⭕ 饅頭こわい 2
マオキノとセノコンが期待する視線を受けながら殺人蜂饅頭を懸命に食べていると、ドアが開いて誰かが入って来た。
セロが帰って来たのかな?
セノコン
「 幻夢さま,玄武様,弓弦様──、御揃いでどうされましたエリ? 」
獅聖幻夢
「 マオ殿を誘いに来たのですが──、何やら取り込み中の様ですね 」
玄武
「 饅頭を食べていたのか。
邪魔をしてしまった様だな 」
弓弦
「 セノコンとマオキノが作ったのか?
さぞかし美味い饅頭なのだろうな?
私達は出直すとしよう 」
幻夢さん,玄武さん,弓弦さん──、助け船だぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
天の助け船、来たぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
此処で見す見す帰して堪るかよ!!
マオ
「 待ってよ!
折角来てくれたんだし、饅頭を食べながら待っててほしいな!
マオキノとセノコンも良いよな? 」
マオキノ
「 勿論ですエリ♥ 」
セノコン
「 遠慮せずに食べてほしいですエリ♥ 」
マオ
「 ほら!
マオキノもセノコンも『 どうぞ! 』って言ってくれてるし、食べてほしそうだよ! 」
獅聖幻夢
「 そうですか?
それでは御言葉に甘えて御馳走になります♪ 」
玄武
「 うむ。
どの様な味がする饅頭なのか楽しみだ 」
弓弦
「 仄かに甘い香りがするな 」
幻夢さん,玄武さん,弓弦さんは帰るのを止めてリビングに上がってくれた。
よしっ、上手く引き止めれたぞ!!
此で、オレ1人で殺人饅頭を食べきらなくて良くなった……ホッ♥
今日も着物で来てくれたんだ……。
《 裏野ハイツ 》に着く迄に一体何人の女性達が道の上に倒れているんだか。
警察沙汰にならなきゃ良いけど──。
幻夢さん,玄武さん,弓弦さんは椅子を後ろに引くと腰を下ろして座る。
食卓テーブルの上に並んでいる大皿に手を伸ばして、大皿の上に乗っている饅頭を手に取った。
よしっ、確実に殺人饅頭の数を減らせるぅ!!
殺人蜂で作られた饅頭だって事を口に入れる前に言った方が良いかな??
でもでもでもでも──、「 10種類のスズメバチを使って作られた饅頭なんだよ、凄いよね★ 」なんて言ったら、食べるのを止めて帰っちゃうかも知れない。
それだけは困るぅ~~~~!!
くぅぅ──、どうすりゃ良いんだよぉ~~!!
言わなきゃ駄目かな??
オレ………………今、凄く最低な事を考えてるし、最低な事をしようとしてる……。
オレを慕ってくれてる眷属に対して──、今のオレは主人としてどうなんだ…………。
マオ
「 あっあの──、その饅頭なんだけどっ!!
本当は── 」
葛藤しながら迷いに迷った挙げ句の果てに、真実を打ち明けようと思って声を上げたものの、時既に遅しの手遅れだった。
幻夢さん,玄武さん,弓弦さんは既に饅頭を口に入れて咀嚼──食べていたからだ。
オレは保身を優先して悩んでいた所為だ…………。
マオ
「 いやぁぁぁぁぁぁ!!
3人が殺人饅頭、食べちゃったぁぁぁぁぁぁぁぁ!! 」
弓弦
「 急に大声を出して、どうした?
マオ、大丈夫か?? 」
玄武
「 殺人饅頭とはこの饅頭の事か? 」
獅聖幻夢
「 美味な饅頭ですね。
──此は大人の蜂が使われていますね 」
玄武
「 ──大人の蜂だと!
通りでな……。
懐かしい味だと思ったのだ。
≪ 日本国 ≫では大人の蜂を食べる習慣は無い様だからな…… 」
弓弦
「 そうなると──使っている蜂はクマンラスズメバチの類いか? 」
セノコン
「 クマンラスズメバチは≪ 日本国 ≫には生息していませんエリ。
中身は10種類のスズメバチをブレンドして作りましたエリ 」
獅聖幻夢
「 10種類も入っているのですか?
それは贅沢な饅頭ですね 」
玄武
「 通りで美味い筈だな 」
弓弦
「 そうか……生息していないのか……。
然し、此は此で絶妙な風味がクセになるな 」
マオ
「 ………………何……何で…………幻夢さんも玄武さんも弓弦さんも──平気な顔して食べてるの?!
スズメバチを使ってる饅頭なんだよ!!
刺されたら死んじゃう毒を持ってるスズメバチを使ってるんだよ!! 」
オレの発する言葉に対して、幻夢さん,玄武さん,弓弦さんは揃って “ キョトン ” とした顔で御互いの顔を見合わせている。
3人共困った様な顔をして笑い合っている。
ねぇ、それって、どういう反応なの!?
弓弦
「 …………何と言えば良いのか……。
故郷の≪ 島国 ≫ではだな…………、大人の蜂を食べる事は割りと普通の事だったんだ 」
マオ
「 へ?? 」
玄武
「 うむ……我も人間だった頃は菓子として食べていたぐらい当たり前だったな。
皇族,貴族にとって大人の蜂は食べ慣れた食材だった。
勿論、蜂の子も食べてはいたぞ 」
獅聖幻夢
「 私が人間だった頃も良く食べられていましたね。
大人の蜂は歯応えが良く、噛む力を鍛える事も出来たのです。
小さいのに栄養が有るので、子供の頃から良く食べていました。
毒に対する耐性も付くと人気でしたよ 」
玄武
「 うむ、毒蜂の毒は強いからな。
子供の内に毒の耐性を付かせるには持って来いの食材だったと我も教わったな 」
弓弦
「 私の故郷でも毒を抜いてはいたが、完全に抜く事は出来なかったからな──。
慣れる迄は身体から発疹が出たり、寝込んだりしたものだ。
懐かしい思い出だな…… 」
マオ
「 発疹??
寝込む??
何それ、恐いんですけどぉ!? 」
弓弦
「 死にはしないから大丈夫だ。
熱も出ないしな。
食べ続ければ身体の方が慣れてくれる様になる 」
マオ
「 えぇ~~。
…………寝込みはしても熱は出ないんだ…… 」
玄武
「 毒を抜くのは簡単な事ではないからな。
蜂から針を抜いて終わりではないのだ 」
獅聖幻夢
「 私の時代では、酒に一晩漬け込んで毒を抜いていましたね 」
弓弦
「 私の故郷では塩水を作り、一晩漬け込んでいたな 」
玄武
「 我の時代では、酒に一晩漬け込んだ後、塩水にも一晩漬け込み、真水で濯いでから天日干ししていた 」
弓弦
「 時代に依って毒の抜き方が違うのだな 」
獅聖幻夢
「 私の時代でも真水で洗い流した後、天日干ししていましたね 」
弓弦
「 私の故郷では日影干しをしていたな。
昔は天日干しもしていた様だが、季節に合わせて干し方を変える事にしたらしい 」
マオ
「 あっちの平安人って、逞しくて凄かったんだね…… 」
マオキノ
「 ≪ 日本国 ≫でも蜂を調理して食べる習慣は有りますエリ。
栄養満点ですエリ★ 」
マオ
「 ははは………… 」
幻夢さん,玄武さん,弓弦さんが大人の蜂を食べ慣れていたなんて初耳だぁ!!
未々知らない事が多過ぎるぅ~~!!
◎ 訂正しました。
此処で見す見す帰して ─→ 此処で見す見す帰して