✒ 囲碁サロン 3
マオ
「 有り難う御座いました。
最後まで指導碁で終わっちゃったな 」
奥邦真矢奈
「 嘘よ…………私が指導碁で負けるなんて……。
私が貴方より弱いって言うの!? 」
マオ
「 ははは……。
ドンマイ? 」
奥邦真矢奈
「 貴方!
院生ね!
何処の《 囲碁教室 》に通ってるのよ?
教えなさい!! 」
マオ
「 オレは院生じゃないよ。
オレが指導碁しか打てないのは、指導碁ばかり打たれていたから、打ち方を覚えちゃっただけで──。
彼処に座って話し合いをしてるオレの異母兄の所為かな~~。
セロなら、この状態から黒石を勝たせる事が出来るよ 」
奥邦真矢奈
「 はぁ?
何言ってるの?
この状態から黒石が逆転するですって?
馬鹿を言わないでくれるかしら!
そんなのプロ棋士だって無理よ! 」
マオ
「 そんな事ないよ。
この盤上の何処かに逆転に繋がる一手が隠れてるんだ。
オレには分からないけど、セロなら分かるよ 」
奥邦真矢奈
「 馬鹿らしい!
話にならないわ!
厳蒔磨絽だったわね。
私に★を付けたアンタの事は忘れないからね! 」
院生の少女は機嫌を悪くしたのか、プンスカと怒りながら《 囲碁サロン 》を出て行った。
盤上の棋譜を碁罫紙に記録しとく。
後でセロに逆転してもらおっと!
投了した黒石が、打ち手を変えて華麗に白石に逆転する動画をマオキノに取ってもらうんだ!
【 投了からの逆転シリーズ 】の動画は、かなり人気あるみたいだからな。
幻夢さん,玄武さん,弓弦さんにも打ってもらって、画面を4つに区切って投稿してもらおっと!
皆、打ち方が違うから、囲碁を上達したい人達の参考になるかもだしな!
盤上の碁石を碁笥の中へ入れて後片付けを終えたオレは、セロの元へ戻る事にした。
オレとの対局が囲碁を止める切っ掛けにならなきゃ良いけど──。
未だ話してるぅ~~。
セロの隣に座ってサンドイッチの盛り合わせとクリームソーダを注文する。
暇だから碁罫紙を写メって、幻夢さん,玄武さん,弓弦さんのスマホへ送信した。
《 囲碁サロン 》で院生の子と打った事──、白石がオレ,黒石が院生の子って事──、黒石が白石に逆転する一手を教えてほしい事──を文章も付け加えた。
3人共忙しいから返信は期待してなかったけど、注文したサンドイッチの盛り合わせとクリームソーダが運ばれて来る前に返信が来て驚いた。
意外と忙しくないのかな?
3人共メッセージ欄に “ ◯◯ ― ◯◯ ” って数字を書いてくれてるけど、3つとも数字が違う。
棋力の高さで逆転の一手の場所って違うのかな?
セロなら何処に打つんだろう。
幻夢さん,玄武さん,弓弦さんとは違う場所だろけど──。
そうなるとだ、盤上には黒石が白石に勝てるかも知れない “ 逆転の一手 ” が4ヵ所も隠れてる事になる訳だ。
投了しても、打ち手が変われば “ 逆転も可能 ” なんて、囲碁は本当に奥が深い。
運ばれて来たクリームソーダを飲みつつ、サンドイッチの盛り合わせを食べながら、3人へ御礼の返信メッセージを送る。
セロと担当編集者の話しは当分終わりそうに無いから、オレは【 少年陰陽師★平安幻想異聞録 ~ 碁会所 ~ 】で遊ぶ事にした。
対局した棋譜を記録した碁罫紙を写メった画像を【 少年陰陽師★平安幻想異聞録 ~ 碁会所 ~ 】の中に有る[ 棋譜帳 ]へ送信するとセロカPが加算されて、[ 棋譜帳 ]の頁が増えるんだ。
[ 棋譜帳 ]の頁が増える度に妖怪スタンプが1つ貰えて、妖怪スタンプが10個になると各都道府県の御当地キャラクターと囲碁を打てる様になるんだ!
