✒ 旅館で❌❌❌ 2
色々と──バスガイドさんとツアー客達の間で一悶着あった訳だけど、セロが間に入って宥めてくれた事で、何とか収拾が付いて落ち着いた。
流石は数千年を生きているセロだ。
無駄に──じゃなくて、伊達に長生きしてる訳じゃなかった。
本日のツアーが中止になった事が原因で、激しい癇癪を起こしたツアー客も居た。
楽しみにしていた今日の観光ツアーが中止になったんだから、そりゃ怒るのは仕方無い事だと思う。
高い金を支払って参加してるんだから当然だ。
ツアー客には怒る権利が有るし、文句を言う権利も有る。
バスガイドさんはツアー客の思いを聞いてあげる義務と責任が有る。
だからと言って、バスガイドさんに対して暴言を吐いて貶すのは間違っていると思う。
バスガイドさんの人格否定をするのは明らかに言い過ぎだ。
キレるのは構わないけど、大人なんだから節度を保って程々にキレないと駄目だと思う。
言葉の暴力も力の暴力も絶対に駄目だ。
[ ロビー ]にお巡りさんを呼ぶ事態にならなくて良かった。
ツアー客達は[ 宿泊室 ]へ戻ったり、[ 売店 ]に入ったり──と《 旅館 》の中で1日を過ごす事になった。
《 旅館 》から出るのは禁止って事だ。
何でツアー客達が、《 旅館 》から出たら駄目になったのかというと────。
バスガイド
「 あの──、先程は皆さんを宥めてくださって有り難う御座いました。
何と御礼を言ったら良いか──。
本当に助かりました 」
セロフィート
「 気になさる事は無いです。
バスガイドさんも被害者です。
加害者の様に非難される筋合いは無いですし。
理解してもらえて良かったです 」
バスガイド
「 御二人の御蔭です(////)
《 旅館 》へ着いた早々に[ 大浴場 ]へ連れて行かれた時は何が起きたのか分かりませんでしたけど──。
こんな事態になるなんて…… 」
セロフィート
「 《 旅行会社 》へ報連相をしなければいけませんから、忙しくなりますね。
運転手さんにも事情を伝えて、相談されると良いですね 」
バスガイド
「 はい……。
でも、今回はベテランの運転手さん達が担当して下さっていますから良かったです。
今後の事を相談してきます 」
バスガイドさんはセロとオレに頭を下げると《 旅館 》から出て、[ 駐車場 ]へ向かって去って行った。
マオ
「 はぁ…………。
まさか、《 旅館 》から出るの禁止なんて──。
そりゃ、癇癪起こしたくもなるよ…… 」
セロフィート
「 癇癪は兎も角、ぶつける相手を間違えてはいけません。
バスガイドさんもツアー客も皆が “ 被害者 ” です。
被害者同士で責め合い、罵り合っても状況は好転しませんし、物事も解決しません。
責めるべき敵──加害者を間違えない事です 」
マオ
「 そだな。
無駄に疑心暗鬼に陥って、ギスギスするばっかりで、悪い方に向いちゃうだろうしな。
だけどさ、そうなると一体誰が犯人なんだ??
この《 旅館 》の中に犯人が紛れ込んでいて、潜んでいるかも知れないって事だよな?
被害者の皮を被ってさ、自分が犯した罪から逃れようとしてる── 」
セロフィート
「 さて、それはどうでしょう?
既に《 旅館 》から出て何処か遠くへ逃げ仰せているかも知れません 」
マオ
「 でもさ、[ 大浴場 ]で死体を発見したのは、従業員さんって話だぞ?
殺害された被害者は23時には未だ “ 生存していた ” って目撃証言だって有るんだろ 」
セロフィート
「 被害者が最後に目撃された正確な時間は、部外者のワタシ達には分かりません。
犯行時刻は目撃されたと証言された23時以降 ~ 発見される迄の時間帯となるでしょう。
湯舟に浮かぶ死体が発見されたのは、掃除をする為に[ 大浴場 ]へ入った従業員さん3名です。
掃除をする時間帯は決められていました。
午前4時頃には既に死体が “ 湯舟に浮かんでいた ” という事になります 」
マオ
「 そうなると──、犯人が犯行に使える時間は約5時間って所か?
5時間で出来るもんなのか?? 」
セロフィート
「 出来る人は出来ます。
抑、御馬鹿さんでなければ、出来ない殺害等しません。
計画性の無い突発的な犯行の可能性も捨てきれませんけど 」
マオ
「 突発的──。
そっか……計画的な犯行の可能性も有れば、不運が重なった不慮の事故って可能性も有るんだな── 」
セロフィート
「 事件の解決は[ 大浴場 ]で現場検証と捜査をしている刑事さんに任せれば良いです。
素人判断で推理をしても捜査を混乱させるだけです。
今回は大人しく高見の見物するとしましょう 」
マオ
「 高見の見物かぁ……。
なぁ、セロ── 」
セロフィート
「 今回の事件にワタシは無関係です。
ワタシを疑わないでください 」
マオ
「 ご…御免……。
オレ……またセロを疑っちゃったな…… 」
セロフィート
「 ふふふ…。
ワタシは前科の塊ですからね♪ 」
マオ
「 うぅ゛…… 」
セロフィート
「 おや、顔色が悪いですよ。
[ 宿泊室 ]に戻ります? 」
マオ
「 [ 喫茶店 ]が在ったよな?
何か食べたい 」
セロフィート
「 はいはい。
ワタシと『 いいこと 』するより[ 喫茶店 ]ですか── 」
マオ
「 えっ?!
セロと『 いいこと 』──したいっ!! 」
セロフィート
「 駄目でぇ~~す。
[ 喫茶店 ]へ行きましょう 」
マオ
「 えぇっ?! 」
セロはオレの右手を掴むと、オレを引っ張って歩き出した。
明らかに目的地は[ 喫茶店 ]を目指している。
「[ 喫茶店 ]に行きたい 」なんて言わなきゃ良かったぁ~~~~。
完全に失敗したぁぁぁぁぁあああああ……。
今夜はセロと『 いいこと 』は出来ないかも知れない。
うぅぅぅ………………セロ、怒ってるのかな??
──*──*──*── 喫茶店
店内は昭和のレトロな雰囲気を感じられる[ 喫茶店 ]た。
昭和の時代を知らないオレだけど、妙に落ち着くのは何でかな??
革製のソファーは艶光しているのか、何とも言えない光沢が有る。
座り心地が良いのか分からないけど、「 座ってみたい 」って思える革製のソファーだ。
セロフィート
「{ マオ、見てください。
刑事さんが来てます。
店内の御客に聞き取りをしているみたいです }」
マオ
「{ 嘘ぉ!?
また刑事ぃ~~。
セロ、どうするんだよ?
また事情聴取を受ける事になるのか? }」
セロフィート
「{ そうですね。
今回の事件に関しては、マオとワタシは完全に無関係です。
聞き取りに協力しても疑われる事は無いです }」
マオ
「 うん……。
今回の犯行の犯人にされないなら──って、前回の犯行の犯人でも無いからな!!
オレ、1000%無関係で無実だからなっ!!
セロだって知ってるだろ 」
セロフィート
「 はいはい、そうですね。
立ち話は止めて席に着きましょう 」
マオ
「 うん… 」
セロに促されて、空いてる席のソファーに腰を下ろして座る。
観光ツアーは諦める事になったけど、喫茶店デートも悪くないかも知れない。
聞き込みをしている刑事が居なければ、もっとデートっぽくなるのにな…………。