⭕ 旅館で❌❌❌ 3
[ 喫茶店 ]で聞き込みをしていた2名の刑事さんから、セロとオレも今回[ 大浴場 ]で起きた殺人事件について色々と聞かれる事になった。
刑事さんの話で判明した事は、現在絶讚立ち入り禁止となっている[ 大浴場 ]で殺害された人物は、何と観光ツアーに参加していたツアー客だった。
初耳なんだけどぉ!!
1人は別の観光ツアーに参加していたツアー客で、女性──。
もう1人は、セロとオレが参加している観光ツアーのツアー客で、オカマ──。
マオ
「 ……………………セロ、オレ達が参加してるツアー客の中にさ、オカマさんなんて居たっけ?? 」
セロフィート
「 マオ、それはオカマさんではなく、トラスンさんの事でしょう 」
マオ
「 うん?
トラスンさん??
何だよ、トラスンさんって? 」
セロフィート
「 ニュースぐらい見てください。
“ トラスンさん ” と言うのは── 」
セロは無知な──最近の出来事に何かと疎いオレの為に “ トラスンさん ” について詳しく丁寧に教えてくれた。
とは言え、セロの言う事だからな~~。
何処まで真に受けて、信じて良いのか分からない。
マオ
「 ふぅん?
身体は男だけど心は女──。
身体は女だけど心は男──。
何か……ややこしい人間も居るんだな?
女装したり男装する人達とは違うの??
違いが分からないよ…… 」
セロフィート
「 そうですね。
分からなくて良いです。
トラスンさんは[ 女湯 ]の中で殺害されていた──という事です 」
マオ
「 そうなんだ?
じゃあ、女性じゃん 」
刑事
「 違うよ、女性ではないんだよ。
殺害された被害者は、“ トラスン女性 ” と言われているんだ。
謂わば──、身体は男なんだけど、心は女。
性転換手術はしてないけど、性別変更を《 役場 》で認めてもらえて、“ 書類上の女 ” にはなれた “ 元男 ” の人だよ 」
マオ
「 …………………………は??
……………へ?
どゆことぉ??
《 役場 》に必要な書類を提出したら、男から女,女から男に性別の変更が出来るって事ぉ??
知らない内にカオスな社会に変貌しちゃってたっ!! 」
セロフィート
「 未だ途中経過です。
変貌しつつ有る状態ですよ、マオ 」
刑事
「 《 役場 》に書類を提出しても、誰でも性別の変更が出来る訳じゃないよ。
現在は “ 特殊な悩み ” に苦しんでいるトラスンに限っているんだよ 」
マオ
「 ふ…ふぅん……。
一応、対象者は決められているんだ…。
でもさ、この《 旅館 》って誰でも利用が出来る[ 混浴風呂 ]が在ったよね? 」
セロフィート
「 在りますね。
貸し切りの出来るファミリー用の[ 家族風呂 ]も在ります。
[ 混浴風呂 ]も[ 家族風呂 ]も無料で貸し切りが出来ます 」
マオ
「 無料で貸し切りが出来るなんて凄いじゃん!!
あれ?
だったらさ、無料で貸し切れる[ 混浴風呂 ]にトラスン女性の死体が発見されないとおかしくないか?? 」
セロフィート
「 トラスン女性は何故[ 混浴風呂 ]ではなく、態々[ 女湯 ]を利用したのでしょう? 」
マオ
「 [ 混浴風呂 ]と[ 女湯 ]と間違えて入っちゃったとか?? 」
セロフィート
「 仮にそうだとしても、素面の状態で[ 混浴風呂 ]と[ 女湯 ]を間違える事は無いと思いますけど? 」
マオ
「 じゃあ、酔っ払ってたんじゃないのか?? 」
セロフィート
「 “ 書類上の女 ” となれた “ だけ ” の分際で、女性と同じ[ 女湯 ]を利用する権利が有る──と勘違いしていた痛い人ではなかったのでしょう? 」
マオ
「 それ、唯の危険人物じゃんかよ…。
通報されても文句言えないだろぉ… 」
刑事
「 殺害されたトラスン女性は、まさにそういう思考の人物だった様ですよ。
[ 女湯 ]の前で従業員と口論をしたり、揉めている場面を何度も目撃されていた証言が幾つも有ります。
どうやらトラスン女性は初めから[ 混浴風呂 ]には眼中に無く、[ 女湯 ]に入る事に対して、強い執着が有った様ですね。
