⭕ 犬神の呪い 2
マオ
「 でもさ、犬神って式を捕まえるなんてさ、どうやるんだ?
妊婦は家の中で襲われてるんだろ 」
霄囹
「 それなんだ。
妊婦が野外で被害に遭ってるなら、痕跡も探り易いんだがな── 」
マオ
「 妊婦さんも不安だろうな。
不妊治療って保険が適用されないんだろ?
何年も自己負担で大金を費やしてさ、漸く念願の子供を授かれたってのに得体の知れない犬神に襲われるなんて…………不安に思わない筈が無いよ 」
霄囹
「 妊婦を襲う依頼をした奴は、事件が起きたニュースを見て歓喜してるだろうな。
9名──いや、胎児を入れてたら18名か。
ペットも襲わせて殺してるからな──戻って来た呪詛をまともに受けたら死ぬだけでは済まないだろうねぇ。
ククク…… 」
マオ
「 そうなのか? 」
霄囹
「 呪いは必ず望んだ相手へ戻る事になってるんだ。
何時、どんな形に変わり帰って来るかは誰にも分からないのさ。
楽には死ねないぞ 」
マオ
「 因果応報だな。
目に見えない〈 大自然の法則 〉が能くからだよな。
≪ 島国 ≫には≪ 大陸 ≫の様に〈 大陸の法則 〉みたいなのは無いけど、〈 大自然の法則 〉は能いてるもんな。
でもさ、宗教が有るんだから、因果応報,四知の法,大自然の法則とか教わってて知ってるんじゃないのか?
《 寺 》や《 神社 》だって在るわけだしさ。
学校の代わりに信者や門徒に教えるだろ 」
霄囹
「 《 神社 》には教えが無いし、《 寺 》が守ってる教えの内容は古過ぎて話にならないぞ。
鎌倉時代の低いレベルで止まってる古い教えが、教育水準の遥かに上がった現代人のレベルに合う訳ないだろが。
教えの内容も現代に合わせてアップデートしないと現代人にはチンプンカンプンだ。
子供を育てる親が、道徳を知らないのも問題だな 」
マオ
「 そだな…… 」
霄囹
「 襲われた9名の妊婦には共通点が有るんだ 」
マオ
「 うぇそうなのか? 」
霄囹
「 妊婦には2通り有るんだ。
夫婦揃って熱心に不妊治療に取り組む夫婦と片方が熱心で片方が非協力的な状態で不妊治療に取り組む夫婦に分けられる 」
マオ
「 片方が非協力的?
子供が欲しくて不妊治療を受けるんだろ?
何で非協力的になるんだ? 」
霄囹
「 僕が知るか。
今回、“ 犬神の呪い ” で被害に遭った妊婦は全員が前者だと判明してるんだ 」
マオ
「 前者?
仲良く熱心に不妊治療を受けてる夫婦が対象って事か? 」
霄囹
「 そうなる。
抑、夫が不妊治療に積極的若しくは協力的なのは珍しい事らしい。
不妊治療に熱心なのは大概が妻らしいぞ 」
マオ
「 夫が不妊治療に非協力的なのは珍しく無いって事?
跡取りの子供が欲しくないって事か?
