⭕ 女装兄弟 6
シュンシュン VS 自称プロ棋士のお姉さんとの囲碁対局は、ものの10分もしない内に決着が着いた。
シュンシュンは微塵も容赦をしなかった。
お姉さんはシュンシュンに負けて項垂れている。
まさにコテンパンだ。
玄武さんは優しいから相手に合わせて指導碁を打つ事が出来るけど、シュンシュンは指導碁を打てないみたいだ。
シュンシュンが打てるのは手加減皆無の勝負碁とイカサマ碁ぐらいだろうか。
シュンシュンはオレより強いけど、玄武さんに勝てた事は1度も無い。
イカサマをしないと勝つ事が出来ないぐらい玄武さんは強い。
実際にイカサマをして1回勝ってるし。
その所為で玄武さんは何ヵ月も部屋に引き籠って出て来なかった。
何か懐かしいなぁ……。
──って思い出に浸ってる場合じゃなかった!
マオ
「 お姉さん………… 」
自称女流棋士
「 …………嘘よ…。
置石の事もまともに知らない子供に…………負けた…… 」
霄囹
「 大口叩いたくせに大した事なかったなぁ!
素直に黒石と置石をしてれば、多少は見られる対局が出来たかも知れないのになぁ!
意地なんか張って、プライド重視にするから、惨敗なんていう御粗末な結果になるのさ!
全く──、その程度の棋力でプロを名乗るなんてレベルが低い低い!
9子だって?
ハンデとして足りないから10子,20子って言ってやったんだぞ!
此方の厚意を無下にして、この様じゃなぁ~~。
臍で茶を沸かせる──ってもんだ! 」
?
「 ほぅ?
臍で茶を沸かせるなら沸かせてもらいたいものだな 」
霄囹
「 へ? 」
この聞き慣れた声は──!!
マオ
「 玄武さん!
あっ、いや……玄武──、久し振り~~ 」
玄武
「 ……………マオか?
{ 何故女装している? }」
マオ
「{ これには色々と訳があって── }
観光から帰って来たの?
お帰り! 」
玄武
「 ただいま。
一体何をしていた? 」
笑顔を見せてくれた子供姿の玄武さんが首を傾げている。
マオ
「 えと、このお姉さんとシュンシュンが対局をしたんだ。
{ シュンシュンがコテンパンに負かしちゃって勝っちゃったんだ }」
玄武
「 対局?
シュンシュン──、手加減はしたのだろうな? 」
霄囹
「 手加減?
ハッ!
何を言うかと思ったら──、この僕が手加減なんてするわけ無いだろ!
本ガチで負かしてやったさ!
玄武の泊まってる部屋に1人でノコノコ来る様な破廉恥な売女を成敗してやったんだ!
感謝して良いぞ! 」
玄武
「 誰が売女だ!
囲碁界に貴重な女流棋士の1人だぞ!
彼女を侮辱をするな 」
霄囹
「 玄武……。
僕は玄武の為にだな── 」
玄武
「 私の為だと?
──頭痛と目眩がして来たぞ…… 」
マオ
「 玄武さ──じゃなくて、大丈夫? 」
クラッとフラ付いた子供姿の玄武さんに両手を差し出して、身体を支える。
玄武
「 …………済まない、マオ。
助かった… 」
マオ
「 立ち眩みが起こるのも分かる気がするし…。
オレがシュンシュンの代わりに打てば良かったんだ… 」
玄武
「 そうだな。
{ 手加減は出来ずとも指導碁の打てるマオが相手をしてくれていたならば、多少はマシだったろうな… }」
マオ
「 だよね……。
{ 後免ね、玄武さん…。
玄武さんの都合も考えず急に来ちゃって…… }」
玄武
「 マオ……。
{ 久し振りだからな。
顔が見れて嬉しいぞ。
態々会いに来てくれて有り難う }」
玄武さんは笑顔で大人の対応をしてくれる。
優しいなぁ~~。
シュンシュンがやらかした事に対して、頭を悩ませてるみたいだけど!
玄武
「 生駒井さん──。
大丈夫ではないと思いますけど、ソファーに座って休んでください 」
玄武さんは子供姿に合った口調で、項垂れて俯いたまま無言のお姉さんに声を掛けている。
玄武さん、子役でもやって行けそうな変わりようだよ。
女流棋士:生駒井
「 …………玄武君──。
碁罫紙とペンを貸して!
棋譜を記録して持ち帰るわ!! 」
玄武
「 好きなだけ使ってください 」
女流棋士:生駒井
「 有り難う!
借りるわね 」
そう言った生駒井さんは物凄い集中力で、碁盤の棋譜を碁罫紙に記録し始めた。
真剣な表情で、シャッシャシャッシャと書き記していく。
プロ棋士って手早いんだな。
手慣れているのか、左右が黒と赤に分かれているペンをクルクルと巧みに回しながら書き記している。
マオ
「 す……凄いね…… 」
玄武
「{ どうやら心配無用の様だな }」
女流棋士:生駒井
「 ふぅ──。
有り難う、玄武君。
助かったわ。
これは女流棋士の歴史が動く1局だわ!
