✒ お泊まりしよう 1
──*──*──*── 102号室
──*──*──*── 居間
夜遅くだという事を気にもせず、ドアを開けて玄関に入る。
霄囹
「 邪魔するぞ~~。
──何だよ、此方のキノコンは里帰りしてないのか… 」
マオキノ
「 ──霄囹ちゃまエリ!
お帰りなさいませエリ。
御仕事、お疲れ様でしたエリ 」
霄囹を出迎えてくれたのは、青い勲章を身に付けているマオの御世話係をしているマオキノだ。
夜遅くだというのに嬉しそうに出迎えてくれるマオキノに対して霄囹は顔を引き吊らせる。
何故かと言うと垂れる涎をタオルで塞き止めながらの出迎えだったからだ。
霄囹
「 僕を見る度に涎を垂らすのは止してほしいねぇ… 」
マオキノ
「 それは無理な御注文ですエリ~~。
霄囹ちゃまは御馳走認定されてますエリ♥️ 」
霄囹
「( セロフィートめぇ!
キノコン達に妙な事を吹き込みやがってぇ!! )
僕はキノコン達の御馳走になるつもりは無いからねぇ… 」
マオキノ
「 霄囹ちゃまに魔が差す時を心待ちにしてますエリ 」
霄囹
「 魔が差す事を期待しないでほしいねぇ… 」
キノコン
「 無理ですエリ~~ 」
捕食者と餌の関係は相変わらずの様だ。
霄囹は笑顔を顔を引き吊らせたまま会話を続けた。
霄囹
「 へぇ?
セロフィートは出掛けてるのか。
マオを置いて出掛けるなんて珍しいんじゃないのか?
然も会いに行ってる相手は死神だって?
彼奴、何で死神と仲良しなんだよ…。
まぁいいや。
マオは居るんだよな? 」
マオキノ
「 はいですエリ。
2階で【 少年陰陽師★平安幻想異聞録 】をプレイ中ですエリ。
セノコンも居ますエリ 」
霄囹
「 セノコン?
あぁ~~、白い勲章を付けてるキノコンだな。
マオキノは行かないのか?
マオの御世話係なんだろ? 」
マオキノ
「 【 少年陰陽師★平安幻想異聞録 】に関してはボクより攻略サイトを管理しているセノコンの方が詳しいですエリ。
ボクは無料で遊べるフリーゲームを攻略するのに忙しいですエリ 」
霄囹
「 御世話係が聞いて呆れる怠慢さだな!
──っていうか、ネットゲームするのかよ 」
マオキノ
「 楽しいですエリ♪♪♪ 」
霄囹
「 マオは2階に居るんだな?
よしよし、ゲームの邪魔──じゃなくて手伝ってやるとするかな! 」
マオキノ
「 マオ様はミニゲームが苦手ですエリ。
マオ様の代わりにクリアしてほしいですエリ。
めちゃんこ煩いですエリ~~ 」
霄囹
「 マオキノが代わりにクリアしてやれば良いだろ?
変な所で薄情だよなぁ、キノコンってのは! 」
マオキノと話を終えた霄囹は階段を上がり、2階の部屋へ向かった。
──*──*──*── 2階・居間
2階へ上がるとソファーに座ったマオがTV画面とにらめっこしていた。
どうやら苦戦している様だ。
左隣に立っているセノコンからアドバイスをされている様だが、全くアドバイスを活かしきれていない。
霄囹
「( 字も下手だとゲームの腕も下手なのか?
全く……刀を握ってるマオとは大違いだな )」
ギャップの違いに呆れた様にクスリと笑った霄囹は、「 やれやれ… 」と小さく呟きながら、マオの右隣に腰を下ろしてソファーの上に座る。
霄囹
「 ──マオ、僕に貸してみろ。
クリアしてやる 」
マオ
「 シュンシュン!?
何で?? 」
霄囹
「 1週間の休みを貰ったから帰って来たんだよ。
玄武も弓弦も居ないから遊びに来てやったんだ。
感謝しろ! 」
マオ
「 頼んでないじゃん 」
霄囹
「 家族だろ。
弟に優しくしろよ、兄貴! 」
マオ
「 好きで兄貴してる訳じゃないんだけどな…。
──シュンシュンはゲーム出来るのか? 」
霄囹
「 マオ、お前よりは上手いのは確かだ!
