✒ 嗚呼…非道 2
──*──*──*── 翌日
──*──*──*── 照塰帑病院
《 照塰帑病院 》は、かなり広い敷地内にデカくて立派な病棟が建っている。
敷地内の案内看板を見ると、五芒星をイメージしているのか、真ん中の病棟を中心に5つの病棟に行ける様になっていて、病棟の壁には虹が描かれている。
──*──*──*── 病棟
真ん中の病棟に在る正面玄関から入ると広いロビーに出る。
天井が馬鹿みたいに高くて高級ホテルみたいな《 病院 》だ。
セロフィート
「 寛晶さんの[ 病室 ]を聞きましょう 」
マオ
「 うん。
面会…出来ると良いんだけど…… 」
セロが受け付けでヒロッキの[ 病室 ]の事を聞いてくれる。
受け付けの人はセロに向かってペラペラと何かを話している。
セロフィート
「 マオ、寛晶さんは意識が戻り、[ 集中治療室 ]から[ 個室 ]へ移ったそうです 」
マオ
「 良かったぁ!
[ 個室 ]って事は、他の患者さんを巻き込まない為の配慮かな 」
セロフィート
「 そうかも知れませんね。
寛晶さんを刺した母親が未だ逮捕されていないなら、[ 大部屋 ]に入れば、他の患者さんに被害が及ぶ可能性が有ります 」
マオ
「 そうだよな。
無抵抗な患者が被害に遭う危険な可能性が有るなら避けないと…… 」
セロフィート
「 マオ、行きましょう 」
セロは受け付けの人から聞いたヒロッキが移された[ 個室 ]を目指して進んで行く。
──*──*──*── 病棟C
[ 病棟C ]に移動したら、エレベーターに乗って[ 個室 ]の階へ向かう。
廊下を歩いてヒロッキの[ 個室 ]へ向かっていると、警察官が立っている。
マオ
「 セロ、彼処がヒロッキが移された[ 個室 ]なんだよな?
何で警察官が立ってるんだ? 」
セロフィート
「 何か起きたのでしょう。
事件続きで忙しいですね。
何が起きたのか尋ねてみましょう 」
マオ
「 古代魔法が大活躍だな! 」
セロは廊下に立っている警察官に話し掛ける。
警察官には守秘義務が有るのにセロに向かってペラペラと喋ってくれる。
守秘義務も古代魔法の前では無力だな。
セロフィート
「 マオ、事情が分かりました。
場所を変えて話します 」
マオ
「 お…おぅ……。
ヒロッキは中に居るのか? 」
セロフィート
「 別の[ 個室 ]へ移されているそうです。
刑事さんから事情聴取を受けているみたいです 」
マオ
「 ヒロッキが事情聴取?!
セロ、詳しく教えてくれよ! 」
セロフィート
「 はいはい。
[ 休憩所 ]が有ります。
其処で座って話しましょう 」
──*──*──*── 休憩所
[ 休憩所 ]には幸いにも患者や見舞いに来ている人が居ない。
空いているソファーに腰を下ろして座る。
会話の内容が聞かれない様にとセロが防音魔法を掛けた。
マオ
「 セロ、警察官から何を聞けたんだ? 」
セロフィート
「 寛晶さんの[ 病室 ]に藤嶋周斗さんの婚約者さんが御見舞いに来ていたそうです。
その後、寛晶さんを刺したまま逃亡していた実母が[ 病室 ]へ入って行きました。
[ 病室 ]から叫び声と悲鳴が聞こえたと患者から教えられた看護師が[ 病室 ]へ入ると、血塗れの状態で婚約者さんが床に倒れていたそうです。
寛晶さんは窓の側で座り込み放心状態となっていた様ですね 」
マオ
「 えと…………ヒロッキの御見舞いに来てたいつぞやのお姉さんが、フラッとやって来たヒロッキの母親に “ 刺された ” って事かよ? 」
セロフィート
「 間違い無いでしょう。
婚約者さんの身体に刺さっていた刃物は、寛晶さんを刺した時に使われた刺身包丁でした。
婚約者さんは身体を数ヵ所も刺されていたそうです。
残念ながら息を引き取り亡くなってしまいました 」
マオ
「 嘘…だろ……。
あのお姉さんが死んだ??
