⭕ 夏祭りと花火大会 8
寺尾刑事は持参していたタブレットで事件現場の動画を見せてくれる。
最近の現場検証では写真を撮るだけじゃなくて、動画も撮って記録を残すらしい。
マオ
「 ………………エグい……。
此を人間がしたってのか??
一体何人で木に吊るしたんだろうな? 」
セロフィート
「 先ず、衣類を脱がし、木に吊るしたのでしょうね。
脱がした衣類だけでなく、所持品も見当たらない──と。
にも拘わらず、地面には財布が落ちていた。
財布の中身は抜かれており、空っぽの状態で放置されていた。
財布からは持ち主以外の指紋は検出されていない── 」
マオ
「 衣類と所持品を持ち去ってるのに、中身を抜いた財布は持ち去ってないのは何でだ?? 」
セロフィート
「 犯人達しか分かりません 」
マオ
「 そだな……。
でもさ、何で衣類を脱がして、所持品も外してから木に吊るした──って分かるんだ?
犯行中の様子を見てないのにさ 」
セロフィート
「 マオ──。
良く見てください。
縄は肌に直接巻かれて縛られてます。
木に吊るした後、衣類を脱がせると綺麗に脱がせませんし、時間が掛かります。
複数犯の犯行なら衣類を着用した状態で木に吊るす御粗末な指示は出さない筈です。
40人も居るのです。
時間を掛けず手際良く作業を行うには先ず、邪魔な衣類を脱がし、所持品を外させるでしょう。
全裸にしてしまえば、木に吊るす作業も楽ですし 」
マオ
「 まるで指示を出す黒幕みたいにスラスラ出るよなぁ~~。
実は現場に居た? 」
セロフィート
「 マオ、ワタシは見た限りの情報を基に推理しただけです。
第一、ワタシはマオと一緒に夏祭りデートしてました。
ワタシが加担している犯人と言うなら、マオも共犯者になりますけど? 」
マオ
「 だよな……。
セロとオレは無関係だよな! 」
セロフィート
「 初めからそう言ってますし 」
マオ
「 御免……。
下着を脱がせたのは、尻穴に花火を差し込む為だよな?
被害者達の共通点って有るの?
仕返しでもされたかの様な相当な状態だよな?
深い恨みでも買う様な事をしてた──って事かな? 」
寺尾刑事
「 被害者達の関連性は追々判明するかと──。
確かに何かしらの恨みでも買ってないと、こんな酷い状態で殺されたりはしないと思われますね 」
マオ
「 被害者は全員、同じ酷い状態で死んでいた。
全裸で木に吊るされた状態で、口と尻穴には花火が差し込まれていた。
酷い火傷をしてるのは使用済みの花火が原因──。
中身の抜かれた空っぽの財布と残された黒い羽根…………。
犯行を行った犯人は、被害者数からして複数犯の可能性大──。
空の財布だって売れそうだけどな……。
捜査を混乱させる為に態と回収しないで放置した──とか?
……………………天狗の仕業って事にして片付けたくなる気持ちも分かるかも……。
天狗じゃなくても、怪異や異形の仕業って線も捨てきれないんじゃないか? 」
セロフィート
「 手っ取り早く怪異,異形の仕業にして済ませたい気持ちは分かりますけど──、知能の低い怪異や異形が此処まで手の込んだ殺し方は出来ません。
縄の縛り方を見れば一目瞭然です 」
マオ
「 縄の縛り方?
何でそんな事で分かるんだよ? 」
セロフィート
「 良く見てください、マオ。
この複雑な縛り方は特殊な性的趣向の方達が好んで使う縛り方です。
怪異,異形には、この様な複雑で特殊過ぎる縛り方は出来ません 」
マオ
「 ………………特殊な性的趣向の人達って?? 」
寺尾刑事
「 ──縛りプレイが大好物なマゾフィスト達の事ですかね?