従業員が[ 混浴風呂 ]の利用を薦めても頑なに[ 女湯 ]に入浴する事に拘っていたそうで──、どうしても[ 女湯 ]を利用されたいなら、女性客に配慮して、女性客が入浴しない時間帯に利用する事を従業員が提案したらしいんだけど……、その提案に対して憤怒したトラスン女性は、『 女将を呼べ! 』と騒ぎ散らしていたんですよ 」
マオ
「 …………とんでもない迷惑行為だな… 」
セロフィート
「 [ 女湯 ]の利用客の中には年端も行かない未成年の幼女,少女も居ます。
男性に対して、苦手意識を持つ女性も中には居るでしょう。
時代の流れに追い付けず、トラスン女性の存在を受け入れられない女性も少なからず居るでしょう。
その様な弱い立場の女性達の思いを尊重もせず、配慮もせず、無視し強引に[ 女湯 ]を利用しようとする行為は “ 犯罪 ” と言えます。
トラスン女性は自ら “ 犯罪者 ” になろとしていた危険人物予備軍だった訳です。
怖いですね、マオ 」
マオ
「 犯罪者……は流石に言い過ぎな気もするけど、トラスン女性のしていた事ってのは、≪ 島国 ≫に攻め込んで侵略しようとしてる敵国兵士って感じかな。
やってる事が完全に敵方のソレじゃんな 」
セロフィート
「 凡人にはトラスン女性が[ 女湯 ]に対して狂気染みた執着と拘りを持つ理由は分かりません。
トラスン女性が[ 女湯 ]を利用していなければ、防ぐ事の出来た事件かも知れませんね 」
マオ
「 無理意地を通して[ 女湯 ]を利用したのが原因で、誰かに殺害されちゃった──って事か?
それだと自業自得の様な気がして来るんだけど…… 」
セロフィート
「 仮にそうだとしても、殺害はやり過ぎです。
人殺しをした以上、罪を償わせなければなりません。
犯人にどの様な事情が有ろうとも、見付けて逮捕する必要が有ります。
犯人が逮捕されなければ、事件は解決しません。
未解決事件のまま放置さ続ける事となります 」
マオ
「 刑事さんには頑張って犯人を探してもらって、逮捕しもらわないとだな!
事件を解決しさせてよね、刑事さん 」
刑事
「 勿論、そのつもりだよ!
必ず、2人を殺害した犯人を探し出して逮捕してみせるよ! 」
セロフィート
「 刑事さんの働きに期待してます 」
刑事
「 それじゃあ、私は他の御客に聞き込みをして来ますね。
御協力、有り難う御座いました!
──あぁ、そうだ!
昨夜、男性を殺害した犯人の捜索も始まっていますよ。
そっちの犯人も探し出して逮捕しますからね!
安心して過ごしてくださいよ 」
マオ
「 有り難う。
じゃあ、第1発見者のオレが疑われる心配は無くなったんだ? 」
刑事
「 勿論だよ!
第1発見者が犯人のケースも実際には有るけど、稀な事だからね。
被害者と顔見知りの人物に絞って捜査しているよ 」
セロフィート
「 良かったですね、マオ。
晴れて無実を勝ち取れましたね 」
マオ
「 オレは初めから無実だったろが!! 」
刑事
「 仲の良い親子ですね 」
マオ
「 親…子ぉ…… 」
セロフィート
「 マオとワタシは異母兄弟ですよ、刑事さん 」
刑事
「 えぇっ?!
兄弟だったんですね。
それは失礼しました! 」
マオ
「 ははは…… 」
刑事さんは店内に入って来た他の御客に聞き込みをしに行った。
マオ
「 セロとオレが参加してるツアー客から被害者が出るなんてな。
今日の観光ツアーは中止になったけどさ、明日からの観光ツアーはどうなるんだろうな?
まさか、明日も中止── 」
セロフィート
「 犯人次第でしょう 」
マオ
「 メインの桃狩りだけは体験したいんだけどぉ!! 」
セロフィート
「 逮捕されると良いですね 」
マオ
「 他人事ぉ~~ 」
セロフィート
「 他人事でしょうに 」
セロはティーカップに口を付け、フルーツティーを飲んでいる。
オレはスペシャルプリンパフェをヤケ食いする事にした。
◎ 訂正しました。
トラスンと言うのは── 」─→ “ トラスンさん ” と言うのは── 」
“ トラスン ” について ─→ “ トラスン ” について