるじゃないか 」
セロフィート
「 手を合わせて祈れば、不思議は見せられます。
目には見えずとも人知を超える不思議力が世の中に存在している事を人間に教える為に、様々な不思議を見せられます。
不思議な事が起きたからといって、其処の神社,お寺が必ずしも正しいとは限りません。
のめり込むのは良くないです。
教えの皆無,教えの正邪,信じる度合い,心掛けの正邪,大自然の法則,道徳,四適に確り適しているか──等々、様々な条件により、不思議の強弱は変わります。
教えには、普遍平等,妥当な理義,絶対確実の三要素が揃っていなければ、“ 正しい教え ” とは言えません。
三要素の中で絶対に欠かせない不可欠な条件は “ 絶対確実 ” です。
命,生活,財産を懸けるなら、“ 絶対確実 ” の無い教えを盲信してはいけません。
陰陽師を名乗るなら、それぐらいは知っていてください 」
霄囹
「 フン!
陰陽道は宗教とは無関係──じゃないけど… 」
セロフィート
「 霄囹さんは宗教と信仰について、1から学び直す必要がありますね。
安心してください、ワタシがみっちり教えましょう 」
霄囹
「 激しく遠慮したい! 」
セロフィート
「 駄目です。
ワタシのマオをたぶらかし、連れ出した責任を取ってください♪ 」
霄囹
「 ぬあぁ゛~~~~!!
やっぱり怒ってるんじゃないかぁ!! 」
マオ
「 ──参拝、終わったぞ。
シュンシュンも早く参拝しろよ 」
霄囹
「 あ、あぁ…… 」
社寺で初詣の参拝を終えたオレ達は、裏野ハイツへ帰る事にした。
長い階段を下り切った時、上から「 賽銭泥棒ぉ~~~~!! 」って、誰かが叫ぶ声がした。
マオ
「 賽銭泥棒?
新年早々やらかす奴って居るんだ? 」
霄囹
「 流石は犯罪天国都市って言われるだけあるな。
めでたい日に罰当たりな事を仕出かすなんて、勇者だな 」
マオ
「 感心してる場合じゃないだろ~~ 」
?
「 邪魔だ!
退けぇ!! 」
霄囹
「 うわっ!? 」
マオ
「 シュンシュン!
大丈夫かっ!? 」
歩いていると誰かに後ろから乱暴に押されたシュンシュンがフラつく。
咄嗟にオレが手を伸ばして支えたから、シュンシュンは倒れなくて済んだ。
マオ
「 危なかったな~~。
人を後ろから押しといて謝りもしないなんて、なんて奴だよ! 」
霄囹
「 たく……。
逃げるなら賽銭泥棒なんかするな! 」
セロフィート
「 どの様な事情があろうとも〈 久遠実成 〉の供物に手を出すとは──。
嘆かわしい事です 」
マオ
「 セロ……。
思ってないだろ~~ 」
セロフィート
「 分かります? 」
マオ
「 分かるよ… 」
霄囹
「 賽銭泥棒にとっては、正月は稼ぎ時なんだろうな 」
賽銭泥棒の話ながら歩いていると、何かと何かが激しくぶつかる音がした。
その前にはギュルルルル──って、車の急ブレーキが掛かる音もした。
マオ
「 何だ?
また事故かよ 」
霄囹
「 犯罪天国都市は正月も騒がしいな。
早く帰って温かいおしるこを食べたいよ 」
マオ
「 えぇ~~ぜんざいだろ? 」
霄囹
「 おしるこだよ! 」
マオ
「 ぜんざい! 」
セロフィート
「 どちらも食べれます。
両方、味わえば良いです 」
マオ
「 そうだな!
つぶ餡が美味い、ぜんざいを味わうと良いよ! 」
霄囹
「 フン!
こし餡が美味いに決まってるだろ!
こし餡は御上品な餡だからな! 」
マオ
「 はぁ~~?
つぶ餡だって御上品な餡だよ! 」
セロフィート
「 はいはい。
どちらも美味しいです 」
セロはシュンシュンとオレが、こし餡が1番なのか、つぶ餡が1番なのか──って事で言い合っている様子を楽しそうに見ている。
まさかシュンシュンが “ こし餡派の信者 ” だったなんて知らなかった。
オレと同じ “ つぶ餡派の信者 ” だと思ってたのにぃ!!
霄囹
「 ──おい、マオ!
セロフィート、見ろよ!
裏野ハイツの近くに立ってる電信柱の棒に人が刺さってて死んでるぞ!! 」
マオ
「 えっ?!
マジかよ…。
何で裏野ハイツの近くにある電信柱なんだよぉ~~!! 」
セロフィート
「 正月早々周囲が賑やかになります 」
霄囹
「 サツが来やがるのか…。
此方は何も悪い事をしてないってのに…… 」
マオ
「 なぁ、電信柱の横棒に刺さって奴、シュンシュンを突き飛ばした男じゃないのか? 」
霄囹
「 そうかぁ?
後ろ姿しか見てないからな~~ 」
セロフィート
「 彼は賽銭泥棒です。
どうやら大型トラックと衝突した反動で此処まで飛ばされた様です。
通報しときましょう 」
マオ
「 第1発見者になっちゃったな、シュンシュン 」
霄囹
「 最悪な正月になりやがった!! 」
セロフィート
「 事情聴取は〈 器人形 〉に行かせれば良いです。
女装したマオの〈 器人形 〉も用意しましょう 」
マオ
「 セロぉ!
有り難な! 」
セロフィート
「 マオも霄囹さんも部屋に入ったら姿を戻してください 」
霄囹
「 セロフィートぉ!
恩に着るよぉ!! 」
セロフィート
「 はいはい。
どう致しまして 」
セロ,シュンシュンと一緒に裏野ハイツの敷地内へ入る。
セロが102号室のドアを開けてくれたから、シュンシュンと一緒に中へ入った。