⭕ 玄武とデート 9
室内の中を手分けして男女を探していると、浴室からシャワーの音がしていた。
水が出ているみたいだ。
マオ
「 どっちかが入浴中なのか?? 」
気味が悪いけど、オレは思い切って浴室のドアを開けてみる事にする。
「 キャーーー! 」って叫ばれた時は…………何とか誤魔化そう!
オレはゴクリ……と唾を呑み込みながら、ドアノブを握る。
恐る恐る浴室のドアを開けてみた。
──*──*──*── 浴室
ジャグジー付きの浴槽の中に水が張られている。
湯じゃなくて、水だ。
水の色は白く濁っていて、どうやら入浴剤が入っているみたいだ。
マオ
「 シャワーから水が出てない……。
蛇口からも水は出てない……。
水が出ていた音は何だったんだ?? 」
首を傾げながら浴室の中を見回すけど、特に怪しい感じはしない。
浴槽に張っている水を抜いてみる事にした。
オレは栓を引っ張る。
浴槽に張られている白乳水が、音を立てながら抜けていく。
白乳水が少なくなって来ると、人の身体が見えて来た!
人の身体は女の裸体だった。
女の裸体は浴槽に埋まっている。
“ 入っている ” じゃなくて、“ 埋まっている ” だ。
何で人体が浴槽に埋まってるのか分からないけど、これは明らかに尋常ではないし、人間業では無いのは見ても分かる。
オレは慌てて浴室を出る。
ベッドのある部屋に戻ると玄武さんとシュンシュンが別の死体を見付けていた。
別の死体ってのは、男の裸体だ。
男の裸体はベッドの下──床に埋まっていたらしい。
女の身体と男の身体が埋まってる理由は分からない。
尋常ではない力が能いているのは明らかだし、確かだ。
マオ
「 何で……何がどうなってるんだよ… 」
霄囹
「 これは拙い事になったぞ 」
マオ
「 シュンシュン、“ 拙い事 ” って? 」
霄囹
「 玄武、手伝え。
この部屋に付いた僕達の指紋を消す!
僕達が居た痕跡を抹消するんだ! 」
玄武
「 うむ、それが良いな。
第一発見者になっては困るからな 」
シュンシュンと玄武さんは陰陽術を使って、オレ達3人の痕跡を消す作業を始めた。
何か、セロが2人居るみたいだぁ~~。
霄囹
「 ──よし、終わったな。
転移陣でルームキーの部屋へ転移するぞ 」
マオ
「 あっ、それならドアから出る必要ないもんな! 」
てな訳で──、シュンシュンの転移陣でルームキーに書かれている308号室の室内へ転移した。
──*──*──*── 308号室
霄囹
「 さて、これからの事を話し合おうか── 」
マオ
「 話し合うって? 」
霄囹
「 先ずは、このラブホに設置されている全て防犯カメラを回収して破壊する!
映像が警察の手に渡らない様にする為だ 」
マオ
「 シュンシュン、別に防犯カメラを回収しなくても良いんじゃないか? 」
霄囹
「 マオ、僕達はエレベーターから降りて、部屋に入ってないんだぞ。
この階に着く前に、エレベーターから例の部屋に移動していたんだ。
廊下を歩いて、この部屋に入った映像が映ってないのに、この部屋から出る映像が映っていたら怪しまれるだろう。
怪しまれる要素は排除しとくに限る 」
玄武
「 確かに一理あるな。
目撃者は居るが、何かする必要もないだろう 」
霄囹
「 僕はセロフィートじゃないからねぇ。
目撃者を消すなんて出来ないんだ。
ラブホの利用者なんてのは山程居るからな、受け付けのオバちゃんも一々覚えてないだろう 」
マオ
「 でもさ、死んでた2人を “ 麻薬の売人だ ” って言って嘘を吐いちゃったじゃんか。
2人を尾行して隣の部屋のルームキーを貸し出してもらっただろ?
そんな相手の事を都合良く忘れてくれるかな??
然も、男が1人と女が2人の3人組がラブホテルを使うなんて珍しいと思うし…… 」
霄囹
「 そんな事を言われてもねぇ。
生憎と僕は人の記憶を弄くれる様な陰陽術は使えないだよねぇ。
そんな妖しを式隷してないしな… 」
玄武
「 防犯カメラの回収は式神にさせれば良いだろう。
セロに相談して何とかしてもらうしかあるまい 」
マオ
「 だけど……、セロは出掛けてて居ないしな… 」
霄囹
「 暫く、あの部屋には誰も入れない様にしよう。
陰陽術でもそれぐらいは出来る。
玄武も明後日には他県へ行くんだろ? 」
玄武
「 あぁ。
次はA県で対局をするからな 」
マオ
「 A県まで行くの!?