ミニゲーム如きに苦戦してんなよ 」
マオ
「 仕方無いだろ~~。
指を酷使するミニゲームは苦手なんだよ… 」
霄囹
「 フン!
大船に乗った気で僕に任せろ!
それで──、今は何のミニゲームをしてるんだ? 」
マオ
「 退魔師試験を受けてる最中だよ。
試験用の依頼を受けてて、解決させる為にはミニゲームをクリアないといけないんだ。
ミニゲームなんか入れないでほしいよ!
陰陽師試験でもミニゲームをしたんだ! 」
霄囹
「 マオキノが『 めちゃんこ煩かった 』って言ってたヤツかよ 」
マオ
「 マオキノからも言われてたんだ…。
オレ──、そんなに煩かったのかな… 」
セノコン
「 はいですエリ。
ド煩かったですエリ 」
マオ
「 …………はっきり言うより、オブラートに包んでほしいな! 」
セノコン
「 キノコンは嘘を吐けませんエリ★ 」
霄囹
「 アッハッハッハッハッ!
辛辣だなぁ、セロフィートの御世話係は! 」
マオ
「 笑い事じゃないだろ… 」
深夜を過ぎて遊びに来た現実のシュンシュンが、オレの代わりにミニゲームをクリアしてくれる事になった。
有り難いんだけど、何でか素直に喜べない。
──で、コントローラーをシュンシュンに手渡して交代すると、どうだろうか!
シュンシュンはオレが苦労してクリアが出来ないミニゲームを楽々クリアしやがった!
嘘だろぉ~~~~!!
マオ
「 シュンシュン、スゲぇ!!
1発でクリアしちゃうなんて──。
さっき迄のオレの苦労は何だったんだ…… 」
霄囹
「 ハッハッハッハッハッ!
もっと褒めて良いぞ!
褒められてやるから、ドンドン褒めろ! 」
マオ
「 1度でクリアしたのは凄いけど、調子に乗り過ぎだろぉ~~ 」
霄囹
「 何処がだよ。
僕は控え目だぞ!
これで退魔師試験は合格するのか? 」
マオ
「 甲か乙の評価を貰えたらな~~ 」
セノコン
「 マオ様は霄囹ちゃまが来る迄に、めちゃんこ間違えてましたエリ。
評価は辛評価かも知れませんエリ 」
マオ
「 えぇ゛~~~~ 」
セノコン
「 リセットして[ ロード ]後に1発クリアするしか無いですエリ 」
マオ
「 マジかよ… 」
霄囹
「 しょうのない兄貴だねぇ。
[ ロード ]し直して、僕がミニゲームを1発クリアしてやるよ! 」
マオ
「 シュンシュ~~ン(////)」
霄囹
「 フン!
クリスマスプレゼントってヤツの御礼だよ!
その──、有り難な(////)」
マオ
「 シュンシュン…… 」
霄囹
「 ただ、字が読み難かったぞ!
玄武も弓弦もマオに甘いから微笑ましく思うんだろうけど、メッセージカードに書く字としては失格だな!
減点もんだぞ 」
マオ
「 シュンシュン……言い過ぎじゃないかな? 」
霄囹
「 言い過ぎなもんか!
マオへのクリスマスプレゼントは決まったから、楽しみにしとけよ! 」
マオ
「 えっ?!
オレにクリスマスプレゼントをくれるのかよ?
シュンシュンがオレに??
セロに消されないか?? 」
霄囹
「 物騒な事を言うなよ!
本当に消されたら困るだろうが!!
実現しない様に言葉を慎めよ… 」
マオ
「 ご、御免……。
気を付けるよ… 」
霄囹
「 じゃあ、[ ロード ]するぞ。
良いな? 」
マオ
「 うん、構わないよ。
頼むな、シュンシュン 」
霄囹
「 任しとけ! 」
シュンシュンは自慢気に笑うとステータス画面を出して[ ロード ]を選んだ。
画面が切り替わって、セーブデータがダウンロードされる。
コントローラーはシュンシュンに委ねて、オレはセノコンが用意してくれたテーブルに並べられているスイーツ,アイス,スナック菓子を食べながら観賞する事にした。