✒ 事件が終わらない 1
──*──*──*── 旅館
──*──*──*── 駐車場
漸く《 旅館 》に着いて、[ 駐車場 ]を歩いていると「 キッキッーーーッッッ!! 」とか「 ドゴンッ!! 」とか「 グジャッ!! 」とか「 ギュルルルルルル 」とか「 ガッコン──ドギュギュギュンッッッ!! 」という物騒な音が聞こえて来た。
マオ
「 何だろう?
物凄い音だったよな。
車の音かな?
車が何かにぶつかったのかな? 」
セロフィート
「 マオ、君は懲りませんね。
つい最近、死体の第1発見者となった事を忘れました?
好奇心を抑えなさい 」
マオ
「 セロ、だけどさ── 」
セロフィート
「 川原の殺人事件の犯人は未だ捕まってませんし、事件も解決してません。
別の事件にも関わるつもりです? 」
セロはオレが走って行けない様に腕を掴んでいる。
人形の握力は尋常じゃない程強くて、オレの力では振りほどく事は出来ない。
無理に振りほどいたりしたら、オレの腕が折れてしまいそうだ。
セロフィート
「 マオ、このまま知らない振りをして《 旅館 》へ入りましょう。
マオが駆け付けなくとも、誰かが駆け付け第1発見者となってくれます。
[ 宿泊室 ]でワタシと『 いいこと 』しましょう 」
マオ
「 セロ…………。
セロと『 いいこと 』したいけど……でも!
知らん顔は出来ないだろ!
セロと『 いいこと 』したいけど…………見てみぬ振りは……したくない……。
セロと『 いいこと 』……『 いいこと 』……セロとぉ~~~~ 」
セロフィート
「 ふふふ…。
はいはい、分かりました。
マオは昔からそういう子でしたね。
好きになさい 」
マオ
「 セロ……良いのか? 」
セロフィート
「 おや、このまま[ 宿泊室 ]へ連行しても良いです? 」
マオ
「 ──様子を見て来る! 」
セロの力が緩んだから、オレは音がした方へ走った。
──*──*──*── 現場
既に人が集まっていた。
どうやら第1発見者は別の人みたいだ。
現場では、知らない “ 誰か ” が血を流して倒れている。
[ 駐車場 ]には車椅子が倒れている。
倒れている人物が《 旅館 》に宿泊している客なのか──、宿泊する為に《 旅館 》へ来た客なのか──、今のオレには分からない。
始めから目撃してないオレには、どういう状況なのかも分からない。
マオ
「 何が起きたんだよ…… 」
倒れている人物の頭から尋常じゃない血液が流れ出ている。
赤い水溜まりみたいだ。
セロフィート
「 《 旅館 》の[ 駐車場 ]で轢き逃げ事件ですか。
一大事ですね、マオ 」
マオ
「 セロ── 」
セロフィート
「 塢榁刑事には伝えました。
もうじき、《 警察署 》から警察官が来てくれます 」
マオ
「 えと──、救急車は? 」
セロフィート
「 はい?
救急車は発見された方が呼んだでしょう?
ワタシは車の音を遠くで聞いただけですし 」
マオ
「 それはそうだけど…… 」
セロフィート
「 あれ程の血溜まりが出来てますし、即死ではないです?
息をしているとは思えませんけど 」
マオ
「 それ此処で言っちゃうか? 」
セロフィート
「{ こんな人集りの中で回復魔法は使えませんよ。
彼女の事は諦めなさい }」
マオ
「 彼女??
いや、オッサンだろ?
髭生やしてるし、坊主だし、体格だって──ふくよかだし…… 」
セロフィート
「{ マオ、見た目だけで人の性別を判断してはいけません。
見た目と性別の違う人が居たでしょう }」
マオ
「 そ…そだったな……。
じゃあ、倒れて血を流してるオッサンは──、男じゃなくて……。
{ 男だけど、性転換手術をしないで書類上の女になったトラスン女性の人か? }」
セロフィート
「{ その逆です。
外見を男性に近付けはしたものの未だ “ 書類上の男 ” になれていない身体障碍者の女性です }」
マオ
「{ ややこしいっ!?
でも、車椅子に乗ってたんだよな?
障碍者なのは事実かも?? }」
セロフィート
「{ 大抵の事は刑事さんの捜査で明らかになる事です。
此処に居る全員が刑事さんの事情聴取を受ける事になるでしょうね }」
マオ
「 そだな…… 」
セロと小声で話していると、救急車のサイレンが聞こえて来た。
その後に続く様にパトカーや鑑識の車が[ 駐車場 ]に到着した。
車から鑑識をする人達が降りて来ると、テキパキと作業を始める。
[ 駐車場 ]の一部にイエローテープが貼られて行く。
一部始終を見ていると数人の刑事が現場へ到着した。
塢榁刑事の姿は無いみたいだ。
マオ
「 塢榁刑事は来ないんだな? 」
セロフィート
「 《 照塰帑病院 》に居るのかも知れません 」
マオ
「 あっ、そっか。
ヒロッキの病室の警護を頼んだっけ──。
でも、塢榁刑事が警護の任に就くとは限らないだろ? 」
セロフィート
「 事情聴取は必ずされます。
《 旅館 》の中へ入りましょう。
折角ですし、《 売店 》で何か見てます? 」
マオ
「 そだな。
《 売店 》で気になってる商品が有るんだ! 」
セロと一緒に[ 駐車場 ]から《 旅館 》の[ 玄関 ]へ向かって歩く。
刑事達の指示で他の目撃者達も《 旅館 》の[ 玄関 ]き向かって歩き出している。
これは[ ロビー ]で事情聴取のパターンかな?
──*──*──*── ロビー
セロとオレは一緒にソファーに腰を下ろして座っている。
4名の刑事が現場に居た目撃者達を集めて事情聴取を行っている。
事情聴取が終わった目撃者達は[ ロビー ]から離れて行く。
セロとオレの順番が来た。
セロとオレは別々の刑事に事情聴取を受ける事になった。
オレの事情聴取を担当するのは、強面で体格の良い刑事だ。
声も野太くて、雰囲気も恐い。
でも…刑事なんだよなぁ……。
犯罪者を捕まえて逮捕する刑事だから、正義の味方──。
刑事
「 名前は? 」
マオ
「 厳蒔磨絽……です 」
刑事
「 まおろ君か。
どんな漢字を書くんだい? 」
マオ
「 えぇと── “ まお ” は “ 磨く ” の “ 磨 ” で、“ ろ ” は── 」
もしかして、オレの緊張を解そうとしてくれてる??
オレは強面刑事の質問に素直に答える事にした。