⭕ 顔の変わる人形 4
キノコン
「 霄囹ちゃま──、霊能力者の菠蓙茗が来たエリ 」
霄囹
「 アポ無し訪問かよ、全く──。
会ってやるから通してやれ 」
キノコン
「 了エリ 」
マオ
「 シュンシュン、菠蓙茗って──、シュンシュンに依頼した霊能力者だよな?
オレ、“ 初めまして ” だな。
このまま居ても良いのか? 」
霄囹
「 座ってろ 」
キノコン
「 お連れしたエリ 」
キノコンが連れて来た男は意外にも整った顔をしている。
男のオレから見ても女受けするイケメンだと思う。
髪は爽やかさを感じられる金髪で、赤メッシュと紫メッシュが入っていて派手だ。
菠蓙茗は寺の住職みたいな格好をしていて、派手な袈裟を身に付けている。
首には大きな数珠をネックレスみたいに掛けている。
数珠には文字が一文字ずつ彫られていて白色に塗られている。
菠蓙茗
「 チョリぃ~~、シュン!
この前はサンキューだったな!
助かったぜ★ 」
第一声が3枚目の声だ。
中身が如何にも “ 軽い男 ” って感じぃ~~。
霄囹
「 今日は何の用だ?
金の用意でも出来たのか? 」
菠蓙茗
「 そんな直ぐに2.200万も用意が出来るかってんだぜ。
催促すんなよ 」
霄囹
「 僕は大赤字を出したんだぞ!
依頼人はお前なんだから、お前が支払うのが筋だろが!
踏み倒す気で居るなら、容赦無く破滅させて潰すぞ。
それが嫌なら、とっとと支払え! 」
菠蓙茗
「 そう脅すなよ、シュン。
オレ達の仲だろぉ~~。
スマイリぃだぜ★ 」
菠蓙茗は意外とチャラい男みたいだ。
シュンシュンにこんなに馴れ馴れしい話し方をするなんて、意外と大した男なのかも知れない。
シュンシュンは菠蓙茗の実力を認めてる──って事なのかな?
いや、貢いでもらってるからか??
霄囹
「 フン──、馬鹿な女共に貢がせれば良いだろが。
お前がウインクして押し倒せば、500万は出してくれるだろ。
さっさと5人と寝て、用意して来い。
男は女を夢中にさせて貢がせてナンボだからな! 」
マオ
「 ちょ、シュンシュン!? 」
菠蓙茗
「 無茶を言ってくれるよなぁ~~。
それより、隣の子は誰子ちゃんだい?
君ぃ、かわうぃ~~~~ネェ★
俺とアバンチュールしないかい? 」
霄囹
「 マオは僕の助手だぞ。
男だから手を出すなよ 」
菠蓙茗
「 あ、そ──。
男かよ、へいへい── 」
急に何だよ、コイツ?
笑顔でナンパして来たと思えば、まるで掌を返したみたいにガラッと口調と態度が変わったぞ!
菠蓙茗
「 可愛い子が居るから、フレンドリー感を出してたのに男かよ。
チッ── 」
舌打ち迄されたぁ!!
何だよ、コイツぅ!
嫌な奴だ──。
霄囹
「 ──で、今日は何だよ?
また僕に依頼か?
借金が増えるぞ 」
菠蓙茗
「 今日は “ かなりヤバい ” って言われてる人形を持って来てやったのさ★
曰く憑きの人形を集めてるんだろ? 」
霄囹
「 フン、中々気が利くじゃないか。
どんな人形か見せてみろ 」
菠蓙茗
「 見て驚くなよ★
此だ──!!
俺に預けた奴が言うには “ 顔が変わる人形 ” らしいぜ 」
マオ
「 顔が変わる??
その人形の??
本当かな? 」
霄囹
「 ふぅん?
大量生産された人形では無いねぇ 」
菠蓙茗
「 大量生産前の時代に作られた貴重な人形らしいぜ。
──どうだよ、何かしら良からぬ邪気とか感じないか? 」
霄囹
「 邪気ねぇ………… 」
マオ
「 オレは何も感じないけどな……。
見た限り随分と古臭い人形だし? 」
霄囹
「 確かに古臭いな!
時代遅れ感が半端無い人形だ。
持ち主から気味悪がられて捨てられるのも頷けるぞ。
手入れなんてされてないもんなぁ!
ゴミ捨て場に捨てられたり、燃やされなかったのは幸運だったな! 」
マオ
「 …………………………うん?
シュンシュン、今── 」
霄囹
「 まぁ聞けよ、菠蓙茗──。
大量生産される今日日の人形とは違うんだ。
職人が1体1体に魂と真心と丹精を込めて手間暇を掛けて作り上げられた人形だ。
髪も伸びれば、瞬きもする。
人形の形相が変わったって何等不思議な事じゃない。
それだけ作り手の想いと熱意が込められた至高の技術作品って事だ。
最高傑作──国宝扱いされてもおかしくない人形だぞ。
お祓いだの御焚き上げ供養だの、作り手への冒涜だ!!
