✒ 嗚呼…非道 4
──*──*──*── 旅館
──*──*──*── 宿泊室
転移魔法で戻って来た。
[ 宿泊室 ]で時計を見たら14時だ。
[ 喫茶店 ]に行って食事を済ませる事になった。
[ 宿泊室 ]を出たら、廊下を歩いてエレベーターに乗る。
──*──*──*── 1階
──*──*──*── ロビー
[ 喫茶店 ]へ向かって歩いてると[ ロビー ]に設置されているソファーに腰を下ろして座っている人が居る。
ビシッとスーツを着こなしている格好いい人だ。
外見だけで判断をすると女性だ。
最近は事件の所為で、外見だけで性別を判断したら駄目な事を学んだから、本当に女性で合ってるのか分からない。
女性の外見をしていても実は書類上の性別は、“ 男 ” とかだったらマジで怖い。
その逆──ガッツリと男の外見をしているのに書類上の性別が “ 女 ” ってのが特に怖い。
カオスな社会になりつつ有る。
これも危険思考の悪徳政治家達とズブズブでグルッてるヤバい宗教団体の所為にして、社会問題にしてやりたい。
セロには内緒でキノコンに相談してみようかな。
セロと一緒にソファーの前を横切ると、女性が立ち上がって声を掛けて来た。
どうやらセロとオレを待っていたみたいで、伝えたい事が有るらしい。
女性は刑事さんだった。
折角だから女性の刑事さんも誘って[ 喫茶店 ]に向かった。
どんな話か分からないけど、立ち話なんてしたくないし、オレは何か食べたい気分だった。
だって15時前だしな!
──*──*──*── 喫茶店
一応、人目に付き難くて目立たない席へ案内してもらう。
セロとオレが左右に並んで座り、向かいに女性刑事さんが座る。
女性刑事さんからは仕事の出来る女性のイメージがプンプンする美人さんだ。
セロは値段の高いフルーツティーとショートケーキタルトを注文した。
オレはパスタ,サンドイッチ,キッシュ,ピザと冷たいカルピスを注文した。
女性刑事さんが注文したのはウィンナー珈琲だ。
女性刑事さんから伝えられた内容は、“ 良い知らせ ” と “ 悪い知らせ ” の2種類。
先に “ 良い知らせ ” から話してもらう事にした。
どんな話が飛び出て来るのかハラハラしてしまう。
話の内容は以下だ────。
オレが第1発見者になった【 川原殺人事件 】の殺人犯が見付かり、逮捕された事で、事件が解決したらしい。
オレが発見した男を殺害した犯人は、ヒロッキが教えてくれて、案内してくれた《 珈琲専門店 》に足蹴く通っていた常連さんだった。
マスターとも仲が良くて、ヒロッキが勤めている《 理髪店 》の店長とも殺害された被害者とも顔見知りだったみたいだ。
殺害犯には仲良くしていた女性が居たらしい。
殺人犯は女性に対して想いを寄せていたんだとか。
その女性は殺害された被害者からのストーカー被害に遭っていて、困っていたし、悩んでいたらしい。
ある日、その女性は殺害された被害者から一方的な暴行を受け、強制猥褻,強姦され、望まない性的被害を受けてしまったらしい。
女性は仲の良かった殺人犯に打ち明けた。
数ヵ月後、妊娠が発覚した事にショックを受けた女性は、自ら命を絶ってしまった。
それが切っ掛け──引き金となり、殺人犯は女性を死に追いやった性犯罪者を見付け出して復讐する決意をしたらしい。
で──、とうとう目的の性犯罪者を見付け出せた。
あの夜、川原で殺害して逃走したって訳だ。
殺害された被害者は、女性をストーカーしていた犯罪者で、一方的な暴行,強制猥褻,強姦で女性へ望まない性的被害を与えた最低な犯罪者だった事が判明した。
殺人犯は復讐を果たす為の鬼となってしまったけれど──、仲の良い女性に想いを寄せて、一途に好いていた男性だった。
なんて悲しくて悔やまれる結果だろう。
本当に罰せられるべき相手は、殺人犯の方じゃなくて殺害されてしまった犯罪者の方じゃないか!
何て後味の悪い事件なんだ……。
やるせない感が半端ない──。
だけど、これで事件が1つ解決したのは事実だ。
例えどんな事情が有ろうとも事件が解決したって事は、世間的にも喜ばしい事だ。
それがどんなに卑劣で最低な犯罪者が被害者としてこの世から去っていたとしてもだ。
次は知らせを聞く。
悪い知らせの内容は、捜査中の刑事が殉職したらしい。
何でも、昨日の提灯祭りの最中に《 神鴉神社 》の周辺で起きた事件に携わった刑事が、市民を優先して守った代わりに殉職したらしい。
刑事が殉職するなんて珍しい事じゃないけど、知り合ったお巡りさんが【 《 CES 》乱射事件 】で子供を守って殉職しているから、嫌な予感しかしない。
もしかして──、殉職した刑事って若手刑事だったりして??
