✒ 少年陰陽師★平安幻想異聞録 30
彩志さん,弓嘉さん,シュンシュンを交えて三つ巴の修羅場が勃発するんじゃないかと予想をしていたけど、そうはならなかった。
何でかって?
【 [ セーブ ]しますか? 】って何時ものアイコンが出たから[ セーブ ]をしたら、画面が切り替わって翌日になっていたからだ。
どゆことだよ!?
昨夜は、どうなったんだよ?!
どんな展開が繰り広げされたのか──、物凄く気になるんだけどぉ!!
昨夜は何事も無かったかの様に物語は進んで行く。
スムーズ過ぎて逆に怖いよ!!
獅東屋敷の前で、弓嘉さんに見送られながら、笑顔を絶やさない彩志さんと一緒に牛車に乗り込む。
牛車は陰陽院を目指して出発した。
牛車の中で彩志さんと2人きりなんだけど、陰陽院と陰陽師試験に関する内容の話しか出てこない。
ゲームってさ、こういう所が有るよな~~。
会話中に彩志さんが手に持っている扇子が開いたり閉じたりする。
気になるから数えていると──、「 さて──、会話中に私が扇子を開いたのは何回でしょう? 」なんて聞いて来やがった。
突然、問題を出されて完全に油断していた。
画面の彩志さんの絵は真剣な表情をしている。
〔 4回 〕〔 6回 〕〔 10回 〕〔 開けてない 〕〔 無視 〕の5択が出る。
選択肢、多くないか??
幸いにもオレは扇子の開け閉じの回数を数えていたから、〔 4回 〕でも〔 6回 〕でも〔 10回 〕でもない事は分かっている。
当然、〔 開けてない 〕でもない。
この問題の正解は多分──〔 無視 〕だ。
オレは〔 無視 〕を選ぶ。
画面の彩志さんは、真剣な表情からニコリと笑顔に変わる。
「 正解は13回です 」と彩志さんの台詞。
アンタが言っちゃうのかよ…。
「 ──春は囲碁が強いですね。
囲碁の棋力には自信があり、かなり強いと自分でも自負していました。
あんなにアッサリと負けてしまうと、悔しさよりも気持ちが良いものです 」と彩志さんの台詞。
うん??
いきなり囲碁の話題になった?
何でだ??
「 春の弓嘉へ対する想いの強さは分かりました。
私を甚も簡単に負かせる腕前があるなら、これから先、如何なる問題が起きたとしても大丈夫でしょう。
私が春の後見人を止める事はありませんから安心してください。
ふふふ…… “ 獅東弓千嘉を嫁に貰う ” なんて、前代未聞です。
大胆な事をしてくれましたね♪ 」と彩志さんの台詞。
は──??
弓嘉さんを嫁に貰う??
どゆことだよ?!
彩志さんは昨夜の話をしてるんだよな?
シュンシュンが囲碁で彩志さんに勝った??
囲碁勝負って中盤にならないと出来ないんじゃなかったっけ??
何が何だか分からないけど、画面の彩志さんは嬉しそうだ。
う~~ん……、彩志さんの養子になる事になったシュンシュンが、弓嘉さんを嫁に貰う──って事はだ、シュンシュンが現代に帰った後で、獅東屋敷の当主をする事になるのは、妻になった弓嘉さん──って事になるのか?
どの道、弓嘉さんは1人になる訳だよな?
貴族の娘さんと子作りして子孫を残さないといけなくなる事には変わりない筈だ。
子作りしなくて良くなる訳じゃなくて、先伸ばしになるってだけなんだけど──、どうやら彩志さんは、それでも構わないみたいだ。
彩志さんの話では、シュンシュンが退魔師試験に合格する迄の期間、弓嘉さんが貴族の娘さんの屋敷へ通い、子作りに励まむ必要は無くなったらしい。
…………これで良かったんだろうか??
不安になって来たんだけどぉ~~。
「 春──、性別反転の術を使い、弓嘉の子供を産むなんて、平安人の陰陽師には考え付かない方法です。
其処まで想われている弓嘉は幸せ者ですね。
弓嘉の事を宜しくお願いします 」と彩志さんの台詞。
………………何か…とんでもない事に発展してるぅ~~~~!!
性別反転の術って何だよ?!
性別反転の術を使ってシュンシュンが女になって、弓嘉さんと子作りに励んで子供を産むって事かよ??
何だよ、その設定ぇ!!
そんなん有りかよ!?
ゲームって何でも有りなのか??
御都合主義設定が行き過ぎてないか!?
