⭕ 式神が欲しい
──*──*──*── とある県境
──*──*──*── トンネル・前
マオ
「 シュンシュン、こんな使われてないトンネルに来て何するんだよ?
オレ、井戸とトンネルは嫌いなんだけどぉ~~ 」
霄囹
「 文句言うなよ。
僕の手伝いをさせてやるんだから、有り難く思って感謝しろ 」
マオ
「 全然有り難くないし、寧ろ迷惑千万だけどな! 」
霄囹
「 まぁ、聞けって!
損はさせない 」
マオ
「 損得の問題じゃないんだけどな…… 」
霄囹
「 此処は有名な《 心霊スポット 》だ 」
マオ
「 じゃあ、帰ろう 」
霄囹
「 帰るな!
良いか、このトンネルには伝説級の怪異が住み憑いているんだ! 」
マオ
「 伝説級の怪異?
眉唾もんじゃないのか? 」
霄囹
「 それを確かめる為に此処に来たんだぞ!
このトンネルに住み憑いてる怪異ってのが──、“ ダッシュばばぁ ” だの “ ターボばばぁ ” だの “ マッハばばぁ ” だのと地元住民から呼ばれている足の超絶速い怪異だ 」
マオ
「 足の速い怪異??
その怪異が地元住民達に何か悪さをしたのかよ? 」
霄囹
「 そんな事は無い。
僕は足の速い怪異を式神にしたいんだ。
その為に来た 」
マオ
「 ………………足の速い式神なんて必要なのか?
空を飛べる式神が居るし、転移陣を使えば走るより断然速いじゃないか 」
霄囹
「 あのなぁ、飛んで移動の出来ない場合いも有るだろ。
転移陣は確かに便利で楽だが、消耗が激しいんだ。
連続で使うのは疲れるんだよ! 」
マオ
「 そんなの初耳だけど 」
霄囹
「 兎に角!
高速ババァを弱体化させる為に手伝ってくれよ 」
マオ
「 そんなの式神達で囲んで袋叩きすれば良いだろ 」
霄囹
「 あのなぁ、殺意に満ち満ちてる式神達に集団リンチなんてさせてみろ。
高速ババァが消滅しちまうだろ。
そしたら式神に出来ないじゃないか 」
マオ
「 鯔つまり──、消滅しない程度に “ 弱体化させたい ” って事か。
自信無いなぁ…… 」
霄囹
「 魔具刀も使わないと宝の持ち腐れだぞ 」
マオ
「 しょうがないな……。
確かに居るんだろうな?
ガセじゃないよな? 」
霄囹
「 あぁ、情報提供者は信頼の出来る相手だ。
信じて良いさ 」
マオ
「 ふぅん?
まぁ、シュンシュンが信じるなら良いけどさ。
地元住民に悪さしてない怪異なら、そっとしといてやっても良いと思うんだけどな 」
霄囹
「 地元住民には危害を加えて無いが、このトンネルを使えなくて困ってる人間は居るんだよ。
此処を通れる様になれば、態々迂回して遠回りせずに済むから、45分も短縮する事が出来るんだ。
大きいと思わないか 」
マオ
「 確かに……45分の短縮は大きいと思うな。
でもさ、それって人間の勝手な都合だろ。
怪異には一切関係無いじゃんか 」
霄囹
「 その通りだ。
僕も人間の身勝手極まりない都合なんて激しくどうでもいいんだ 」
マオ
「 だったら何で── 」
霄囹
「 初めに言っただろ。
“ 式神が欲しい ” からだよ 」
マオ
「 何か怪しいなぁ~~。
裏でも有りそうなんだけど── 」
霄囹
「 馬鹿言えよ!
僕は自分の私利私欲の為にしか動かない!
今回だって同じだ!
僕の欲望を叶える為に此処に居るんだぞ!
主人が眷属の僕を疑うのか? 」
マオ
「 何で必死になってるんだよ…… 」
霄囹
「 なってない!
( 全く、無駄に鋭い奴め!
マオにバレない様になんて無理ゲーも良いところだ── )」
僕がマオを《 心霊スポット 》と呼ばれているトンネルへ連れて来たのは意味が有る。
脅迫さ──依頼されたからに他ならない。
僕だって本来なら、こんな所には来たくもないし、用も無かったんだ。
高速ババァなんて言う怪異なんて、ぶっちゃけどうでもいいんだ。
別に今の式神で十分に足りてるし、増やす予定だって無かったんだ。
目が回りそうな程に忙しい僕に白羽の矢が当たった事は不名誉でしかない。
ムカつくから高速ババァなんか四の五の言わずに祓ってしまって、さっさと帰りたいんだが──、そうも行かない。
僕はマオを騙す為に “ 新しい式神が欲しくてたまらない僕 ” を演じ続けなければいけないんだ。
最低過ぎる。
◎ 訂正しました。
心霊スポット ─→ 《 心霊スポット 》