都道府県の御当地キャラクターは、キノコン達が無断で改良してる人工AIが担当するらしいから、めちゃんこ強いらしい。
オレは御当地キャラクターを未だ1体もゲットしてないけど、47都道府県分の御当地キャラクターをコンプリートするのって大変だよな。
47都道府県の御当地キャラクターをコンプリート出来たら、BPが貰えるみたいだ。
御当地キャラクター1体に対して、妖怪スタンプは10個も必要な訳で──。
碁罫紙の写メ画像を10回も送信する必要が有る訳で……。
コンプリートを目指してるプレイヤーって居るのか??
100枚分の棋譜を集める為に、100回も対局をしないといけないんだぞ?
御当地キャラクターをゲットしたら、日本列島の都道府県に『 制覇 』って文字が出る様になっている。
御当地キャラクターのスタンプが押されるから、日本列島の都道府県を御当地キャラクターのスタンプで埋めていく形式になっている。
気の長いコンプリートだと思う。
オレは既に断念している。
セロと打った棋譜も写メって送信しとこうっと──。
サンドイッチの盛り合わせを完食したオレは、ナポリタンスープパスタの大盛りとアイスフロートを注文した。
久し振りの【 少年陰陽師★平安幻想異聞録 ~ 碁会所 ~ 】だから、一寸気を引き締めてキャラクターとの対局に挑む。
時間制限したい人向けに時間制限システムも付いてるけど、オレはナポリタンスープパスタとアイスフロートを食べないといけないから時間制限を選択せず、2つ有るセーブデータから1つ選んで[ ロード ]する。
アプリゲームなんだけど[ セーブ ]が5つ出来る様になっている。
オレのセーブデータには、本編のストーリーモードの主人公と対戦モードの自分しかない。
今回は対戦モードで遊ぶ。
自分 vs キャラクターで勝ち抜き戦で対局する。
棋力の弱いキャラクターから順々に倒して行く。
人間のキャラクターは弱いから直ぐに勝ててしまう。
妖怪達にも余裕で勝てる。
表妖魔王のセロも楽勝に倒せたけど、どうしても裏妖魔王のセロには勝てない。
アイテムを使ってズルをしないと勝てないレベルなんて反則だろ!!
因みに裏妖魔王のセロに勝利するには、特殊なアイテムが必要で簡単には入手が出来ない。
オレは基本、アイテムを使ってズル勝ちなんてしないから、当然アイテムなんて持ってない。
だから、オレは裏妖魔王には勝てない。
因みに “ 妖魔王のセロ ” は、セロがモデルになってるからだ。
だから、裏妖魔王の棋力は実際のセロに近い。
裏妖魔王との対局に勝つと妖怪達の棋力がググンと上がるんだよな。
妖怪達の封じられていた棋力が解放される事になるって寸法だ。
で──、ストーリーモードをクリアした状態になると、隠しストーリーを始める事が出来る様になる訳だ。
オレは未だ本編のストーリーモードをクリアして無いから、画面には隠しストーリーは出ない。
本編のストーリーモードをクリアしないと隠しストーリーで遊ぶ事は出来ないんだ。
ストーリーモードで遊ぶ気力は既にオレには無い。
裏妖魔王は諦めて、プロ棋士達を相手に対局をする。
因みに妖怪達のモデルはプロ棋士達だけど、あくまでもゲームのキャラクターだから棋力は変化しない。
此処で対局が出来るプロ棋士達の棋力は上がったり下がったりと変化する。
実際のプロ棋士達が強くなったり弱くなったりするからだ。
プロ棋士達の棋力は変化しないけど、波が有って一定では無いから勝てる時も有れば負ける時もある訳で──、完全にランダムだ。
プロ棋士達と打ってもオレは必ず指導碁になってしまう。