貴女!
確か名前は “ しゅんれい ” だったわね?
女流棋士になる気はない?
貴女なら女流棋士初の本因坊になれるかも知れないわ!! 」
マオ
「 まさかのスカウト!?
あれ──、でも今の本因坊って確か── 」
玄武
「 弓弦だな 」
マオ
「 弓弦さんか……。
シュンシュンは弓弦さんに勝てるから、女流棋士初の本因坊も有り得るよね? 」
霄囹
「 断る! 」
女流棋士:生駒井
「 こ……断る??
何故なの?
貴女程の腕ならプロ棋士も直ぐなれるわ! 」
霄囹
「 興味無いねぇ。
僕は囲碁で全国を飛び回るなんてハードな暮らしは御免なのさ!
それに──、僕の本業は陰陽師だ!
僕は陰陽師アイドル・春舂霄囹だからな! 」
女流棋士:生駒井
「 陰陽師アイドル・春舂霄囹──ですって?!
貴女が?
嘘仰有い!!
霄きゅんは男の子よ!
貴女は女の子じゃないのよ! 」
マオ
「 しゅ──霄きゅん??
どゆこと?? 」
玄武
「{ 生駒井さんは陰陽師アイドル・春舂霄囹の大ファンなんだ。
兄がシュンシュンだと知られてから仲良くなってな…… }」
マオ
「{ へぇ……。
シュンシュンが切っ掛けで知り合ったんだ?
棋士にもファンが居るんだな~~ }」
玄武
「{ クリスマス前に発売された【 少年陰陽師★平安幻想異聞録 】も買ったらしい。
忙しくて未だに “ 未ぷれい ” とか言っていたな }」
マオ
「 そうなんだ…… 」
まさか玄武さんの宿泊室で知り合った女流棋士さんが、陰陽師アイドル・春舂霄囹の大ファンだったとは……。
予想外の展開だよ。
全たく、一体誰が予想が出来ただろう。
マオ
「{ シュンシュンの性別は今、女性に変わってるから性別を男性に戻さないと信じてもらえそうにないよ… }」
玄武
「{ うん?
シュンシュンは性別を変えているのか?
何故そんな事を── }」
マオ
「{ 色々あって…… }」
玄武
「{ 生駒井さんは大丈夫そうだから、今日は帰らせるとしよう }」
マオ
「{ 帰らせちゃって良いの? }」
玄武
「{ あぁ、構わない。
明日も会場で会うからな }」
マオ
「 そうなんだ…。
{ 明日は玄武さんがプロ棋士と対局するんだよね?
見に来るんだ…… }」
女性姿のシュンシュンに「 貴女は女流棋士になるべきなのよ! 」としつこく勧誘している生駒井さんを子供姿の玄武さんが宥める。
流石は長生きをしている玄武さんだ。
歳上女性の宥め方が上手い。
ミカトさんへは塩対応だったから心配してたけど、人間の女性には優しい対応をするみたいだから、一寸安心した。
玄武さんも弓弦さんも此方に来て──、プロ棋士になってからは女性棋士さん達とも出会いはあるだろう。
オレやシュンシュンが知らないだけで、知り合った女性棋士さん達と仲良くなって宜しくしてるのかも知れない……。
うぅ~~~~何か、モヤモヤしちゃうかもだ!
現に生駒井さんは玄武さんの宿泊室の場所を知っていたし、宿泊室を教えてる──って事は…………。
いや、詮索するのは良くないよな!
生駒井さんとは陰陽師アイドルのシュンシュンが切っ掛けで仲良くなった──って言ってたし、シュンシュンの大ファンの生駒井さんが、10歳の玄武さんを恋愛対象にするわけない──と信じたい。
子供の姿では女性棋士さん達とは付き合えないけど、大人の姿で目を付けた女性棋士さん達と付き合ってる──って事も有るのかな?
式妖魔も “ 恋愛したい ” って思ったりするのかな??
玄武さんに聞いてみようなか??
オレが1人で悶々と考えている間に、生駒井さんは宿泊室から出て行ったみたいだ。
生駒井さんにしつこく勧誘されていたシュンシュンは、疲れたのかグッタリしている。
玄武
「 さて──、詳しい話を聞くとしようか?
姿を戻して来るから待っていろ 」
厳しい目付きでシュンシュンを睨みながら、玄武さんは洗面脱衣室へ入って行った。
玄武さん、オレには優しくて親切なのにシュンシュンには厳しいんだよな~~。
もしかして、シュンシュンにイカサマされた件を未だ根に持ってるのかも……。
◎ 訂正しました。
貴女は女の子じゃないねよ! 」─→ 貴女は女の子じゃないのよ! 」