此処ってY県だよね?
遠くない?! 」
玄武
「 次の宿泊ホテルになっている宿泊室に転移する事になっているから問題ない。
ホテルのチェックインもチェックアウトも我がする必要はない。
マネージャーの〈 器人形 〉が前以てしてくれるからな 」
霄囹
「 成る程な。
玄武が宿泊ホテルの中を移動するのは食事をする時と出掛ける時ぐらいって事か。
Y県に居た奴が明後日にはA県に居る。
よし、明後日迄は部屋に入れない様にするとしだ──、無理矢理に抉じ開けようとしたら発火する様に仕掛けておくとしよう 」
マオ
「 シュンシュン!
それは幾らなんでもやり過ぎなんじゃないか! 」
霄囹
「 発火させるったって、死体まで燃やす訳じゃないさ。
死体は燃えない様に結界を張っておく。
事件が起きて騒ぎになった頃には、僕達は既にY県から他見に移っている。
容疑者として目を付けられたりしやしないさ! 」
玄武
「 そうだな。
名残惜しいが明日の対局を終わらせたら寄り道せず真っ直ぐホテルに戻るとしよう。
その日の内にA県の宿泊ホテルの宿泊室に転移する 」
霄囹
「 僕達は玄武の対局を見終わったら、そのまま弓弦の泊まる宿泊施設へ向かう。
Y県から離れるなら早い方が良いからな! 」
マオ
「 まるで逃走犯みたいだなぁ~~ 」
霄囹
「 異界も消えたし、このラブホには用はない。
出ようか 」
玄武
「 そうだな。
相変わらず澱みは晴れてないがな 」
霄囹
「 澱みを晴らすには、正しく供養するしかないねぇ。
僕達には関係無い事だよ。
放っとけば良いのさ 」
そんな訳で、オレ達は部屋から出たら、エレベーターに向かって廊下を歩いた。
マオ
「 あれ、エレベーターが故障中になってる??
使えないって事か… 」
玄武
「 どういう事だ?
1階ではエレベーターに乗れた筈だが? 」
霄囹
「 階段を使うしかないのか。
下りで良かったな~~ 」
オレ達はエレベーターを使わずに階段を使って1階へ下りた。
──*──*──*── 1階
マオ
「 あっ!
1階のエレベーターも故障中になってる!
どゆこと?? 」
霄囹
「 僕達が使った後に故障したんじゃないのか? 」
玄武
「 いや、待て。
貼り紙を見てみろ。
エレベーターが故障してから1週間は経っている様だ。
本来ならばエレベーターは使えない筈だ 」
霄囹
「 へぇ~~。
どうやら僕達はまんまとラブホに住み憑いていた妖し達に一杯食わされた様だねぇ。
まぁ、逆に返り討ちにしてやった訳だけどねぇ 」
マオ
「 受け付けに居たオバちゃんがヤンキーっぽい兄ちゃんに変わってる! 」
玄武
「 妖しは、エレベーターを異界への入り口として利用していた訳か。
手の込んだ事をされたものだな 」
マオ
「 ねぇ、お兄さん!
あのエレベーターって本当に1週間前から故障してるの? 」
受付のヤンキー
「 あぁ?
そうだけど?
修理するにも金が掛かるからって、当分は使用禁止だぜ。
まっ、オーナーはドケチだからな~~、一生修理しないかも知れねぇな 」
マオ
「 ………………そうなんだ…。
教えてくれて有り難う! 」
オレはヤンキーな兄ちゃんから聞いたエレベーターの事を玄武さんとシュンシュンに話した。
霄囹
「 興が冷めたな。
観光の続きでもしよう 」
玄武
「 そうだな。
さっさと《 ホテル街 》から出るとしよう 」
マオ
「 そ、そうだね… 」
これと言って解決してはないけど、オレ達はラブホテルから出る事にした。
ラブホテルから出ると、真っ昼間だってのに人が多い。
皆●●●●するのが好きなんだな~~~~って、染々と思う。
《 ホテル街 》で怪奇現象の被害に遭う人達が何人出る事やらだ。