✒ 犬神の呪い 3
シュンシュンと一緒に《 陰陽師4事務所 》を出る。
シュンシュンが召喚した飛行タイプの式神の背中に乗り、空散歩を楽しみながら《 警察署 》へ向かう。
雲海が好きなオレの為に、式神は高度を上げてくれて、態々雲の上を飛んでくれるなんて、気の利く優しい式神だ。
《 警察署 》の[ 駐車場 ]に刑事が立っているのが見える。
移動用に使うパトカーも用意してくれてるみたいだ。
運転手も居る。
シュンシュンが指示を出すと式神は静かに[ 駐車場 ]へ降りてくれる。
シュンシュンとオレが式神の背中から降りると、転移陣が現れる。
式神はシュンシュンの≪ 異界 ≫へ戻った。
刑事達は式神を見るのが初めてなのか、目を丸くして驚いていた。
鳩が豆鉄砲を食らった感じ──ってヤツだ。
飛行タイプの式神を出せる陰陽師なんて、シュンシュンくらいだもんな。
霄囹
「 待たせたな。
閑羽さん。
被害者の家へ行こう 」
マオ
「 初めまして。
シュンシュンの助手です 」
霄囹
「 途中で《 CES 》に寄れよ。
菓子を買わないといけないからな 」
刑事:閑羽
「 菓子の食べ滓でパトカーの中を汚さないでくださいよ 」
マオ
「 寄ってくれるんだ 」
閑羽刑事に促されて、シュンシュンと一緒にパトカーの後部座席に乗り込む。
シュンシュンとオレがパトカーに乗車したのを確認した後、運転手の刑事と閑羽刑事もパトカーに乗車する。
閑羽刑事は助手席だ。
パトカーを運転してくれるのは、閑羽刑事の後輩で、哲朶刑事と言うらしい。
閑羽刑事は、駻間刑事の後輩なんだとか。
駻間刑事には、やたらと塩を撒く同僚が居て、駻間刑事と哲朶刑事も良く塩を振り掛けられていたらしい。
マオ
「 浄めの塩的なモノかな? 」
霄囹
「 だろうな。
日本酒に食塩を混ぜたモノを霧吹きでシュッシュッすると浄めの塩より効果は有るぞ。
酒臭くなるのがデメリットだがな。
食塩水よりは効果が有る 」
マオ
「 へぇ~~。
日本酒に食塩を入れて使うのか。
折角の日本酒が台無しだな 」
霄囹
「 安い日本酒は駄目だぞ。
最低でも1本10万はする日本酒じゃないと効果は無いぞ。
貧乏人は何でも安もんで揃えたがるが、愚の骨頂だ 」
マオ
「 1本10万の日本酒は高過ぎないか?
一般人には手が出ないじゃないか 」
霄囹
「 だから、スーパーで売ってる安もんの塩を振り撒いてるんだろ。
唯の気休めだってのに──滑稽で笑えるねぇ 」
哲朶刑事
「 浄めの塩って気休めなんですか? 」
霄囹
「 スーパーで買う市販の塩が浄めの塩の代わりになる訳ないだろが。
脳内花畑の阿呆かよ。
ちゃんとした専用の “ 瀞の塩 ” が有るんだ。
それ以外の塩を使っても効果なんて見込めないぞ 」
シュンシュンってば、自分が販売してる “ 瀞の塩 ” を売り込もうとしてるらしい。
ちゃっかりしてるんだから!
マオ
「 じゃあさ、現役陰陽師シュンシュン印の “ 瀞の塩 ” を駻間刑事の同僚にプレゼントしたらどうだ?
市販の塩を振り撒いてるぐらいだし、“ 何か ” を感じる程度には敏感な人なんだろ? 」
霄囹
「 同僚用に物と名刺を用意しとくから、駻間刑事に渡してやれ 」
マオ
「 “ 物 ” って言うなよ。
如何わしいイメージがするし 」
閑羽刑事
「 それは難しいと思いますよ。
駻間刑事の同僚……塩先輩── あっ本名は違いますよ。渾名です ──は、刑事を止められているんです。
何でも実家に帰って《 神社 》の神主をしてるとか── 」
マオ
「 刑事が《 神社 》の神主??
何でまた…… 」
閑羽刑事
「 何でも《 神社 》を継いだ兄が泥棒に殺害されたとかで、亡くなった兄の代わりに《 神社 》を継ぐ事になったとかで── 」
マオ
「 泥棒が盗みに入る用な代物が《 神社 》に有るかな? 」
霄囹
「 賽銭箱が有るだろ。
神に奉納されてる賽銭を盗むなんて罰当たりな泥棒だ 」
マオ
「 “ 神罰を受ける ” って思わないのかな? 」
霄囹
「 抑だな、信じてる奴は《 神社 》や《 寺 》で不逞,不敬な事はしない。
信じてないから泥棒するんだ。
“ 罰が当たる ” なんて微塵も思って無いのさ。
捕まらなければ人間の作った法律で罰せられる事はないが、世の中には人知を超えた力が存在している。
どんな立場の人間も何人たりとも “ 因果応報 ” っていう法則からは逃げられないんだ。
生きてようが、死んでようが一切関係無く、形を変えて必ず『 ただいま 』して来る。
回避は出来ないから『 おかえり 』って神罰を受け入れるしか無いんだ。
人間は学習能力が低いから、分かっていても欲に負けて悪さをしてしまうのさ。
警察が賽銭泥棒を捕まえる事が出来なくても、賽銭泥棒を法律で罰する事が出来なくても──、神佛から “ 因果応報 ” という神罰を受ける事になるのさ。
悲しいかな、人間は神罰を受けても気付けない。
だから、命を取られる事になる迄、悪さを繰り返すのさ 」
マオ
「 相応の報いを受けても気付けないのってネックだよな……。
やっぱりさ、ちゃんと警察が捕まえて、法律に乗っ取って裁いて、正当な罰を与えてやらないとだよな 」
霄囹
「 法律で正当に罰せられても、神罰は受けるからな。
人間の作った法律と〈 大自然の法則 〉は別なんだ。
罪を償い出所したのに死ぬ奴は居るだろ。
幸せになりたいのになれずに苦しむ奴も居るだろ。
犯した罪の償いが終わる事は無いのさ。
記憶が薄れ様が、風化して忘れ去られ様が、知恵を絞って揉み消したって、起こした事実は消えないし、消せやしないんだ。
相手は宇宙を動かし運営している主宰者──神佛なんだから、来世に生まれ変わっても犯した罪は付いて回る。
神罰を受けても、犯した罪はチャラにならないのさ 」
マオ
「 来世にも付いて来るなんて嫌だな…… 」
霄囹
「 仕方無いだろ。
生かされている立場で有る以上、〈 大自然の法則 〉からは逃げられないし、逆らえないんだ。
非道徳的,非人道的な事はせず、真っ当に常識と良識を兼ね備えた善良な人間として生きてれば良いのさ。
簡単な事だろ 」
マオ
「 そだな…… 」
哲朶刑事
「 もう直ぐ《 CES 》に付きますよ 」
霄囹
「 おっ、漸くか!
マオ、コンビニ菓子を買い占めるぞ!! 」
マオ
「 他にも買う人が居るんだから買い占めは駄目だからな 」
シュンシュンは両目を輝かせている。
シュンシュンが爆買いしない様に程々にさせないと!
パトカーが《 CES 》の[ 駐車場 ]に停車する。
後部座席のドアを開けて、パトカーから出ると《 CES 》に向かって歩く。
閑羽刑事と哲朶刑事はパトカーの中で待機してるみたいだ。