ヒロッキの母親は!
逮捕されたのか?
それともまた逃亡したのか? 」
セロフィート
「 母親は寛晶さんが座り込んでいた窓から落下し、死亡したそうです 」
マオ
「 えっ…………死んだ?
落下死??
窓から──って事は自殺したって事か? 」
セロフィート
「 いいえ。
婚約者さんを滅多刺しにした母親を窓から落下させたのは──、寛晶さんです 」
マオ
「 えっ?!
ヒロッキが母親を窓から落下させた??
でもさ、ヒロッキは安静にしてないといけない病人じゃないか!
病人が刃物を持ってる元気な母親をどうやって窓から落としたって言うんだよ!! 」
セロフィート
「 [ 病室 ]に居たのは入院患者の寛晶さん,寛晶さんの御見舞いへ来た婚約者さんだけです。
其処へ刃物を持ち込んだ母親が現れ、婚約者さんを刺しました。
寛晶さんは母親に刺される婚約者さんを黙って見ている様な人ではないです。
母親から刺される婚約者さんを無理をしてでも助けようと動いた筈です 」
マオ
「 無理をして……お姉さんを助けようとした…… 」
セロフィート
「 寛晶さんの着ていたパジャマは婚約者さんの血で汚れていたそうです。
自分の身体に鞭を打ち、懸命に婚約者さんから母親を引き離そうとした証です。
亡くなってしまった婚約者さんは残念です 」
マオ
「 ………………じゃあ、ヒロッキはお姉さんを助ける為に母親を止む終えず窓から落とした──って事かよ? 」
セロフィート
「 さて、“ 止む終えず ” なのかは分かりません。
寛晶さんの腹の内は誰にも分かりません。
仲の良かった弟さんの婚約者さんが目の前で刺されたのです。
平常心では要られないでしょう。
突発的に芽生えた殺意による犯行かも知れませんし 」
マオ
「 セロ!
ヒロッキを犯人にしたいのかよ! 」
セロフィート
「 そんな事は言ってませんし。
抑、婚約者さんを刺した母親が自分から窓を飛び降りた説は成立しません 」
マオ
「 何でだよぉ! 」
セロフィート
「 自ら飛び降りる場合、落下すると俯せの状態で地面に全身をぶつける事になります。
窓から後ろ向きに落下をすると壁に近い地面に落ちますし、仰向けの状態になります。
母親は仰向けの状態で落ち、仰向けの状態で地面へ激突しました。
落下場所は壁から離れています。
自分から窓を飛び降りたのではなく、誰かから勢い良く押されて落下した事を物語っています。
依って母親を窓から落下させたのは実子である寛晶さんの可能性が高いです 」
マオ
「 そんな……。
ヒロッキは逮捕されちゃうのかよ! 」
セロフィート
「 相手が相手,事情が事情ですし、情状酌量の余地は有るかも知れません 」
マオ
「 セロ、何とか出来ないのかよ?
ヒロッキを無実にするとかさ 」
セロフィート
「 マオ……。
それは出来ません 」
マオ
「 何でだよ!
事件に無関係な悪人に罪を擦り付けて殺人犯に仕立て上げるなんて何時もしてる事だろ!
セロならヒロッキを無罪に出来るじゃん! 」
セロフィート
「 出来ますけど、しませんし 」
マオ
「 何でだよぉ! 」
セロフィート
「 折角、お見舞いに来たのです。
帰る前に駄目元で寛晶さんの[ 病室 ]へ寄ってみましょう 」
マオ
「 お…おぅ…… 」
話を終えたセロとオレは、[ 休憩所 ]を出るとヒロッキの[ 病室 ]を向かった。