⭕ 清めの塩 5
霄囹
「 僕は台本通りに少年探偵を演じるだけさ 」
マオ
「 シュンシュンの場合は “ 演じる ” って言うより、素だろ。
シュンシュンだけはノリノリで楽しめるだろうな~~ 」
霄囹
「 その通りさ!
主人公に口を出す鬱陶しい幼馴染みは、女優を目指してる新人アイドルらしい。
プロデューサーのゴリ押しで決まったらしいんだ。
主人公のする事に一々首を突っ込んで来ては、偉そうに主人公を諌める立場のヒロインなんだが──、全く以て要らないんだよな、そういうキャラは! 」
マオ
「 ははは……。
シュンシュンは売れっ子の陰陽師アイドルだからさ、恩恵に肖らせる為にコンビを組ませていたのか知れないな 」
霄囹
「 上の考える事なんて想像が付くさ。
今回のヒロイン役のアイドルも上層部の偉いさんへ献上された被害者かも知れないな。
中には売れる為に自ら進んで献上され、偉いさんに御奉仕する猛者も居る。
野望を叶える為に自ら喜んで献上された加害者なのに、弱者の振りして同情を誘い、被害者ぶって莫大な慰謝料を請求しやがる女も居るんだ。
ヒロイン役のアイドルが質の悪い女じゃ無ければ良いんだがな 」
マオ
「 最近、お茶の間を賑わせてるアレか?
良くバレずに隠せるもんだよな。
揉み消せるって事は、相当な権力を持ってないと難しいよな 」
霄囹
「 グルってるからだよ。
皆何かしら美味い思いをしてるし、恩恵を受けてるんだ。
“ ガッツリ関与してた ” とか “ どっぷり携わってた ” とか “ 美味しく献上品を頂いてました ” なんて事がバレてみろよ。
社会的に抹消されても文句を言えない事をしてるんだから、輝かしく安定した栄光の未来を守る為に揉み消しに金を注ぎ込むくらいするさ。
まぁ、僕は芸能業界,TV業界の真っ黒黒な犯罪者予備軍達を知ってるからな、弱音を有効利用して確りと揺すらせてもらってるがな! 」
マオ
「 流石のシュンシュンだな。
探偵じゃなくて犯罪者の裏ボス役も余裕で演じられるな★ 」
霄囹
「 売れっ子アイドルは、悪役なんかしないんだよ! 」
マオ
「 でもさ、今度の【 傲慢探偵 】が切っ掛けで悪役のオファーが来るかもじゃんか 」
霄囹
「 断るに決まってるだろ。
今回の新商品を宣伝する為にドラマの共演者,スタッフ達にも “ 瀞の塩 ” を差し入れしようと思ってるんだ。
キノコン印のミニどら焼きセットと一緒にな! 」
マオ
「 ミニどら焼きセット? 」
霄囹
「 あぁ──。
何でも食べ易い一口サイズのミニどら焼きを売り出す予定らしい。
中の餡をカラフルにして5個セットで売り出すんだと。
ミニどら焼きの上の生地には、キノコンの焼き印を付けるらしい 」
マオ
「 へぇ、豪華な差し入れになるな。
準備するのはキノコンだろうけど── 」
霄囹
「 これでまた、僕への評価と好感度が上がるってもんさ! 」
マオ
「 元手は0だから、幾らでも賄賂をバラ撒けるもんな! 」
霄囹
「 『 バラ撒く 』って言うなよ。
賄賂じゃないからな! 」
マオ
「 ( ̄▽ ̄;)ははは……。
そう言う事にしとくよ。
この “ 瀞の塩 ” って売れるかな? 」
霄囹
「 さぁな。
ネット販売だし、セロッタ会員対象にしてるからな──分からん。
御礼も特典で付けるか── 」
マオ
「 シュンシュンの御札は無駄に高いじゃないか。
もっと安く出来ないのか? 」
霄囹
「 馬鹿、言うなよ。
やっすい御礼は紙切れ同然、尻拭く用のチリ紙だ。
僕は詐欺師になるつもりは無いぞ 」
マオ
「 犯罪者らしい事してるのに詐欺師はNGなんだな 」
霄囹
「 当然だろ。
“ 本物 ” を売りにして商売してるんだ。
最低でも10万からだな── 」
マオ
「 3万とか5万じゃ駄目なのか? 」
霄囹
「 さっきも言っただろうが。
そんな安い御礼は便所紙の価値しかない!
ほら──、僕は構想を練るのに忙しいんだ。
《 ランチルーム 》から出てけよ 」
マオ
「 分かったよ。
邪魔して悪かったな 」
シュンシュンは胸の前で腕組みをすると無言になって考え始めた。
オレは《 ランチルーム 》を出る事にして、2階へ向かって歩いた。