⭕ 少年★陰陽師★探偵 1
──*──*──*── テレビ局
──*──*──*── 楽屋
春舂霄囹
「 はぁ~~~。
陰陽師の僕が何で探偵するんだよ、全く…… 」
僕は春舂霄囹。
此処ではない別の≪ 島国 ≫で暮らしていた。
≪ 平城京 ≫で60歳を向かえた僕は、強くなる為、より長く生きる為に捕らえた妖魔を喰らいまくり、人間を捨てた。
≪ 平城京 ≫が場所を移り≪ 平安京 ≫と名を代えて繁栄していた頃、「 ≪ 大陸 ≫から来ました 」と言う渡り人のセロフィート・シンミンとマオ・ユーグナルと出逢った。
出逢った時は双方が敵対する関係だったが、セロフィートやキノコンが僕より遥かに強い存在であり、僕なんて足下にも及ばないちっぽけな存在だと思い知った後──、僕は生き残る為にプライドを捨てて、セロフィートに尻尾を振った。
命を優先してセロフィートの傘下に下ったんだ。
僕だって決して弱くはない。
ただ、セロフィートとキノコンの強さがデタラメに桁違いってだけだ。
剣術に於いては、マオにも敵わないと自負している。
強い者に従うのは、異形,怪異の世界でも同様なんだ。
僕はセロフィートに服従した事を後悔しない。
後悔する時が来たとしても、それは遠い未来の僕の事。
その時の僕に丸投──任せようと思う。
厳蒔屋敷で過ごすようになって、散々な目に遭わされた事も有りはしたが、多少は打ち解けれたと思っている。
流石に手を繋いで仲良しこよしなんて出来る仲ではないけれど、僕が厳蒔屋敷で過ごせれたのは、マオの存在が大きいと思う。
マオは不思議な奴だ。
気に入らない奴ではあるが、嫌いにもなれない。
僕を “ シュンシュン ” と呼んで馴れ馴れしくして来るのはマオだけだ。
外見的な年齢が近い所為もあるかも知れないが、不思議と嫌ではない。
玄武にも “ シュンシュン ” と呼ばれているが、イカサマをして引き籠らせてしまった罪悪感もあるからな……呼ばせている。
11月に本来の “ 式神バトル ” ってヤツを開催して見せ付けてやった翌年──、セロフィートとマオの提案もあり、旅行に行く事になった。
此処と似ている≪ 島国 ≫が在るとマオが言ったから、連れて来てもらったのが≪ 日本国 ≫だった。
“ 似ている ” って言っても、妖魔,妖怪,物の怪,妖かし,異形,怪異,霊体,幽霊,生き霊,悪霊,怨霊,死霊,地縛霊…等々が存在している──って所ぐらいだ。
陰陽師,退魔師,祓い師も居るには居るが、僕からすれば話にならない程のカスだ。
“ カス ” ってのは言い過ぎかも知れないけど、≪ 日本国 ≫に存在している妖魔,妖怪,物の怪,妖かし,異形,怪異,霊体,幽霊,生き霊,悪霊,怨霊,死霊,地縛霊の類いは、僕の式神の相手にもならない程に弱い。
倒すなんて楽勝だ。
多額の報酬を提示しても文句なんて言われないし、仕事の依頼はドンドン入って来る。
幾らでもボレるのって良いよねぇ~~。
僕以外の陰陽師,退魔師,祓い師なんて廃業に追い込んでやる!
セロフィートに “ 陰陽師アイドル ” なんてもんにされて、TV業界に投げ込まれて、歌って踊れる客寄せパンダみたいに利用されて──、踏んだり蹴ったりだ。
まぁ、稼がしてもらってるから文句を言える立場じゃないけどな。
オカルトブームってヤツに肖って、心霊関係の仕事には困らないし、動画配信の伸びも上々だ。
鰻登りで絶好調な僕にまかさの月9ドラマからの出演オファー。
然も、主役に抜擢と来ている。
主役──主人公が現役の高校生で陰陽師って設定だ。
妖怪退治のシーンは出ると有名な心霊スポットで本格的に撮るって聞いていたから、セロフィートに頼んで承諾してもらったのに、何故だか探偵要素まで入れられている。
昼間は高校の校内で頻発する事件を解決し、夜は陰陽師として妖怪を退治する。
高校の校内で頻発する事件を起こしていたのは人間だったが、裏で妖怪が絡んでいる事がドラマの中盤で判明し、高校の校内で推理バトルやら陰陽バトルやらが増えて来る。
終盤の台本が無いから内容は分からないが、主人公の決め台詞は決まっていて「 真犯人は貴様だ!! 」らしい。
然も、主題歌は僕が歌う事になった。
バックダンサーはキノコン。
過去に一斉ブームを巻き起こした変なダンスが振り付けになっている。
曲のタイトルは「 謎は推理★shock★サスペンス 」らしい。
台本を読んで考えられた歌詞らしいが、全く以て信用が出来ないな。
春舂霄囹
「 全く……セロフィートに『 やりたい! 』って言った建前、『 やっぱ止める! 』とは言い難いからな…… 」
キノコン
「 霄囹ちゃまの決め台詞、カッコいいですエリ!
主題歌のバックダンサーも頑張りますエリ! 」
春舂霄囹
「 キノコ~~~ン!
有り難なぁ~~(////)
キノコンが僕の式神として友情出演を許されてホッとしてるよぉ~~ 」
キノコン
「 霄囹ちゃま、暑苦しいですエリ★ 」
春舂霄囹
「 そゆこと言うなよ~~。
傷付くじゃないかぁ~~。
キノコンと僕の仲だろ~~。
一蓮托生じゃないか~~ 」
僕はキノコンに抱き付いて、キノコンの顔に自分の左頬をスリスリさせる。
キノコンは危険極まりない存在だけど、僕から危害を加えない限り大人しい。
僕に対してフレンドリーなのはセロフィートの命令を忠実に守っているからだ。
間近で僕を監視して、セロフィートに逐次報告をしているんだろう。
僕は別に構わないけどね!