シュンシュンが女になって弓嘉さんと──。
シュンシュンは男に戻れるのかな??
…………別の問題が浮上しちゃったよ!!
………………性別反転の術が使えるシュンシュンって──ヤバくないか??
それって最初から使える設定だったのか??
それとも公式が伏せていた隠し設定??
分からん……。
後でマオキノに聞いてみよう……。
ま…まぁ……事情がどうあれ、仮にシュンシュンが性別反転の術を使って女になれるなら──、弓嘉さん問題は解決しそうだ。
彩志さんは喜んでくれてるみたいだけど、弓嘉さん的には良いんだろうか……。
性別を反転させたシュンシュンと子作り出来る程、心は強いのかな??
結局は弓嘉さん次第って事になるんだろうな。
今後の展開に注目かな?
所詮はゲームだし、主人公のシュンシュンに合わせて御都合主義に進むのは当然なのかも知れないな。
「 囲碁の強い春に紹介したい相手が居ます。
退魔師になれてからで良いので時間を開けてくれませんか? 」と彩志さんの台詞。
「 紹介したい相手…ですか? 」とシュンシュンの台詞。
「 はい♪
私の旧友が《 平民街 》で碁会所を開いています。
元は陰陽師なのです。
陰陽院で濡れ衣を着せられ、陰陽院を去ってからは、友として支援していました。
今は立派に囲碁師として生計を立てています 」と彩志さんの台詞。
「 囲碁師ですか?
棋士として活躍されているのですか? 」とシュンシュンの台詞。
「 囲碁は貴族の嗜みです。
貴族と接する機会の多い陰陽師は、自然と囲碁を学ぶ事になります。
囲碁を極める為、棋士になる貴族が多いですが、棋士になる陰陽師も割りと多いです。
棋士から始まり囲碁師となれれば、自分の碁会所を持つ事を帝から許可されます。
碁会所を持つと囲碁を強くなりたいと望む貴族から声が掛かる様になり、貴族に囲碁を教える立場の指南役となれます。
私の旧友は、私以外の貴族からの依頼を断り、私の専属指南役として平民を相手に指導碁を打ち、囲碁の楽しさを教えています 」と彩志さんの台詞。
「 専属の指南役ですか?
その方は父上以外の貴族とは関わり会いたくないのでしょうか? 」とシュンシュンの台詞。
「 そうですね。
濡れ衣を着せられた件で、陰陽師と貴族に対して嫌気が差した様です。
着せられた濡れ衣は晴れはしたものの、すっかり性格が歪んでしまって── 」と困った様に微笑む彩志さんの台詞。
う~~ん?
彩志さんって、その囲碁師の事が好きなのかな??
相思相愛の相手が居るって言ってたし──。
「 僕も陰陽師です。
会っても大丈夫なのですか? 」と不安そうな表情でシュンシュンの台詞。
「 私も貴族ですが、会っていますよ。
何より、私を囲碁で負かせる相手です。
春の話をすれば、間違いなく “ 連れて来い! ” と言われるでしょう。
愿縲は囲碁の強い相手に目が無いですから 」と可笑しそうにクスクスと笑う彩志さんの台詞。
愿縲さんか。
新キャラかな?
中盤に出逢う検非違使に紹介される指南役と同一人物なのかな?
それとも別人か??
「 どうでしょう。
私の顔を立てると思って、愿縲と会ってはくれませんか? 」と彩志さんの台詞。
「 分かりました。
父上にはこれからも御世話になりますし、何かと助けて頂く事もあるでしょう。
囲碁師の愿縲さんと会います。
僕の囲碁が何処まで通用するのか知りたいです。
それに父上の友人なら初対面でも安心して会えます 」と前向きなシュンシュンの台詞。
「 春、恩に切ります 」と嬉しそうに彩志さんの台詞。
「 僕も会える日が楽しみです 」と笑顔で話を合わせるシュンシュンの台詞。
シュンシュンが退魔師になった後に、確定イベントが始まりそうな予感だ。
どんなイベントなのかな?
不安だけど、一寸楽しみでもある。
玄武さんをモデルにした囲碁師だと良いな!
「 ──春、陰陽院に到着しました。
此処からは歩いて向かいます。
牛車から降りましょう 」と彩志さんの台詞。
ドット絵に切り替わり、牛車から降車した彩志さんとシュンシュンが自動で動く。
陰陽院の中へ入ると画面が切り替わり、【 [ セーブ ]しますか? 】ってアイコンが出る。
オレは当然、〔 する 〕を選んだ。