⭕ 路地裏
──*──*──*── 裏路地
《 裏路地 》に入ると何処からか荒い息が聞こえて来た。
どうやら先約が居たみたいだ。
こんな場所で何してるんだろう?
マオ
「 大丈夫ですか? 」
暗くて周囲が良く見えない。
取り敢えず声を掛けてみる。
ガサゴソと音がしているから “ 何か ” をしているんだろう。
霄囹
「 おい、声を掛けてやってるんだ。
無視してないで返事しろよ 」
ガサゴソと動いている怪しい人物にシュンシュンが声を掛ける。
怪しい人物は背後に立ったシュンシュンに対して “ 何か ” をした。
“ 何をしたのか ” と言うと──持っていた凶器を使ってシュンシュンを刺したんだ。
凶器は刃物だ。
血が付いているけど、シュンシュンの血じゃないのは確かだ。
という事はだ、この怪しい人物は既に他の誰かを刃物で “ 刺してる ” って事になる。
えと…………これは明らかに事件!?
あっ、別にシュンシュンが刺されたから事件って訳じゃない。
シュンシュンは刃物で刺されたぐらいじゃ死なないからだ。
マオ
「 シュンシュン、大丈夫だろうけど──、一応 “ 大丈夫 ” か? 」
霄囹
「 “ 一応 ” は余計だろ。
心の底から心配しろよ!
僕はお前の真友じゃないか! 」
マオ
「 それはシュンシュンの自称だろ。
それより…………、やっぱり血は出てないよな 」
霄囹
「 当然だろ。
マオ、見ろよ!
僕を刺したコイツ、ピンピンしてる僕を見て腰を抜かしてるぞ! 」
マオ
「 ………………漏らしちゃってるな……。
驚き過ぎて声も出せないんじゃないか? 」
霄囹
「 人を刺しといて腰を抜かすなんて、とんだチキン野郎だな。
こんな間抜けが刃物を使うなんて、世も末じゃないか。
犯罪者失格だぞ! 」
マオ
「 でもさ、此方の被害者は死んで…………息が有る!?
シュンシュン、そいつを逃がさないでくれよ! 」
霄囹
「 何だよ、助けるのか?
そのまま逝かせてやれば、コイツを殺人犯として警察に突き出せるってのに、絶好の機会を奪うつもりかよ 」
マオ
「 何が絶好の機会だよ。
1人くらい殺害したって大した罪にはならないだろ。
大勢殺さないと重い罰は受けないよ。
死刑制度廃止運動をしてる過激派の活動もお盛んだしな 」
霄囹
「 だったらそいつ等の身内等をコイツに殺らせれば良いだけの事だろ。
自分の命の次に大事な子供達を快楽主義の愉快犯に殺害された被害者になれば──、考えて改めて死刑制度廃止運動から手を引くかも知れないぞ。
コイツを使って、目覚めさせてやれば良いじゃないか 」
霄囹
「 シュンシュンは闇呪術を使って呪い殺すのが本業だもんな。
だからって実行したら駄目だからな 」
霄囹
「 副業って言えよ。
何で止めるんだ?
別に構わないだろ。
何なら、現役で死刑制度廃止運動をしてる過激派達自身の身体を再起不能にしてやっても良いんだぞ。
元気な身体と明るい未来を奪われても、加害者に対して死刑制度廃止運動を続けるなら、そいつ等は似非じゃなくて本物って事になる。
一体何れだけの偽善者ぶった似非活動家達を吊し上げれると思うよ?
考えただけでも愉快だよなぁ★ 」
マオ
「 兎に角っ!