…………犯人の中に特殊な縛り方に詳しい輩でも居るって事かな── 」
セロフィート
「 捜査を混乱させる為に敢えてこの様な縛り方を選んだ可能性も有ります。
現場に空の財布を残したのも地面に残した “ 黒い羽根 ” に気付かせる為に態と──という見方も出来ます。
“ 黒い羽根 ” も他県にて入手した鳥の羽根かも知れません 」
寺尾刑事
「 な…成る程ぉ~~!!
凄いです、セロフィートさん!!
参考になります!! 」
寺尾刑事は嬉しそうにセロが言った事を手帳に書いている。
刑事なんだから自分で考察だの推理だのすれば良いのに……。
探偵じゃないから推測かな??
セロフィート
「 選択肢は多い方が良いです。
色んな角度から見つつ考えを巡らせるのも良いでしょう 」
マオ
「 でもさ、まるで犯行現場に居たかの様にスラスラと出て来るじゃないか。
他の刑事さんから怪しまれたりしないかな? 」
セロフィート
「 推理小説も読みますし、推理系のドラマも見ます。
余程の推理好きなら思い浮かぶ事柄です。
無関係なのに怪しまれる筋合いは微塵も無いです 」
寺尾刑事
「 そうですよ!
セロフィートさんは犯罪に加担する様な反社会人じゃ無いです!
それは先輩達も認めています!!
上司に内緒で雇いたいくらい優秀な探偵です!! 」
セロフィート
「 ふふふ…。
持ち上げ過ぎです、寺尾刑事。
今回の事件は十中八九、知能の高い人間の仕業です 」
マオ
「 人間か……。
おっかない人間も居るんだもんな。
何も夏祭りと花火大会の有る日にしなくても良かったじゃないか。
台無しじゃないかよ 」
セロフィート
「 犯人達はそれを狙っていた可能性も否定は出来ません。
敢えて混雑する今日を選んだ可能性も有ります 」
マオ
「 現場を直に見れないのは歯痒いよな…… 」
セロフィート
「 此も時代の流れです。
マオとワタシは完全に部外者です。
犯行現場へ入る資格は無いですし、本来は犯行現場の動画さえも見せてもらえない立場です。
贅沢を言って寺尾刑事を困らせてはいけません 」
マオ
「 そだな……。
事件と無関係だもんな!
贅沢は言わないよ。
動画の中に犯人達の手掛かりになる物でも写ってると良いんだけど…… 」
セロフィート
「 上手く痕跡を消している様ですし、素人の犯行では無さそうです。
用意周到──、手慣れている者の犯行でしょう 」
マオ
「 犯人は現場に戻って来る──ってドラマで見るけどさ、実際に戻って来る馬鹿ってマジで居るのかな? 」
セロフィート
「 さて、どうでしょう?
案外に被害者達の身元と関係性が判明すれば、自ずと犯人像も見えて来るかも知れませんね。
この事件、犯人達の逮捕は出来ます。
人間には完全犯罪等出来ませんし 」
マオ
「 今月中に逮捕が出来ると良いよな 」
セロフィート
「 寺尾刑事、自信を持って捜査をしてください。
応援してます 」
寺尾刑事
「 セロフィートさん……(////)
色々と有り難う御座います!! 」
セロフィート
「 今日は連れも居ますし、友人達とも待ち合わせしてます。
捜査の協力は出来ませんけど── 」
セロは袖の中からペンとメモ用紙を取り出す。
真っ白なメモ用紙に何かをスラスラと書き始めた。
セロフィート
「 寺尾刑事、此を捜査に役立ててください 」
セロは書き終えたメモ用紙を破ると、寺尾刑事に手渡した。
寺尾刑事は両目を輝かせて嬉しそうだ。
背の低いオレにはセロがメモ用紙に何を書いていたのか分からない。
「 捜査に役立てて── 」って事は、寺尾刑事の役に立つ様な事を書いたのかも知れないな。
セロフィート
「 マオ──、幻夢さん,玄武さん,弓弦さんが来ました。
時間にピッタリです 」
マオ
「 本当だ! 」
◎ 訂正しました。
現場を直に見れないのは ─→ 現場を直に見れないのは