✒ 女装兄弟 3
──*──*──*── 上空・移動中
霄囹
「 マオキノの奴、凄い数の画像を撮ってたな。
モテモテじゃないか 」
マオ
「 女装姿を撮られても嬉しくない!
──それにしても空を飛んで移動するのって気持ち良いんだな! 」
霄囹
「 寒くない様に周囲に陰陽術で結界を張ってるからな。
結界を張ってなければ、風圧をモロに受けて大惨事だ。
風も冷たくて寒いぞ 」
マオ
「 陰陽術ってさ、魔法みたいな事も出来るんだな 」
霄囹
「 上手く応用し、工夫が出来ればな。
セロフィートの魔法とやらを見て、特訓した成果と賜物さ! 」
マオ
「 シュンシュンでも特訓するんだ? 」
霄囹
「 当たり前だろ。
人間じゃなくたって、特訓は大事だ。
特訓しなけりゃ、陰陽術も上達しやしないさ。
陰陽術を安全に扱う為には努力は惜しめないのさ 」
マオ
「 そういう所は魔法と同じなんだな 」
霄囹
「 もう直ぐ玄武が滞在している県に入るぞ。
玄武が宿泊してるホテルに行ってみるか 」
マオ
「 玄武さん居るかな?
知らせもしないで会いに行って怒らないかな? 」
霄囹
「 玄武は怒らないさ。
まぁ……、弓弦と会えてないからなぁ、機嫌は悪いかも知れないけどな 」
マオ
「 何で弓弦さんと会えてないだけで、機嫌が悪いんだ? 」
霄囹
「 マオ…………お前、とことん鈍いのな 」
マオ
「 何だよぉ~~ 」
シュンシュンが召喚した空を飛んで移動する式神は、蛇みたいに体が長くて、左右に小さな手が生えている。
頭には立派な2本の角が後ろに向かって真っ直ぐに生えている。
“ 龍 ” って呼ばれる妖かしの類いで珍しい種族らしい。
名前は “ 龍丸 ” って言って、普段は “ タツノオトシゴ ” っていう小さな姿をしてるらしい。
シュンシュンとオレは龍丸の頭の後ろに座っている。
風を切って、白い雲の海を掻き分けて進むのは気持ち良い。
式神って良いもんだな?
マオ
「 雲の海なんて凄いな~~ 」
霄囹
「 どうだ。
画像や動画で見るより、現生の雲海より凄いだろう!
雲海で見る虹は綺麗だぞ 」
マオ
「 虹かぁ~~。
雨が降った後に見える綺麗な半円だよな 」
霄囹
「 虹は半円じゃなくて円なんだぞ。
光の加減で真ん丸に見えるんだ 」
マオ
「 そうなのか?
オレ、虹は半円だと思ってたよ 」
霄囹
「 セロフィートに頼めば、好きなだけ見せてもらえるんじゃないのか?
古代魔法ってヤツで虹ぐらい作れるだろう 」
マオ
「 確かにな。
セロに頼めば、部屋の中で雲海が見れるかもだよな。
よし、帰ったらセロに頼んでみよっと! 」
霄囹
「 マオはとことんセロフィートに依存してるな! 」
マオ
「 煩いよ!
良いだろ別にぃ!
セロに依存するのはオレだけの特権なんだからさ! 」
霄囹
「 フン!
特権の乱用だな 」
マオ
「 何とでも言えよ! 」
龍丸に乗って、大自然の絶景を見ながらシュンシュンと他愛無い話をしていると、玄武さんが対局をする県の上空に入った。
玄武さんが宿泊するホテルに到着したら龍丸とは御別れだ。
一寸寂しいかも知れないな。
──*──*──*── ホテル・近辺
一般人には見えない龍丸がホテルの近辺に長い尾を地面に降ろしてくれる。
滑り台を滑る様にシュンシュンとオレは龍丸の長い尾から地面へ向かって滑り降りた。
龍丸の姿は小さなタツノオトシゴに変わる。
龍丸はシュンシュンの左手首の上に止まると腕輪に姿を変えた。
マオ
「 式神が腕輪になった?!
式神を腕輪に出来るのかよ? 」
霄囹
「 僕は最強で最恐な陰陽師だからな。
式神をアクセサリーに変えて身に付ける事ぐらい余裕で出来るぞ。
但し、自分にだけな 」
マオ
「 へぇ、そうなんだ… 」
霄囹
「 よし、ホテルに入るか。
然し、流石はプロ棋士だよな。
高級ホテルじゃないかよ 」
マオ
「 プロ棋士って良いホテルに宿泊が出来るんだな~~ 」
霄囹
「 何と言っても企業スポンサーが《 セロッタ商会 》だからな。
僕とは大違いだ 」
マオ
「 シュンシュンは高級ホテルに宿泊は出来ないのか? 」
霄囹
「 職業柄曰く付きのホテルや旅館ばかりに宿泊させられてるよ。
全く……同じ企業スポンサーだってのに扱い方に差があり過ぎて腹立つ…… 」
マオ
「 陰陽師アイドルだもんな…。
曰く付きのホテル,旅館に宿泊してる様子を撮った動画配信ってヤツは人気あるんだろ? 」
霄囹
「 まぁね。
初めは “ やらせだ ” とか “ 合成だ ” とか “ CGだ ” ってコメントも多かったみたいだけど──、そいつ等全員を僕が宿泊したホテル,旅館へ招待してやったら荒らし行為はピタっと止まったよ。
実際にガチもんの心霊現象,怪奇現象を体験してビビったんだろう 」
マオ
「 酷い事するじゃん。
疑い易い愉快犯には効果覿面だと思うけど、随分と怖い思いをしたんじゃないのか? 」
霄囹
「 ハハハハハッ!
最新式の赤外線カメラを使って宿泊室を撮るんだけど──、失禁と脱糞したガチブル状態のまま、朝まで部屋の隅っこでガタガタ震えてるよ!
その動画がバズってくれてねぇ、今では好き者達の間では大好評だよ 」
マオ
「 怖がる様子を生配信してんのか?
性悪動画じゃん… 」
霄囹
「 疑って荒らす奴等が悪いんだ。
自業自得だろ。
──ほら、入るぞ 」
シュンシュンと一緒に玄武さんが宿泊している高級ホテルの中へ入った。