⭕ 帰宅したら1人
──*──*──*── 101号室
──*──*──*── 居間
仕事から帰って来た霄囹とキノコンは、101号室のドアを開けて部屋に入る。
部屋に入ると勝手に明かりが点灯してくれる。
セロフィートの古代魔法の力だ。
霄囹
「 ただいま!
──って、何だよ。
誰も居ないじゃないか! 」
キノコン
「 御世話係のキノコンは、セロ様から御休みを頂いて≪ キノコン王国 ≫へ里帰りしてますエリ 」
霄囹
「 里帰りだって!?
聞いてないぞ! 」
キノコン
「 霄囹ちゃま~~。
ボクも里帰りしたいですエリ~~ 」
霄囹
「 何だと!?
キノコンが居なくなったらボクは1人になるじゃないか!
玄武も弓弦も居ないのに1人で過ごすなんて── 」
キノコン
「 エリぃ~~。
残念ですエリ…… 」
霄囹の言葉にショボンと落ち込み、涙ぐむキノコン。
その姿は霄囹のSっ気心を刺激する程に愛らしかった。
霄囹
「 グッホン……(////)
──まぁ、まぁ…偶になら良いかな?
キノコンは僕の手伝いを全力で頑張ってくれていたし?
1週間も休みを貰えたんだ、良い機会だろう。
里帰りして、リフレッシュして来い! 」
キノコン
「 霄囹ちゃま~~!
有り難う御座いますエリ♪
1週間後に御世話係と戻って来ますエリ 」
霄囹
「 あぁ、分かった。
元気でな 」
キノコン
「 霄囹ちゃまも元気で過ごしてくださいエリ 」
霄囹からの許しを得られたキノコンは、壁に描かれているドアの絵の中へ嬉しそうに入って行った。
霄囹
「 …………躊躇いもしてくれないのかよ…。
少しぐらい躊躇ってくれても良いだろ…。
セロフィートに作られたキノコンだけあって、肝心な部分は薄情だな 」
文句を吐きつつ、霄囹はテーブルの上に何かが置かれている事に気付く。
霄囹
「 ──何だアレは? 」
テーブルの上に置かれている包み袋を見ると、4つある。
1つは大きくて、3つは小さくて同じサイズの包み袋の様だ。
霄囹
「 うん?
紙が張り付けてあるな。
何々── 」
霄囹は、包み袋を1つ手に取る。
張り付けてある紙には誰宛なのか名前が書かれている。
霄囹
「 これは弓弦にか。
此方は玄武だ。
僕の分だ……。
──下っ手くそな字だな!
読める字で書けよ… 」
霄囹は、辛うじて読める字で “ シュンシュン ” と書かれた紙を取ると包み袋を開けてみる。
包み袋の中には箱が入っている。
箱の上にはメッセージカードも入っている。
霄囹は包み袋の中からメッセージカードと箱を出す。
メッセージカードを読むのは後回しにして、取り出した箱の上蓋を開ける。
中には湯呑みが入っている。
霄囹は箱の中から湯呑みを取り出した。
湯呑みには可愛い梟の絵が描かれている。
折り畳まれたメッセージカードを開くと、マオからのメッセージが直筆で書かれている。
霄囹は苦笑いしながら、御世辞にも “ 上手い ” と言えない字で書かれたメッセージを読む。
霄囹
「 字を書く練習しろよ、全く。
セロフィートはマオを甘やかし過ぎだな!
幸運の梟か……。
フン、気が利くじゃないか。
まぁ……使ってやっても良いかな?(////)」
クリスマスプレゼントとして置かれていた湯呑みに対して満更でもない様子の霄囹は、大事そうに持った湯呑みを部屋まで運んだ。
メッセージカード,箱,包み袋も忘れず一緒に部屋へ運ぶ。
──*──*──*── 霄囹の部屋
自室に入った霄囹は、湯呑みを机の上に置く。
箱とメッセージカードは包み袋の中に入れ、包み袋を開ける前の状態に戻す。
コレクションを飾っている棚の上に置く。
霄囹
「 此方に来て、また1つコレクションが増えたな。
良いねぇ~~ 」
霄囹はコレクション棚を眺めながら満足そうに笑う。
──*──*──*── 居間
自室で用事を済ませた霄囹は居間に出る。
1階の居間の壁には、カレンダーが3つ掛けられている。
玄武,弓弦,霄囹のスケジュールが書かれたカレンダーである。
3人は中々多忙である為、共に暮らしていても顔を合わせる事が殆どなかった。
擦れ違い生活である。
御互いのスケジュールを把握する為、壁にカレンダーを掛けて各々の予定を書き込む様にしているのだ。
予定を書き込むのはマネージャーをしている〈 器人形 〉である。
正確なスケジュールを書いてくれる為、間違いや書き忘れ等も一切無く、安心して見る事が出来る。
読み易い美文字で書かれている為、霄囹も助かっていた。
霄囹
「 玄武も弓弦もプロになって忙しいみたいだな。
泊まりが多くて全く帰って来やしない。
僕も2人の事は言えないけどな!
