⭕ 顔の変わる人形 3
キノコン
「 霄囹ちゃま、今回の人形の “ お祓い ” は何時するエリ? 」
ついさっき札束の枚数を高速で数えていたキノコンが聞いて来る。
今、気になる事を言わなかったか??
霄囹
「 今日中にする。
準備しといてくれ 」
キノコン
「 了エリ 」
マオ
「 ん?
お祓い??
回収した人形をそのまま使うんじゃないのか? 」
霄囹
「 おぃおぃ、正気かよ、マオ。
金を落として潤してくれる御客が怪我でもしたらどうするんだよ。
折角の金蔓達が来ないだろうが。
お祓いして、安全な人形に戻すのは当然だろ 」
マオ
「 さっきと言ってる事が違わないか?? 」
霄囹
「 良いか、マオ。
娯楽ってのは、御客に提供するもんだ。
提供ってのは、提供者側が御客に楽しんでもらう為、気持ち良く沢山の金を惜しみ無く落としてもらう為に作るんだよ。
要は生産者側の腕の見せ所だ 」
マオ
「 変な使命感を持つなよ? 」
霄囹
「 使命感だって?
僕の使命感は、僕の主人──マオに危害を加える不届きな輩を排除して玩具にする事だ。
金を稼ぐ事業展開は遊びに決まってるだろ 」
マオ
「 遊びで事業を始める奴が有るか!
ド真剣に事業を始め様と努力して奮起してる人達に対する暴言だぞ? 」
霄囹
「 僕は人間である事を止めて、人間である事を捨てた異形なんだが?
僕が人間みたいにド真剣に事業なんか始める訳ないだろが。
僕は億万長者──謂わば、勝ち組なんだぞ! 」
マオ
「 ……………………億万長者ならMBKは要らないし、オレを財布にする必要も無いよなぁ~~ 」
霄囹
「 マオ、早まるなよ。
言葉の綾じゃないか──。
億万長者は事実だが、僕が自由に使える金じゃないんだ!
さっきも言ったろ?
建設途中で中断された放置状態の土地を買い取った──ってな! 」
マオ
「 タダで貰えたんだろ?
タダで!
無料でぇ~~ 」
霄囹
「 マオ──、僕は唯一無二の心友だろ!
突き放すなよ 」
マオ
「 ──調子が良いなぁ~~。
オレの心友1番はセロだからな! 」
霄囹
「 なら──2番は当然、僕だろ?
僕だよな?
そうだろ?? 」
マオ
「 ……………………此からのシュンシュン次第な 」
霄囹
「 ──チッ。
其処は僕の流れに乗っかる処だろ! 」
マオ
「 シュンシュン~~ 」
全く、シュンシュンには困ったもんだ。
それにしてもシュンシュンが隠し持ってる財産って、何れくらいなんだろうな?
気になるっ!!
霄囹
「 商売人は良く “ 御客様は神様 ” って言うが──、あんなのは世間を騙す為の建前で嘘っぱちだ 」
マオ
「 急に何を言い出すんだよ? 」
霄囹
「 僕はだな、“ 御客様はカモ様 ” ってのが商売人達が隠してる真意だと思ってるんだ 」
マオ
「 日本全国の商売人達を敵に回す言葉だな。
でも、それはセロも言ってた 」
霄囹
「 抑セロフィートも僕も商売人じゃないからな。
“ 御客様は神様 ” なんて時代遅れで古臭い事は言わない。
マナーの悪い御客やモラルを知らない御客も増えた。
御客には御客なりに守るべきルールが有る。
現代では歪んだ考えを振り翳すキチガイな御客が当たり前になって来た。
ルールもマナーも守れずモラルの低い迷惑なイカれた御客に対して迄、“ 御客様は神様 ” に入れる必要は無いだろう。
“ 御客様は神様 ” を撤廃し、今後は “ 御客様はカモ様 ” を掲げて商売するんだ!
不逞なカモ様は出禁にして、従業員と善良なカモ様を守って良いんだ。
そういう時代になって来てるんだ 」
マオ
「 シュンシュンは──、そういう体で事業をしてるんだな…… 」
霄囹
「 フフン、まぁな。
“ 御客は金蔓 ” ってのは、昔からの信条だからな! 」
マオ
「 商売人らしかぬ信条だな…… 」
霄囹
「 信条なんかは、どうでも良いのさ。
要は御客が満足して金を落とし、売り上げのノルマを達成すれば良いんだ。
来年の夏に公開する前に【 呪人形の館 】を使って、ホラーが苦手な御客に “ 思っていたより怖くない ” とか、“ 意外と楽しい ” って、ホラーに接して笑顔になれる様な “ 掴み企画 ” も練ってるんだ。
ホラーに対する苦手意識を徐々に減らして、好意へ近付けて行くんだ。
遠回りかも知れないが、ホラーに慣れて来れば自然と本来の怖いホラーに興味が湧いて来るものだ。
本格的なホラーに目覚めてハマる奴も出て来る。
そうなったら、此方のもんさ★
幾らでも毟り取れる様になるんだ! 」
マオ
「 シュンシュン、最低だな…… 」
霄囹
「 褒め言葉だねぇ。
オカルトグッズの売り上げも更に上がるだろうよ。
従業員を全て可愛いキノコンにするからな。
怖い体験をしても可愛いキノコンを見れば気持ちも落ち着いて和むだろ。
ホラー初心者には館内の案内役にキノコンを付ける予定でもあるしな 」
マオ
「 キノコンに案内してもらいながら館内を歩くなら怖さも軽減するかもな。
まぁ、1番ヤバくて怖いのは人間を餌認定してるキノコンだけどな…… 」
霄囹
「 知らぬが佛だろ★ 」
マオ
「 ははは…………。
キノコン達が館内を案内中の御客を摘まみ喰いする──なんて不祥事は起きないんだよな? 」
霄囹
「 それこそ【 呪人形の館 】の宣伝になるじゃないか!
やはり何かしらの “ 不思議 ” が起きないと好奇心は掻き立てられないし、楽しめないだろ? 」
マオ
「 キノコンの摘まみ喰いすらも演出に利用する気かよ 」
霄囹
「 ピンチをチャンスに変えて風向きを変えるのが起業者の手腕だぞ。
大型台風を味方に出来ない様じゃあ、話しにならないさ 」
マオ
「 普通は出来ないと思うけどな~~ 」
なんて事をシュンシュンと話していたら、キノコンがシュンシュンに来客が来た事を教えてくれた。
来客って誰だろう??
このままオレが居ても良いのかな?
◎ 訂正しました。
人間である事を止めて、─→ 人間である事を止めて、
“ 御客様はカモ様 ” なんて古臭い ─→ “ 御客様は神様 ” なんて古臭い
“ 御客様はカモ ” を掲げて─→ “ 御客様はカモ様 ” を掲げて