⭕ 玄武とデート 5
──*──*──*── 異界
エレベーターが停まって、チン──と鳴る。
ガコン──と音が鳴ってエレベーターの扉が開いた。
霄囹
「 エレベーターに式神を残しておこう。
出るぞ 」
マオ
「 えぇっ!?
エレベーターから出るのかよ?
ホテルに戻らないのか? 」
霄囹
「 あのなぁ、異界だぞ、異界!
異界を作り出してる奴を祓って異界を無くさないと、このラブホに入った人間が次々に行方不明になるんだ。
異界に迷い込んだ人間は異形,怪異にとって御馳走なんだ。
餌認識されてる人間は喰われる。
現実世界に戻って来やしない。
被害者を増やさない為には退治するしかないんだ。
退治しないと僕達も現実世界には戻れない。
覚悟を決めろ 」
マオ
「 オレ、手ぶらなんだけどぉ! 」
霄囹
「 見えないマオには期待してない。
玄武に守ってもらってろ! 」
エレベーターの中に1体の式神を残したシュンシュンは1番にエレベーターから出る。
玄武
「 マオ、大丈夫だ。
セロの代わりに我が責任を持ってマオを衛る。
行こう 」
玄武さんは陰陽術を使って、オレの右手首と玄武さんの左手首を何かで繋げた。
マオ
「 玄武さん、これは? 」
玄武
「 はぐれない為にな。
手錠の様な物だ。
シュンシュンとはぐれる事もあるだろう。
我もエレベーターの中に式神を残して行くとしよう 」
マオ
「 何で式神を残して行くの? 」
玄武
「 帰り道を見失わない為だ。
仮に異界で迷ってもエレベーターに式神を残していれば、辿り着けるからな 」
マオ
「 へぇ、そうなんだ? 」
玄武
「 3m間隔で式神を目印に残しておけば、異界でも安心して探索が出来るんだ。
目印の半径1mは安全地帯になる。
何か有れば、目印に近付けば良い 」
マオ
「 式神って便利だね 」
オレは玄武さんと一緒にエレベーターの中から出る。
エレベーターの扉は開いたままで、閉じる気配はない。
既に目の前にはシュンシュンが目印の為に式神を残している。
シュンシュンの式神の色は橙色をしている。
暖かみを感じる色だ。
玄武さんが目印に使う式神の色は安心感のある青緑色だ。
シュンシュンの姿が見えないけど、どんどん1人で先に進んでしまってるみたいだ。
玄武
「 我等も式神を召喚して先に進むとしよう 」
マオ
「 玄武さん、何時の間に戦力になる様な式神を使役したの? 」
玄武
「 ははは。
我は陰陽師だからな。
プロ棋士になったからと言って、囲碁ばかりしていた訳ではないぞ 」
玄武さんは使役している式神を召喚する。
人間の陰陽師みたいに印は切らないんだな~~。
シュンシュンも普段は印を切らないで陰陽術を使ったり、式神を召喚するんだよな。
ドラマの中では印を切りまくってるけど~~~~。
マオ
「 玄武さんもシュンシュンと同じで印を切らないんだね 」
玄武
「 そうだな。
印を切る作業は、数珠に似ているんだ 」
マオ
「 数珠ぅ??
何で数珠と似てるの? 」
玄武
「 神佛と意思の疎通が出来る霊観能力を授かっている人間に数珠を持つ必要がない様に──、人間離れした法力を持つシュンシュンや我は態々丁寧に印を切る必要がない。
法力を制御し、安全に陰陽術を使う為に印は切るものだ。
“ 印を切る ” からといって身の丈に合わない陰陽術を使えば失敗する。
人間が陰陽術を使うならば、印を切った方が暴走する確率を減らせるものだ 」
マオ
「 そうだったんだ。
ちゃんと “ 印を切る ” 意味があるんだね 」
玄武
「 ≪ 日本国 ≫の陰陽師達が知っているかは分からんが。
印を切らず陰陽術を使う,式神を召喚する陰陽師は多少なりとも居る様だ 」
マオ
「 でもさ、印を切らないからって寿命が縮む訳じゃないんだよね?
法力だけじゃ足りない分の対価に “ 寿命が削られて、ごっそりと持っていかれる ” って事は無いんだよね? 」
玄武
「 対価に寿命を取られるのか?
それは聞いた事が無いな。
我は知らぬが、シュンシュンなら知っているかも知れぬぞ。
我よりも陰陽師歴は永い様だからな 」
マオ
「 そっか、そうだね!
シュンシュンに聞いてみるよ!
えぇと──玄武さんが召喚した式神って──、犬ぅ?? 」
玄武
「 うむ、可愛いであろう。
和犬と呼ばれる犬種だ。
小型犬の姿にしている。
歩き方も可愛くて癒されるであろう 」
マオ
「 そ、そうだね……。
異界に居るのに和むね…… 」
確かに小型犬は可愛いけど、異形,怪異と遭遇したら戦えるのかな??
「 一寸不安かも~~~~ 」って思いは、玄武さんに内緒にしとこう。