⭕ 女装兄弟 7
洗面脱衣室から出て来た玄武さんは、大人の姿に戻っていた。
腕組みをして、ソファーに腰を下ろして座っている。
足を組んでいる姿は威厳を感じる。
うん、怖いな…。
シュンシュンは絨毯の上に正座をしている。
オレは玄武さんと同じソファーの上に腰を下ろして座っている。
シュンシュンからは「 何でお前はソファーに座ってるんだよ! 」って言ってる様な顔で睨まれている。
おっかないな~~。
玄武さんの御説教は長かった。
式妖魔って御説教が得意技なのかな??
玄武
「 ──今回の事はセロに報告しておくからな 」
霄囹
「 セロフィートにチクるのか?
それだけは止めてくれぇ!! 」
シュンシュンはセロに告げ口される事を恐れて嫌がっている。
顔面を蒼白させて物凄く嫌がっている。
物凄く必死に玄武さんに取り入ろうとしてる……。
シュンシュン……簡単にプライドを捨て過ぎじゃないかな?
別に態々玄武んがセロに報告しなくても、セロなら把握してると思うんだよな~~。
シュンシュンとオレが2人だけで玄武さんに会ってる事も、把握してるんじゃないかって思ってる。
セロに密告する必要だって無い。
何でかって?
セロは古代魔法が使えるし、オレにはプライバシーなるものが無いからだ。
何をしていても全部、セロに筒抜けって事だ。
セロと魂の契約をして、セロだけのマオになった当初は知らなかった事だけど、永く一緒に居て旅をしたり暮らしたりしていれば、遅かれ早かれ気付くもんだ。
オレの場合はセロからカミングアウトされる形で知ったんだよな……。
然も当然の様に当たり前の様にセロからカミングアウトをされて、最初は文句を言ったり、セロを責めて駄々を捏ねたりして困らせた時もあったけど──、どうでも良くなった。
コロコロ変わるオレの反応を見て、嬉しそうに面白がるのがセロだ。
セロのする事に関しては早々に飽きらめて、寛大な心で受け入れないとセロの相棒なんてやっていけないって気付いたんだ。
オレは悟ったんだ。
そんな事は横に置いといて、今は玄武さんの足にしがみ付いて命乞いでも始めそうな勢いのシュンシュンを宥めてやらないといけない。
シュンシュン──、プライドを何処に落としちゃったんだ??
玄武さんだって本気でセロに告げ口する気なんて無いと思う。
本当にセロへ報告する気なら態々シュンシュンに「 報告するからな 」みたいな事を言う必要が無いからだ。
シュンシュンに黙ってセロに密告すれば良いんだもんな。
だけど玄武さんは、その選択を選ばなかった。
何かとやらかし過ぎるお騒がせなシュンシュンに対する釘刺し──牽制なのかも知れない。
マオ
「 シュンシュン──。
1回、落ち着こう。
厳しい口調だけど、玄武さんだって、本気で怒ってないよ。
やり過ぎたシュンシュンに反省してもらいたいだけだからさ。
だよね、玄武さん 」
玄武
「 さてな。
どうだろうな? 」
玄武さんは意地悪そうにニヤッと笑う。
マオ
「 玄武さ~~ん!
おちゃめが過ぎるよ… 」
玄武
「 はははっ……。
どうやらマオには、お見通しの様だな 」
此方に来て生活を始めてから、玄武さんは良く笑う様になったと思う。
向こうで暮らしていた時よりも人間味が出ている気がする。
良い傾向だと思う。
玄武
「 そろそろ昼食の時間だ。
1階の食堂へ行くか 」
マオ
「 もうそんな時間なんだ?
シュンシュン、食堂へ行くってさ! 」
霄囹
「 ……………………あぁ…… 」
シュンシュンは元気がない。
すっかり落ち込んでるみたいだ。
マオ
「 シュンシュン、玄武さんはセロにチクったりしないよ。
安心しろって!
本気でチクるつもりなら、態々シュンシュンに教えたりしないよ。
シュンシュンに黙って、こっそり密告するって!
だよね、玄武さん! 」
玄武
「 さてな。
どうだろうな? 」
またまた玄武さんは意地悪そうにニヤリと笑う。
マオ
「 玄武さ~~ん!
シュンシュンが余計に落ち込んじゃうよ 」
玄武
「 そうなのか?
そんなにシュンシュンは打たれ弱かったか?
我にイカサマで勝ちを奪った図太い神経を持ち合わせているのにか? 」
マオ
「 玄武さ~~ん 」
玄武
「 悪かった。
マオに免じて大目に見よう 」
マオ
「 有り難う、玄武さん!
シュンシュン、玄武さんが許してくれるって!
良かったな、シュンシュン! 」
オレは既に落ち込んで元気の無いシュンシュンの手を握って、背中をポンポンと軽く叩いてやった。
マオ
「 ほら、シュンシュン!
昼食を食べに行こう!
美味しい料理が食べれるぞ! 」
玄武
「 料理は食べ放題だ。
料理代は宿泊代に含まれている。
好きなだけ食べると良いぞ 」
マオ
「 えっ、食べ放題?!
シュンシュン、聞いたか?
好きなだけ食べて良いってさ!
早く行こう! 」
玄武さんがドアを開けてくれる。
オレはシュンシュンの手を引いて、宿泊室から出た。