✒ お泊まりしよう 2
マオ
「 なぁ──、シュンシュンってさ、ゲスいのか? 」
霄囹
「 はぁ?
何だよ、急に── 」
マオ
「 ゲームの主人公が非公開の裏設定で “ ゲスい ” って事が判明したんだよ 」
霄囹
「 はぁ~~?
非公開の裏設定だってぇ?
プレイヤーにか明かされない裏設定かよ。
マオ──、性愛ルートに進んだのか? 」
マオ
「 ま……まぁな…。
狙った訳じゃないぞ!
知らない内に進んでたんだ! 」
霄囹
「 ──という事は弓使いとの性愛度がMAXになったのか。
マオ……お前さぁ、データはコピーして隠しとけよ 」
マオ
「 何でだよ? 」
霄囹
「 あのなぁ、セロフィートが性愛ルートを許すと思うのか?
知られたらデータを跡形無く消されるだけじゃ済まないだろうよ! 」
マオ
「 データを消される??
此処まで頑張って進めたデータを消されるって??
嫌だよ!!
何とか出来ないのかよ?! 」
霄囹
「 専用のメモリーカードを差して、データをコピーして保管しとけ。
僕はメモリーカードを持ってないから買いにでも行って来いよ 」
マオ
「 そんなぁ~~。
セノコン……メモリーカードなんて持って──ない……よな? 」
セノコン
「 マオ様、御世話係を侮らないでほしいですエリ。
メモリーカードくらい持ってますエリ 」
マオ
「 セノコン!
何で持ってるのか気になるけど、気が利いてるじゃんか! 」
セノコン
「 御世話係として当然ですエリ★ 」
何処から出したかは不明だけど、セノコンは持っていたメモリーをテーブルの上に置いてくれる。
マオ
「 これがメモリーカード?? 」
霄囹
「 ミニゲームにクリアしたら、[ セーブ ]してデータをコピーしてやるよ。
大人しく待ってろ 」
マオ
「 シュンシュン!
有り難な!
──で、話を戻すんだけど、シュンシュンはゲスいのか?
ゲームの主人公はさ、現代社会で陰陽師をしていた時から、妖怪から名前を奪うだけじゃなくて、使えてた妖術まで奪って自分の陰陽術として使ってた──って裏設定があるだろ。
然も、性別を変えて弓使いと子作りして子供を産むとかさ── 」
霄囹
「 陰陽師がゲスくて何が悪いんだ? 」
マオ
「 へ? 」
霄囹
「 良いか、マオ。
陰陽師は常識,良識,話もまともに通じない怪異,異形を相手にする職業だ。
人間相手をする訳じゃない。
人間と相容れない危険極まりない厄介な化け物を相手にするんだぞ。
生きるか死ぬか──、常に死と隣り合わせの職業なんだ。
ゲスくないと怪異,異形と対等に対峙は出来ないし、まともに殺り合えないのさ。
ゲスさは陰陽師に必要不可欠な要素だぞ 」
マオ
「 だけど──、人間に対して迄ゲスくしなくても良いだろ? 」
霄囹
「 自分以外の人間は練習台に決まってるだろ。
怪異,異形に舐められない様に、如何なる時でもゲスくて非道,非情な性格破綻者な自分を演じれる様に訓練してるのさ!
一旦、舐められると挽回するのは難しい。
弱味を見せたら喰われて終わりだ 」
マオ
「 そんな…… 」
霄囹
「 人間の中にも話の通じない馬鹿野郎で厄介な奴は居るが──、怪異や異形に比べたら大した事はない。
人間は人間を丸呑みには出来ないからな! 」
マオ
「 …………………… 」
霄囹
「 僕が妖魔から名前と妖術を奪えて式隷に出来るのだって、生き残る為に編み出した陰陽術だ。
持ち主である妖魔と同様に妖術を使える訳じゃない。
持ち主から奪うペナルティがあるんだろうな、自分にしか使えない 」
マオ
「 どういう事だよ? 」
霄囹
「 性別反転の術で例えるなら──、持ち主の妖魔は自分だけじゃなく他人にも使えて、悪戯として悪用する事が容易に出来るが、名前と妖術を奪った僕が性別反転の術を使える相手は自分だけだ。
自分以外には使えない。
マオに使う事は出来ないのさ 」
マオ
「 ──シュンシュンは現実でも性別反転の術が使えるのか? 」
霄囹
「 当たり前だろ。
主人公が式隷している妖魔── ゲームでは妖怪だが ──は、実際に僕が使役している式隷をモデルにしている。
主人公が使える奪った妖術に関しても、同じ妖術を陰陽術として使える様にしている。
忠実に再現されている訳だ! 」
マオ
「 シュンシュンは本当に性別を変えれる??
女になったり男に戻ったり出来る──って事かよ 」
霄囹
「 金を稼ぐには女になって馬鹿な男を騙すに限るからな!
一寸可愛く甘えてやると鼻の下を伸ばして貢いでくれるんだ。
娯楽の少ない時代を生きてる男は色気にコロッと騙され易いのさ!
一時期は夜の街に在る遊郭で人気花魁をして稼いでいた事だってあるんだぞ!
金持ちの馬鹿な男をカモり放題で笑いが止まらなかったよ!
飽きて辞めたけどな 」
マオ
「 ………………じゃあ、ゲームの主人公は本当に性別反転の術を使って、女になって弓使いと子作りをするつもりなのか? 」
霄囹
「 間違いなくそうなるだろうねぇ。
まぁ、弓使いにとっても弓使いの父親,異母兄にとっても理想的な方法だろう。
父親,異母兄は本来の跡取りである弓使いが、貴族の娘との間に子供を作る事を望んでいる。
貴族の娘との子作りを嫌がり逃げている弓使いが、好きな相手を見付けて子供作りに励むんだぞ。
弓使いが当主の座を拒んでも、嫁は当主になれない。
嫁の代わりに夫である弓使いが当主に就く事になるのは避けられないんだ。
産まれた子供を跡取り候補として育てる事も出来る。
お世継ぎ問題は解決し、異母兄も臨時当主の任から解放される。
異母兄の子供達が刺客や暗殺者達から命を狙われる事も無くなり、安心して暮らせる様になる。
悪い話では無いだろう?
性愛度がMAXになると、他の同性や異性と性愛度を上げても下がる事はない。
性別を気にせず、浮気しまくりだぞぉ~~。
まぁ、そんな事がセロフィートにバレたりすれば、間違いなく容赦なくデータは抹消されるがな! 」
マオ
「 セロにだけはバレない様にしないと駄目なのか…。
シュンシュン、データのコピーは頼んだからな!! 」
霄囹
「 分かってるよ。
初プレイで性愛ルートに入るなんて、逆に凄い事だよ。
カモフラージュに友愛ルートのデータを用意しとかないとな!
データの隠蔽は僕に任せとけ!
友愛ルートで退魔師試験を合格する所まで進めてやるよ 」
マオ
「 シュンシュ~~ン(////)」
霄囹
「 おっと──、抱き付くなよ!
僕は未だキノコンの餌には、なりたくないからねぇ!! 」
マオ
「 餌って……。
分かったよ… 」
シュンシュンが来てくれて良かった!!
大事なデータがセロに見付かる前にメモリーカードにコピーが出来ると良いな。
頼むから、未だ帰宅して来ないでくれよな、セロ!!
オレはセロが早く帰って来る事のない様に〈 久遠実成 〉へ誠心誠意、真心を込めて、全力で祈る事にした。