⭕ 玄武とデート 4
──*──*──*── ホテル街
マオ
「 ………………なぁ?
何でオレ達、森林公園から離れた場所にある《 ホテル街 》を歩いてるんだ? 」
霄囹
「 事件の匂いがしたからに決まってるだろ。
陰陽師の勘だ! 」
マオ
「 玄武さんを巻き込む必要があるのかよぉ? 」
霄囹
「 はぁ?
じゃあ何かぁ~~、マオは女2人で《 ホテル街 》を歩きたいのかよ?
僕は嫌だぞ!
男の玄武が一緒の方が《 ホテル街 》をブラ付いてても怪しまれないだろが 」
マオ
「 玄武さんは明日、大事なプロ棋士の対局が控えてるってのに── 」
霄囹
「 安心しろ!
僕は陰陽師だぞ!
パパっと片付けてやるさ!
玄武だって陰陽師なんだ。
自分の身ぐらい守れるだろ? 」
マオ
「 シュンシュン、オレ達は刑事でもなければ探偵でもないんだ。
事件は専門家に任せて、観光に戻ろうよ 」
霄囹
「 “ 面白い事が起きる ” って分かってるのに後を着けない馬鹿が居るかよ! 」
マオ
「 セロみたいな事を言うなよ~~ 」
霄囹
「 おっ、ラブホの中に入ったぞ!
僕達も行くぞ!
盗み聞きする為に隣の部屋を借りないとだ! 」
オレ達は刑事でも探偵でもないのに、シュンシュンが “ 怪しい ” と言ったカップルを尾行している最中だったりする。
シュンシュン曰く女の身体にブレを見たらしい。
どうやら女は “ 何か ” に憑かれているらしく、身体と意識を乗っ取られている状態らしい。
オレにはさっぱりだけど、式妖魔の玄武さんにも女の様子が普通の状態ではない事は見て分かるらしい。
というか玄武さん曰く、そんな状態の人間は其処等中に居るらしい。
然して珍しくもない事なんだとか。
マオ
「 あっ──、シュンシュン! 」
玄武
「 仕方無い。
マオ、付き合ってやろう 」
マオ
「 玄武さん…。
何だ彼だ言ってもシュンシュンに優しいよね 」
玄武
「 そうか? 」
自覚が無くて首を傾げる玄武さんと一緒にラブホテルへ走るシュンシュンの後を追う。
マオ
「 …………それにしても随分と年季の入ったラブホテルだよね…。
何か出そうな雰囲気かも?? 」
玄武
「 ほぅ?
マオにも分かるか。
ならばこのホテルは相当な場所だと言えるぞ 」
マオ
「 えっ…… 」
玄武さんは、オレを見てニヤッと笑う。
玄武
「 久し振りにまともな妖かしを相手に出来るかもな 」
マオ
「 えぇ~~ 」
何でか陰陽師の玄武さんにスイッチが入っちゃったみたいだ。
玄武さんから左の手首を掴まれて、年季を感じるラブホテルの中へ入った。
──*──*──*── ラブホテル・ラヴィシュ
──*──*──*── 1階
ラブホテルの中へ入ると既にシュンシュンが受け付けでチェックインを済ませていた。
マオ
「 シュンシュン── 」
霄囹
「 遅いぞ、マオ,玄武!
さっきのカップルがチェックインした部屋の左隣の部屋の鍵だ。
右側の部屋は既に使用中らしい。
行くぞ! 」
マオ
「 受け付けのオバちゃんにガン見されてるんだけど…… 」
霄囹
「 気にするな!
事情は話してある。
奴等が麻薬の売人で、現行犯逮捕する為に尾行中だってな! 」
マオ
「 勝手に犯罪者にして良いのかよ…。
然も “ 尾行中 ” ってバラしてるし… 」
霄囹
「 構うもんか。
ほら、行くぞ! 」
ルームキーを持ったシュンシュンの後を追って、エレベーターに乗り込んだ。
──*──*──*── エレベーター
霄囹
「 このラブホ、予想以上に良いねぇ~~。
エレベーターの中に5体も憑いてるじゃないか 」
マオ
「 は??
5体も??
何が居るんだよ?
