⭕ 幻夢とデート 7
獅聖幻夢
「 ──それでは、本題に戻りましょう。
今から、マオ殿に取り憑いている呪怨霊を引き剥がす儀式を始めます。
儀式を遂行するに辺り、必要な陰陽陣を描きます。
マオ殿、この瓶の中にマオ殿の血を入れてください 」
幻夢さんがオレの前に出したのは、血液の入った梅瓶だった。
何の血液かは聞かないでおこうと思う。
…………………………人間から抜いた血だとは思いたくないな……。
幻夢さんから手渡されたナイフを使って、オレは左指の人差し指を少しだけ切る。
シュンシュンの時もそうだったけど、何で血が出るんだろう?
腹を刺されても血なんて出ないのにな……。
不思議なんだけどぉ!?
此はセロに聞くしかないかな?
オレの左指から出た血が梅瓶の中に入っている血液の中へ落ちる。
此で何をする気だろう?
まさか──、この大量の血液で儀式に必要な陰陽陣を描くって事かよ。
陰陽陣って血液を使って描くもんなのか??
マオ
「 幻夢さん──、大量の血液で陰陽陣を描くのは何で?
何か意味が有るの? 」
獅聖幻夢
「 マオ殿から引き剥がした呪怨霊を定着させる為ですよ。
この日の為に質の良い血液だけを集め、特別な製法で配合して “ ブレンド血液 ” を作りました。
人間を1000体程犠牲にしましたけど、特別大した数では有りません 」
マオ
「 1000人は大した数だと思うけどぉ!! 」
獅聖幻夢
「 そうですか?
今から儀式用の陰陽陣を描きますね 」
幻夢さんが言うと、地面に陰陽陣が現れて呪靈が出て来る。
毎回の事だけど、一体どんな仕組みになっているのか不思議で堪らない。
10体の呪靈は何かを担いでいる。
何を担いでいるのかと言うと──、裸体の人間だ。
然も、子供ぉ!?
マオ
「 一寸待ってよ、幻夢さん!
その裸の人間は何?! 」
獅聖幻夢
「 此ですか?
贄ですよ。
どんな儀式でも成功させる為には、新鮮な生け贄が必要なので── 」
マオ
「 生け贄に態々人間を使う必要が有るの? 」
獅聖幻夢
「 相手は呪怨霊ですからね。
ある程度、罪深い生け贄を使う必要が有ります。
安心してください、マオ殿。
この子達は善良な市民では有りませんから 」
マオ
「 善良な市民じゃない?
どゆこと?? 」
獅聖幻夢
「 世間で “ 犯罪者予備軍 ” と分類されている畜生以下の子供です。
学舎でイジメとやらを起こしている主犯格で有り、自殺者を出したにも関わらず我関せずで、のうのうと楽しく生きている心の壊れた異常者です。
マオ殿の心が痛まない様、更正の見込みの無い人間を選びました 」
マオ
「 あ……うん…………。
自殺者を出したのに反省もしないで、のうのうと楽しく生きている奴は駄目だな?
自覚も芽生えないで反省もしない奴は社会に出ても同じ事を繰り返すしな……。
同じ様な被害者を出さない為にも、早目に排除しとかないとな? 」
獅聖幻夢
「 今回の儀式に相応しい贄の調達が出来て幸いでいた 」
10体の呪靈は10名の子供達── 中高生くらいかな? ──を乱暴に地面の上へポイした。
俯せになっている子供を仰向けにしてから、子供達の腹を躊躇いも無く遠慮無しにかっ捌いた。
地面の上に大量の血液が飛び散り、体内に納まってた臓物が露になった。
グロテスクぅ~~~~。
モザイクで隠す必要が有る光景だ……。
見慣れちゃって平然としてるオレって、普通じゃないし、ヤバいよな……。
幻夢さんが梅瓶の赤い上蓋を開けると、中に入っている血液が地面の上に転がっている死体へ向かって飛んで行く。
血液は勝手に動いて陰陽陣を描き始める。
陰陽陣が描かれている間、10体の死体はビクビクと痙攣を起こしているみたいに小刻みに動いている。
マオ
「 うわぁ…………。
本当にヤバい儀式が始まるみたいだ……。
オカルト的に言うと──、黒魔術の儀式的な感じかな? 」
獅聖幻夢
「 マオ殿、陰陽陣が完成しました。
陰陽陣の中央に立ってください 」
マオ
「 う、うん…… 」
人間の血液を使って、目に見えない力で描かれた陰陽陣の中央に向かって歩く。
陰陽陣の上を歩いても靴底に血が付かない。
乾くの早っ!!
獅聖幻夢
「 では、今からマオ殿に取り憑く忌まわしい呪怨霊を引き剥がし、陰陽陣の中に定着させます 」
マオ
「 お…お願いします…… 」
本当にオレから引き剥がす事が出来るんだろうか?
信じられないけど──、オレは幻夢さんの言葉を信じたい。
幻夢さんは狩り衣の袖の中から、持ち手の付いている鈴を取り出した。
いや、本当で狩り衣の中ってどうなってんだよ!?
ミステリぃ~~~~。
幻夢さんは鈴を鳴らしながら静かに動き始める。
舞い始めた?!
えと…………儀式って舞うの??
幻夢さんは呪靈達が奏でる演奏に合わせて優美に舞っている。
いや、楽器ぃ~~!!
さっき迄、呪靈は楽器なんて持ってなかった筈だけどぉ?!
幻夢さんは円を描く様に陰陽陣の周りを舞っている。
………………思わず見惚れてしまう程に美しい舞いだと思う。
幻夢さんは男なのに──、“ 美しい ” と絶讚される天女より遥かに美しく見える。
もしかして──、いつぞやシュンシュンが言っていた “ 呪舞 ” ってヤツかな??
リン…リン……って鳴る鈴の音は上品で思わず聞き入ってしまう。
何時迄も聞いていたいと思う鈴の音だ。