オレは刺された被害者を助けるから、加害者を捕まえててくれよな! 」
霄囹
「 分かった分かった。
今回は寿司に免じて、マオの思いを汲んでやるよ。
有り難く思えよな 」
マオ
「 全くシュンシュンは~~。
オレへの上から目線発言は、セロの前では絶対にするなよ 」
腰を抜かして漏らしている男に刺されたらしい被害者に近付いたオレは、セロから貰ったアミュレットの力を借りて、回復魔法を使う事にした。
刺された箇所に両手を翳して「 ヒール 」と呟くと、両手から暖かい黄色い光が出る。
頑張って回復魔法の熟練度を上げた成果だ。
ヒールには幾つか種類が有る。
通常のヒール,メガヒール,オメガヒール,テラヒール,ハイヒール,エナヒール,エーテルヒール,ピュアヒール,ピュアラヒール,ピュアルヒール,キュアヒール,キュアラヒール,キュアルヒール,セラピヒール,セラピスヒール,ライトヒール,ホーリーヒール,ヒールレイン,ヒールシャワー,エナジーヒール,フェアリーヒール,エリアヒール,リフレッシュヒール,エクストラヒール,プリズムヒール,クリーンヒール…とまぁ、何でか良く分からないけど沢山だ。
オレは通常のヒールしか使ってないけど、効果は絶大だ。
とは言え、オレの回復魔法は単体にしか使えないし、回復魔法を使ったからといって、全ての怪我人の傷口が塞がって完治する訳じゃない。
怪我人の細胞の動きを活性化させて、傷口を塞ぐ為に必要な治癒力を高める手伝いをするだけだ。
異世界ゲームみたいに非化学的で非現実的な回復魔法なんて存在しないんだ。
回復魔法を使った事で、被害者の傷口は塞がったみたいだ。
意識は朦朧としているみたいだけど、命に別状は無さそうかな?
マオ
「 これで良し──。
後は人目の付く場所に運んでやろう 」
霄囹
「 はぁ?
放置で良いだろ、放置で!
其処迄する必要、僕等には無いだろ 」
マオ
「 こんな人気の無い場所に寝かせとけないだろ。
出来れば《 交番 》が良いんだけどな…… 」
霄囹
「 《 交番 》だって?!
馬鹿を言うなよ!
職質や事情聴取を受ける事になったら、帰りが遅くなるだろが!
交番に運ぶなんて、僕は断固反対だからな!
公園のベンチの上にポイで十分だ! 」
シュンシュンは頑として譲らない。
しょうがないから、被害者は近くの公園に設置されているベンチの上に捨て──置いて行く事になった。
因みにシュンシュンを刺した加害者は、シュンシュンの命令を受けた式隷達に依って、顔から下の生皮を丁寧に剥ぎ取られた。
皮膚を剥ぎ取られた無惨な姿のまま、豪勢で豪華な教会の屋根に付いている大きく立派な十字架に磔られる事になった。
平和ボケしている最近の世間に対して、旬な怪奇事件を提供する事にしたんだとか。
こういう事を思い付きで式隷にさせちゃう所が実にシュンシュンらしい。
顔の皮膚だけを残したのは、世間に顔を晒して社会的に抹殺する為らしい。
丁寧に「 わたしハひとヲさしころしマシタ 」なんて書いたエプロンを着けるみたいだ。
マオ
「 旬な怪奇事件か──。
何で、教会の屋根に付いてる十字架に磔る必要が有るんだ?
十字架に磔るなんて、罰当たりにならないか? 」
霄囹
「 マオ、教会に “ 罰当たり ” なんて概念は無いのさ。
十字架に磔なんて、中々奇抜でナウい発想だろ。
これは世間にウケる事件になるぞ! 」
マオ
「 嬉しそうだな~~。
またオカルト番組から御呼びが掛かるかもだな。
【 十字架に磔事件 】の真犯人はシュンシュンなのにさ 」
霄囹
「 フフン!
事件を提供した真犯人が、オカルト番組で活躍する社会ってのは素晴らしいよなぁ!
人間は誰も真犯人が僕だって事を知らないんだ。
笑いを堪えきれるか不安だな! 」
マオ
「 ははは…………。
まぁ、シュンシュンを刃物で刺した最初の人間だろうし、シュンシュンもテンションが上がっちゃったんだよな? 」
霄囹
「 テンションねぇ?
まぁ、そういう事にしといてやるよ。
それより、早く帰るぞ!
高級寿司を摘まみながら、エロゲーの素晴らしさをマオに教えてやりたいからな! 」
マオ
「 やらないと駄目なのか?
気が進まないな~~ 」
霄囹
「 フフン!
僕が新しい世界の扉を開いてやるよ★ 」
シュンシュンは簡単に転移陣を出す。
足下に出現した転移陣が光って、目の前の景色が消えた。
◎ 訂正しました。
お盛ん|だしな 」─→ お盛んだしな 」
|そいつ等《死刑制度廃止運動をしている過激派》 ─→ そいつ等
書類が有る。─→ 種類が有る。
こんな人気の無い場所 ─→ こんな人気の無い場所