オレには見えないんだけど? 」
玄武
「 大丈夫だ、マオ。
セロも言っていただろう。
世間一般的に言われる “ 幽霊 ” と呼ばれる幽体,霊体には “ 何か ” を起こす力は無い。
其処に佇んでいるだけだ 」
マオ
「 それは聞いてるけど…… 」
玄武
「 輪廻の流れへ還る際に稀に残る “ 残留思念体 ” だとも言っていたな。
澱みの悪影響を受け過ぎると “ 残留思霊体 ” となり、世間一般的に “ 地縛霊 ” と呼ばれる存在に変化するとも言っていた。
このホテルは場所が悪い。
澱みが集まり易い環境になっているな。
エレベーターの中に憑いている幽霊とやらは、地縛霊になりかけているぞ 」
マオ
「 えぇ~~!?
地縛霊になる前に何とか出来ないの? 」
玄武
「 供養してやる事が1番だが、1度の供養では駄目だ。
ホテルを取り壊し、鎮魂する為の慰霊碑を立て、春季,盆,秋季,冬季の供養を毎年欠かさずする事だ。
供養は霊観の強い坊主に依頼すると良い。
先祖の供養に終わりはない。
50年で止めず、100年,150年,200年と長く継続する必要がある 」
マオ
「 随分な大事になるんだ…。
セロなら1回で終わらせれるのにな… 」
霄囹
「 そんな事をしたら、《 ホテル街 》一帯が慰霊碑だらけになるねぇ~~。
それはそれで嘸見物だろうけどねぇ!
強引で乱暴な手段にはなるけど、祓うのが手っ取り早い。
浄霊は面倒だからな、除霊するに限る 」
マオ
「 じょれいとじょれい??
何が違うんだ? 」
玄武
「 浄化の “ 浄 ” と霊体の “ 霊 ” で、“ 浄霊 ” と言うんだ。
主に地縛霊,悪霊,怨霊,死霊の類いを丁寧に切り離し、不浄を清め、未練を無くし、輪廻の流れへ還す方法だ。
確かに浄霊は手間と時間が掛かるし、体力と集中力もある程度ないと出来ない。
霊観の弱い者には出来ない芸当だ。
陰陽師は式神を使い対処する為、浄霊はしないな 」
マオ
「 そうなんだ… 」
霄囹
「 もう1つは、取り除くの “ 除 ” と霊体の “ 霊 ” で、“ 除霊 ” って言うんだ。
言葉通り、地縛霊,悪霊,怨霊,死霊の類いを半強制的に引き離し、力ずくで容赦なく祓う定番の方法だ。
霊観の弱い奴は真似しない方が良い。
強制的に引き離すと霊的存在は興奮して凶暴になるんだ。
簡単に除霊をさせてはもらえないからなぁ。
逆に取り憑かれて身体を乗っ取られるか、喰われるかの2択が多いな~~。
一見簡単そうに見えてポピュラーな除霊も命懸けなんだ。
陰陽師は使役している式神に相手をさせ、弱らせてから祓うから多少は安全だ 」
マオ
「 ふ~ん……つまり、陰陽師は式神にリンチさせて、十分に弱らせてからトドメを刺す訳だ? 」
霄囹
「 その通りだ。
はっきし言って、陰陽師業はボロい商売なのさ!
幾らでも報酬金額を吹っ掛けて、ぼったくれるからねぇ!
陰陽師様々だよ 」
マオ
「 それはシュンシュンだけだろぉ~~。
何か除霊される霊的存在が不憫に思えて来たよ…… 」
霄囹
「 まぁ、幽霊を地縛霊,悪霊,怨霊,死霊の類いに変えてしまう原因を作ってるのは誰でもない人間だからねぇ。
結局、人間は何時だって自覚の無い加害者なのさ。
加害者のくせして、被害者ぶって助けを求めるのさ。
そのお蔭で、ボロ儲けさせてもらえるんだから、有り難いよねぇ 」
マオ
「 ………………何時の時代も人間は加害者か…。
≪ 大陸 ≫でも≪ 島国 ≫でも人間の在り方は変わらないんだな…… 」
玄武
「 それにしても随分と長いな。
何時まで乗っていればエレベーターは停まるんだ? 」
マオ
「 そう言えば……。
シュンシュン、ボタンは押したんだよな? 」
霄囹
「 ちゃんと押したよ。
エレベーターは上に向かって動いてるだろ。
このラブホは5階建てだ。
5階は等に過ぎてやがるのさ 」
マオ
「 玄武さん……シュンシュン…… 」
玄武
「 どうやら迷い込んでしまった様だな 」
マオ
「 迷い込んだって?? 」
霄囹
「 世間一般的には “ 異界 ” って呼ばれる場所にさ。
極偶に起こる現象なんだ。
稀に起きる珍しい現象で、“ 神隠し ” とも呼ばれているねぇ。
僕の言った通り、面白くなって来ただろ? 」
マオ
「 マジかよ…… 」