⭕ 理髪店
──*──*──*── 3日後
観光ツアーで来ていたツアー客達は、観光バスに乗って帰って行った。
2名のツアー客を殺害した犯人が見付かり、逮捕された事で事件が解決したからだ。
結局、観光ツアーのメインだった桃狩りも中止になった訳だけど──。
桃狩りをする最終日の前日に犯人が逮捕されていれば、ツアー客は桃狩りを堪能して帰れたってのに、現実ってのは無情で残酷だ。
楽しみにしていた桃狩りが中止になって、ツアー客達が《 旅館 》で出禁を食らっていた夜に、警察が漸く殺人犯を特定して逮捕されたんだ。
なもんだから、ツアー客は1日遅れで観光バスに乗って帰る事になった。
で──、セロとオレは《 旅館 》に残っている。
川原の事件が未だ解決してないから──って訳じゃなくて、どうしても桃狩りをしてから帰りたいから、セロに我が儘を言ったんだ。
マオキノとセノコンに「 桃を持ち帰る 」って公言しちゃったしな。
バスガイドさんと運転手さんには、セロが事情を説明してくれた。
普通は駄目なんだろうけど、セロは古代魔法を使えるから、バスガイドさんと運転手さんの記憶でも改竄したのかも知れない。
そんな訳だから、セロとオレは《 旅館 》に残る事が出来たんだ。
《 旅館 》で起きた殺人事件が解決したから、外出するのに刑事さんが同行する必要は無くなった。
今日は理容師見習いの萩頼寛晶さんが働いている《 理髪店 》に行く予定になっている。
萩頼寛晶さんとは、出逢った日にスマ友になって、LINEでやり取りをする事になったんだ。
《 理髪店 》に行くのは初めてだから、ワクワクしている。
別に髪を切りに行く訳じゃないんだけど──。
セロフィート
「 マオ、そろそろ出ましょう 」
マオ
「 そうだな。
《 理髪店 》って《 旅館 》から近いのか? 」
セロフィート
「 《 タイムミー 》から見て西です 」
マオ
「 遠ぉ~~。
セロ、転移魔法で── 」
セロフィート
「 歩いて行きましょう。
散歩です 」
マオ
「 はぁ~~ 」
セロフィート
「 《 理髪店 》の後、《 珈琲専門店 》へ寄ってから《 旅館 》へ戻りましょう 」
マオ
「 紅茶派のセロが珈琲を気に入るなんてな~~ 」
セロフィート
「 誰が紅茶派ですか。
紅茶以外も飲みますし 」
そんな訳で、セロと一緒に《 旅館 》を出て《 理髪店 》を目指して出発した。
──*──*──*── 移動中
《 交番 》を通り過ぎて、未だに立ち入り禁止のイエローテープが貼られている《 タイムミー 》を通り過ぎる。
西へ向かってひたすら歩く。
《 本屋 》を通り過ぎて、《 ドラッグストア 》を通り過ぎて、横断歩道を渡った後に《 お好み焼き屋 》を通り過ぎた。
《 ファッションセンター 》を通り過ぎた先に目的地の《 理髪店 》が見えた。
やっと着いたぁ~~。
散歩って距離じゃなかった気がする……。
──*──*──*── 理髪店
マオ
「 此処がヒロッキが働いてる《 理髪店 》なんだ。
……………………でもさ、何で警察が来てるんだ? 」
セロフィート
「 塢榁刑事は居ないみたいです。
見張りをしている刑事さんに話を聞いてみましょう 」
マオ
「 うん……。
ヒロッキに会えるかな? 」
セロが《 理髪店 》の前で見張りをしている刑事に話し掛ける。
刑事はセロに向かってペラペラと事情を話してくれる。
古代魔法って恐い……。
セロフィート
「 マオ、《 理髪店 》は急遽休業になりました。
今は店内で、店長さんと従業員さん達が刑事さんから事情聴取を受けてます 」
マオ
「 事情聴取?
事件でも起きたって事かよ?
ヒロッキは無事なのか?? 」
セロフィート
「 《 理髪店 》が開店してから暫く経ってから、寛晶さんの母親が来店したそうです 」
マオ
「 ヒロッキの母親って、夫婦別姓派の毒親だっけ?
自立した生活をしてるヒロッキに干渉して来る過保護な母親──。
ヒロッキの職場に何しに来たんだろうな? 」
セロフィート
「 どうでも良いです。
その母親が店内で騒ぎを起こし、息子の寛晶さんの腹部を刺したそうです 」
マオ
「 えっ?!
母親がヒロッキを刺した?!
何の為に──。
それでヒロッキは無事なのか? 」
セロフィート
「 救急車で《 病院 》へ搬送されたそうです。
凶器の刃物は、刺し身包丁でした。
刃渡りの長い包丁ですから、傷は深いとか── 」
マオ
「 ヒロッキ……。
それで、ヒロッキを刺した母親は?
当然、警察に逮捕されてるんだよな? 」
セロフィート
「 寛晶さんを刺した後、《 理髪店 》から出ると発狂しながら逃走した様です 」
マオ
「 逃走っ!?
自分の息子を刺しといて逃げてるのかよ…… 」
セロフィート
「 マオ、寛晶さんが搬送された《 病院 》へ行ってみます?
面会は出来なくとも容態を聞く事は出来ます 」
マオ
「 古代魔法を使ってな! 」
そんな訳で、セロは見張りの刑事にヒロッキが搬送された《 病院 》の名前を聞いてくれる。
刑事はセロに向かってペラペラと話してくれた。
古代魔法、大活躍だな!
《 理髪店 》を後にして、《 照塰帑病院 》へ向かう事になった。
因みに《 照塰帑病院 》は、《 理髪店 》から車で30分も掛かる場所に在るから、転移魔法を使って行く事になった。