全国の人形職人の前で土下座して謝れぇ!! 」
マオ
「 シュンシュン、急にどうしたんだよ?!
もっと他の言い方が有るんじゃないのか? 」
霄囹
「 無い! 」
マオ
「 ………………でもさ、事情を知らない人から見たら “ 不気味 ” の一言じゃないか?
至高の芸術作品──とか言われてもさ、こんなに汚れてボロボロじゃあ…………仕方無いと思うけど? 」
霄囹
「 この人形は僕が引き取ってやるから安心しろ。
また曰く憑きの人形を見付けたら、僕に連絡しろよ。
似た様な悩みを抱えてる奴が居たら僕の名刺を渡してやれ 」
菠蓙茗
「 それは良いけどな──、結局の処その人形は危険なのか?
顔は変わるのか? 」
霄囹
「 ジロジロ見られて顔を代えれる程の器用さなんて持ってないさ。
大抵の人形は恥ずかしがり屋でシャイなんだ 」
マオ
「 シュンシュン、妙に人形の肩を持つよな?
どうしたんだよ? 」
霄囹
「 どうもしないさ。
新しい玩具が手に入るんだから、テンションだって上がるだろ? 」
マオ
「 玩具って──。
まぁ確かに人形って子供の玩具だけど──、この人形は玩具って感じはしないけどな? 」
霄囹
「 抑子供の玩具として作られてないからな。
部屋に飾って見て楽しむ人形だな。
長年、1ヵ所に置きっぱなしにされてたんだろ。
持ち主なら、きちんと手入れをするべだ。
偶には天日干しもしてやらないと──。
手入れを怠る馬鹿は人形を持つべきじゃないな 」
マオ
「 ははは………… 」
シュンシュンだって人形の手入れなんてしなさそうだけどな!
霄囹
「 菠蓙茗、お前は幾ら包んで来たんだ?
まさか、手ぶらで来てないよなぁ?
引き取り料と供養料を踏み倒す気なら容赦しないぞ! 」
マオ
「 シュンシュン…… 」
菠蓙茗
「 相変わらずがめつい守銭奴だな。
280万するロレックルの限定腕時計で良いだろ 」
霄囹
「 フン、ブランド品なんて却下だ。
売っても二束三文だからな。
現金にしろ!
僕は現金しか受け取らない主義だ。
さっさと出せ 」
菠蓙茗
「 ……………………少しまけてくれると助かるんだがな? 」
霄囹
「 依頼料2.200万を未払いしてる分際で “ まけろ ” だと?
寝言は2.200万を一括払いしてから言え!
お前の身体で払っても良いんだぞ 」
菠蓙茗
「 …………………………幾らだ?
幾ら用意すれば良いんだ? 」
霄囹
「 ──引き取ってやるから、3.000万持って来い。
僕とお前の仲だから特別に良心的なサービス価格にしてやる。
とことん慈悲深い僕に感謝しろ 」
マオ
「 さ…3.000万……?!
じゃあ、未払い分と合わせて5.200万──?!
シュンシュン、幾ら何でも高過ぎるんじゃ── 」
霄囹
「 この人形にはそれだけの利用価値が有るって事だ。
本物が分かる奴はもっと取るぞ 」
マオ
「 マジかよ…… 」
霄囹
「 また僕に借金が増えたな。
まぁ、お前にしたら5.200万なんて、はした金だろ。
愛しいママン達に泣き付いて出してもらうんだな!
嫌なら、自分の精子を売ってでも用意しろ! 」
マオ
「 シュンシュン── 」
霄囹
「 お前の子供を産みたがってる御執心な馬鹿女共なら、お前の精子に大金を出してくれるだろ?
減るもんじゃないし、売ってやれよ 」
菠蓙茗
「 …………………………相変わらずだな。
分かった──、5.200万は用意する 」
霄囹
「 当然だ。
キノコン、新しい誓約書を用意しろ 」
キノコン
「 了エリ 」
霄囹
「 踏み倒したら分かってるよな?
呪殺の呪詛が発動するからな。
期限は1ヵ月だ。
十分過ぎる猶予だろ 」
キノコン
「 此方が新しい誓約書エリ。
とっととサインするエリ 」
菠蓙茗
「 …………………………はぁ……。
シュンさぁ、マジで評判悪いぞ 」
霄囹
「 評判の悪さを気にして陰陽師が出来るか。
本来の陰陽師ってもんは評判が悪くてナンボの職業なんだよ。
褒め言葉だぞ 」
菠蓙茗
「 ──ほら、サインしたぞ。
じゃあ、その人形の処分は頼んだからな! 」
霊能力者の菠蓙茗は、誓約書の控えをキノコンから受け取ると応接室から退室した。
◎ 訂正しました。
一言じゃないか? ─→ 一言じゃないか?