セロフィート
「 それで殉職されたと言う刑事さんとは誰でしょう? 」
マオ
「 う…うん…… 」
セロってば、ドストレートに聞くんだから!
女性刑事さんが教えてくれたのは────。
セロフィート
「 そうですか……。
それは残念です……。
約束していた小説を《 旅館 》から送ったばかりなのですが…… 」
セロと女性刑事が話してる内容を聞いて、昨日の提灯祭りで殉職した刑事が、セロの小説ファンだった強面刑事だって事の察しが付いた。
昨日、夕食を食べ終えた後にセロはサインを書いた小説を箱に入れていた。
今朝、朝食を食べに1階へ下りて来た時に、フロントに荷物を預けて、強面刑事が勤めてる《 警察署 》の部署宛に送ったばかりだ。
折角強面刑事宛に荷物を送ったのに、強面刑事がセロの小説を読む日は2度と “ 来ない ” って事だ。
昨日の提灯祭りには行っていた。
あの異変が事件の始まりだったのかも知れない。
あの時、野次馬根性を出して現場を見に行っていれば、もしかしたら強面刑事を助ける事が出来たかも知れない。
あの時、セロがオレを止めなければ────。
いや、行った所で回復魔法を強面刑事へ掛ける事が出来たか分からない。
大勢の人前で回復魔法を使う訳にはいかないし……。
結局、野次馬根性を出して現場を見に行ったとしても、何も出来ないままで終わっていたかも知れない……。
マオ
「 セロ── 」
セロフィート
「 マオ……。
仮に現場を見に行ったとしても、一般市民のマオとワタシは深傷を負った刑事さんへは近付けませんでした。
見に行かない選択をした自分を責めてはいけません 」
マオ
「 うん…… 」
何でこうも辛い事が連続して続くんだろう──。
まるで誰かに仕組まれて起きてるみたいだ。
だけど、それが出来る相手をオレは1人しか知らない。
発作を起こしたセロが、裏で手を引いてたのか??
ツアー旅行の間に起きた全ての事件にセロが関与している──とか。
有り得るぅ~~~~。
でもオレには、それを聞く勇気は無い。
セロが仕組んだ事件なのか、親しくなったお巡りさんと強面刑事さんを殉職へ追い込んだのか──って事を問い詰める事も出来ない。
………………セロが “ 携わってる ” なんて思いたくないからだ──。
セロを嫌いになりたくないオレが居るから……。
惚れちまった弱味だな……。
マオ
「 昨日の提灯祭りで事件を起こした犯人は捕まったの? 」
女性刑事
「 えぇ、何とか取り押さえる事が出来てね。
でも取り調べ中に歯に仕込んでいた毒を飲んだらしくてね、亡くなってしまったの…… 」
マオ
「 取り調べ中に服毒したの?!
何で!! 」
セロフィート
「 それは刑事さん達も捜査しているでしょう。
服毒するとは、初めから捕まる事を想定していたのかも知れません。
亡くなった犯人のバックに大物が居るかも知れませんね 」
マオ
「 セロ…… 」
セロフィート
「 マオ、そんな顔をしないでください。
マオが第1発見者となった川原の事件は無事に解決しました。
桃狩りも出来ましたし、これで何時でも≪ 東京都県 ≫へ帰れます。
喜びましょう 」
マオ
「 う…うん……。
それは…そうなんだけど……。
後味の悪い “ ツアー旅行 ” になっちゃったな…… 」
セロフィート
「 そういう時も有ります。
刑事さん、伝えに来てくださり有り難う御座います 」
女性刑事
「 いえ、上司からの指示ですから(////)」
話が終わると女性刑事さんは、ウィンナー珈琲を飲み干して[ 喫茶店 ]を去って行った。
セロフィート
「 マオ、明日の朝、チェックアウトをして《 裏野ハイツ 》へ帰りましょう 」
マオ
「 分かった……。
楽しい桃狩りツアーになる筈だったのにな── 」
セロフィート
「 退屈しませんでしたね♪
様々な事件が起きてくれた事で、それなりに楽しめる旅行でしたし 」
マオ
「 それなりに──かよ。
オレは、どっと疲れたよ……。
こんなツアー旅行なんて金輪際懲り懲りだし、遠慮したいな! 」
セロフィート
「 ワタシには少しスパイスの量が物足りませんでしたけど、マオには多過ぎた様ですね 」
マオ
「 事件を “ スパイス ” って言うなぁ~~ 」
セロフィート
「 はいはい。
今夜の料理が最後になります。
豪勢にしてもらいましょう 」
マオ
「 そだな。
やけ食いしたい気分だからな! 」
17時まで[ 喫茶店 ]で時間を潰したセロとオレは、[ 宿泊室 ]へ戻る。
オレは最後の温泉を堪能する為、[ 宿泊室 ]にセロを残して、1人で[ 大浴場 ]へ向かった。