現代の本因坊と対局して勝つと、歴代の本因坊達とも対局が出来る様になるんだよな。
オレは現代の本因坊にも歴代の本因坊達にも指導碁で勝っちゃった訳だけど、1人だけ勝てない本因坊が居る。
それが子供の姿で院生になって、プロになった弓弦さんだ。
“ 歴代で最強の棋力を持った本因坊 ” として伝説が語り継がれる程にプロ棋士達から崇め奉られているらしい。
双子の兄弟として玄武さんも子供の姿で院生になってプロ棋士になったけど、本因坊は弓弦さんへ譲ったんだよな。
玄武さんは弓弦さんが本因坊になる迄、本因坊の座を守っていた。
で──、本因坊の玄武さんに挑んだ弓弦さんに勝ちを譲って、本因坊を下りたんだ。
対局が済んだ後、玄武さんは〈 器人形 〉が予め用意していた救急車に乗って、病院へ搬送された──って流れで幕を閉じたんだよな。
大病を患っていた事を明かして、療養に専念する為にプロ棋士を引退して、大自然の病院へ移る事が報道された後、そのまま時の人になった元本因坊──という設定で、玄武さんは元の姿に戻った。
日本列島を旅行して季節を楽しむ生活を送る様になったんだよな。
囲碁は趣味の1つとして、旅行先の《 碁会所 》へ立ち寄っては続けている。
マオ
「 ──おぉ!
ナポリタンスープパスタ美味ぁ~~(////)
もう1皿、注文しよっ! 」
担当編集者:功峰
「 あらあら、磨絽ちゃんは食いしん坊さんなのねぇ~~。
さっき、サンドイッチの盛り合わせを1人で食べちゃったのに、ナポリタンスープパスタまで1人で食べちゃうなんてぇ~~。
それ、3人前なのよぉ 」
マオ
「 えっ?
ナポリタンスープパスタって3人前だったの?
オレはてっきり1人前かと思って── 」
セロフィート
「 好きなだけ頼めば良いです。
《 囲碁サロン 》ですから、囲碁を打つのを忘れない様にしてください 」
マオ
「 さっき院生の子と打ったよ。
指導碁で勝ったけどな! 」
担当編集者:功峰
「 あらあらあらあら、なぁ~~にぃ~~。
磨絽ちゃん、囲碁強いのぉ?
院生の子に買っちゃうなんて凄いじゃないのぉ~~。
指導碁で勝っちゃうなんてぇ~~。
その設定、頂いちゃいましょ★
主人公の働く《 囲碁サロン 》の常連客になる新キャラにどうかしら? 」
セロフィート
「 主人公と刑事にどう絡ませます? 」
担当編集者:功峰
「 そうねぇ~~ 」
また2人で話し合いを始めた。
オレの事なんて忘れちゃったみたいに!!
ナポリタンスープパスタを完食したオレは、再び席を立った。
店内をプラプラ歩いていたら、スタッフが困っているみたいだから声を掛けてみた。
どうやら対局相手を探している客が居るらしい。
その人は癖の強い人らしくて、誰も対局したがらないみたいだ。
暇してる事とオレも対局する相手を探していた事を伝えると、スタッフは安堵したのか、嬉しそうな顔をした。
スタッフに案内されて対局相手を探している客の席に案内された。
どうせ指導碁で勝っちゃうけど、プラプラしてるよりはマシだよな。
セロからも「 囲碁を打つ様に 」って言われたからな!
案内された先には着物を着た年配のオッサンが椅子に座っていた。
扇子をパタパタと動かして扇いでいる。
人が良さそうな感じに見えるけど、話してみないと分からないよな。
相手は一応年長者だから、オレは自分から声を掛けて挨拶をしてみた。
相手は見た目が子供っぽいオレを見て、明らかに嫌そうな顔をされた。
傷付くなぁ~~。
秒で負かせてやろうかな!
オレは誰が相手でも手を抜いたりはしないんだ!