玄武も弓弦も県外を飛び回ってる最中か。
中々ハードなスケジュールじゃないか。
まぁ、移動手段は転移魔法だから負担は少ないだろうし、観光を楽しみつつ対局してるんだろうけどな 」
霄囹のスケジュールカレンダーは、非売品のセロカ君カレンダーを使っており、玄武のスケジュールカレンダーは様々な四季や景色を楽しめるカレンダーが使われている。
弓弦のスケジュールカレンダーは可愛いハリネズミを見れる癒し系のカレンダーを使っていた。
霄囹
「 弓弦は女子かよ…。
確かにハリネズミは可愛いけどさ。
可愛い動物が好きな弓弦は湯呑みも喜ぶだろうな。
玄武は知らんけど 」
一通りカレンダーに書き込まれているスケジュールを見た霄囹は、階段を上がり2階にある玄武と弓弦の部屋へ向かう。
──*──*──*── 2階の部屋
2階は仕切りがされておらず、階段から見える正面の窓側が玄武のスペースに使われており、階段の右横が弓弦のスペースになっている。
弓弦のスペースにも窓は付いている。
ドア側になる為、202号室を通り過ぎる住居者の姿をみる事が出来る様になっているが、外からは室内が見えない様にマジックミラーが使われている。
霄囹は玄武のソファーベッドに近付くと寝転がる。
玄武は式妖魔である事から睡眠の必要がない為、ソファーベッドを愛用している。
壁には四季折々の景色が見れる様にポスターが貼られている。
本棚には囲碁の棋譜帳がギッシリと入っている。
裏野ハイツに来た時に皆で撮った写真が写真立てに入って本棚の上に置かれている。
〈 器人形 〉が撮ってくれた記念写真だ。
薄型液晶デジタルテレビは、囲碁関連の番組が始まる度に自動的に録画される様になっている。
録画された番組をCDディスクへダビングする作業は御世話係のキノコンがしてくれる事になっているが、生憎の里帰り中だ。
キノコンが里帰りから戻って来る迄は霄囹のマネージャーがする事になるのだろう。
霄囹
「 玄武…………会いたいな(////)
だけど、折角の休みに遠出の外出なんかしたくないし……。
玄武ぅ~~~~!
玄武に届けぇ!
僕の切ない想いっ!! 」
ソファーベッドの上で俯せになり、両足をバタバタと動かしながら、玄武の名前を呼びながら、クンカクンカと玄武の匂いを嗅ぐ。
キノコンにも見せれない変態行為を続けた霄囹は玄武のソファーベッドから立ち上がると、弓弦のベッドへ向かって歩く。
弓弦のスペースの壁には可愛い小動物のポスターが貼られている。
癒される空間だ。
ソファーの上にはモフモフのクッションが置かれており、ベッドの上には弓弦が観光先で買ったであろう小動物のヌイグルミが置かれている。
霄囹
「 …………マジで女子化してるな…。
ヌイグルミが増えてるじゃんかよ 」
本棚兼机の上には玄武と同様に写真立てに入れられた集合写真が飾られている。
本棚には囲碁関連の書物だけではなく、小動物の写真集が何冊も入っている。
ベッドの上にダイブして寝転がる。
天井にも小動物のポスターが貼られているのかと思った霄囹だったが、天井に貼られているのは女装をしているマオの写真を拡大したポスターだった。
隠し撮りなんて出来ないだろうから、セロフィートから貰ったのだろう。
セロフィート公認なのかも知れない。
どうやらセロフィートは弓弦に対して割りと寛大な様だ。
未だに女装したマオへの想いを秘めている様子の弓弦に対して、ゾッとする様な悪寒を感じる。
そそくさとベッドから離れた霄囹は階段を駆け下り、1階へ戻った。
──*──*──*── 1階・居間
霄囹
「 小動物のポスターは弓弦の性癖を隠蔽する為に使っているフェイクなのか??
弓弦……ヤバい奴だ 」
自分の事を棚に上げて霄囹は弓弦を軽蔑する。
同族嫌悪というやつだろうか。
霄囹は1人っきりで101号室の部屋で暮らすのを嫌だと思い、102号室へ行く事にした。
着替えもお泊まりセットも持たないまま101号室を出た霄囹は、隣の102号室のドアを開けて入った。