何の為に結婚するんだよ? 」
霄囹
「 そんなの決まってるだろ。
自分の代わりに炊事,洗濯,掃除,雑用をしてくれるタダでコキ使える便利な家政婦が欲しいからだよ。
妻が居れば態々金を払って性処理をしに行かなくても家で気軽に出来るからな 」
マオ
「 え……そんな理由で結婚するのか?? 」
霄囹
「 自分にメリットが無ければ、めんどくさい女なんかと結婚する訳ないだろが。
デメリットも有るが、家の雑用をしなくて済むなら、大抵の事には目を瞑れるのが男ってもんだ。
男に寄生しないと生き難い女と違って、男は結婚しなくても立派に生きられる。
妻に束縛されるよりも束縛する方が好きな男は開放的で自由な独り身が断然良いに決まってるだろ。
独り寂しく孤独死する事になるが、自分が選んだ人生だからな後悔も悔いもしないだろう 」
マオ
「 一部の男だけだろ…… 」
霄囹
「 知らないねぇ。
不妊治療に協力的な夫に恵まれた妻が居るのは事実だ。
不妊治療に非協力的な夫に悩み、恵まれていない立場の妊婦の誰かが、理解ある夫に支えられている妊婦に対して逆恨みをして呪詛師に依頼した線は有る。
協力的な夫に恵まれていながら、自分には中々授かれず、子供を授かれた妊婦に対して逆恨みをして呪詛師に依頼した線も有る。
もしかしたら、不妊治療を進めている医師や看護師が、子供を授かれた妊婦が気に入らなくて呪詛師に依頼した線も有る。
1度でも疑えば、理由なんてもんは幾らでも出て来るぞ 」
マオ
「 呪詛師が依頼主の身元を知ってたりしないのか? 」
霄囹
「 今は誰でもネットで簡単に依頼が出来る時代だぞ。
依頼主が呪詛師と直接会って依頼をするなんて事はほぼない。
況してや相手を呪い殺す依頼をするんだぞ。
如何にも怪しい呪詛師に対して、依頼主が自分から身元を明かす訳ないだろ 」
マオ
「 えぇ……。
じゃあ、依頼を受けた呪詛師の特定が出来ても依頼主には辿り着けないって事かよ?
迷宮入りじゃんかよ 」
霄囹
「 ネットで依頼してるなら、キノコンの出番だろ。
キノコンなら呪詛師と依頼主の居所を特定出来るからな 」
マオ
「 そっか!
古代魔法で動いてるパソコンを使えば、探し出せるんだ!! 」
霄囹
「 今、キノコンに調べさせてるが、呪詛師と依頼主の特定が出来たとしても法律が呪詛を認めてないから逮捕は出来ないぞ。
実際に手を下して殺害してないからな。
襲ったのはあくまで犬神だ。
証拠なんて有りゃしない 」
マオ
「 そんな……。
呪詛師と依頼主が判明しても何も出来ないのかよ…… 」
霄囹
「 完全犯罪が出来てしまうのが、呪いのメリットなんだ。
妊婦の連続殺害犯として逮捕は出来なくても、叩けば埃が出て来るのが人間だ。
違う罪状で逮捕する事は可能さ 」
マオ
「 それだと殺された被害者は浮かばれないよな。
被害者遺族だって許せないんじゃないのか? 」
霄囹
「 仕方無いだろ。
人間が作った六法全書には、怪異,異形,霊的存在に対しては書かれてないんだからな。
現代に合わせて六法全書もアップデートしないと無理さ 」
マオ
「 ………………理不尽だよな 」
霄囹
「 だから、悪用する奴等には都合が良いんだよ。
有り難い抜け道が加害者や犯罪者を守ってくれるのさ 」
マオ
「 米●町にも妊婦は沢山居るよな。
次、狙われる妊婦の特定するのは難しいよな…… 」
霄囹
「 米●町に存在する産婦人科を洗い出し、不妊治療を行っている患者に式を付けるしかないな。
これは骨が折れる作業になるぞ 」
マオ
「 良く言うよ。
シュンシュンは式隷に指示するだけだろ 」
霄囹
「 当然だろ。
僕は忙しいんだからな!
被害者の家に足を運んで、犬神の痕跡を探る必要が有るんだ。
マオは僕の助手として来るんだからな! 」
マオ
「 財布要員としてな 」
霄囹
「 分かってるじゃないか。
話の通じる主人様で助かるぞ 」
マオ
「 そりゃどうも── 」
◎ 訂正しました。
《 神社》 には教えが無いし、─→ 《 神社 》には教えが無いし、




