霄囹
「 空気中に漂う悪氣ってのは、生き霊問題と関係が有るんだ 」
マオ
「 生き霊と関係が有る??
どゆことだよ? 」
霄囹
「 生き霊ってのは、生きてる人間が “ 特定の相手に執着し過ぎるあまり、無意識に魂の一部を相手へ飛ばす念 ” だと思われている。
生き霊ってのは、憑いてる奴を苦しめるだけでなく、生命エネルギーを吸い取り、精神を蝕み、体力も奪い弱体化させて行くんだ 」
マオ
「 その生き霊が、この家に出て来るって事か? 」
霄囹
「 あぁ──、この家の空気中に漂う悪氣に引き寄せられて集まって来る様、故意に仕組まれているんだ 」
マオ
「 仕組まれてる?? 」
霄囹
「 生き霊は無意識に飛ばされているが──、目的の相手の元へ飛んでる最中に、この家に引き寄せられてしまう。
この家に有った仏間が無くなり、仏壇も先祖の位牌すらも無くなった。
鯔のつまり、先祖の霊と子孫という対象を守る存在が不在な状態だ。
先祖の霊には子孫を守護る力が一切無いのが現実だ。
人間の御都合主義の象徴でもある “ 守護霊 ” と呼ばれる霊も実際には存在しない。
亡くなった先祖を守護るのも、先祖の霊の代わりに子孫を守るのも神佛だ。
仏壇の中心には拠り所となる御本尊が祭られているのが一般的だ。
菩提寺の檀家なら、菩提寺が信仰の依処としている御本尊が祭られているものだ。
その御本尊に宿っている御神霊が神諸天善神佛諸佛諸菩薩なんだ。
因ちなみに神格化された人間の霊は例外だ。
仏ぶつ壇だんの有る家いえは多少なりとも菩提寺の御ご本ほん尊ぞんの力ちからで家いえを守ってもらえているが、この家いえにはそ・れ・が無い。
仏ぶつ間まを潰させ、仏ぶつ壇だんと位い牌はいを処分し、菩提寺とも縁えんを切らせたのは、悪あっ氣きを家いえの中に漂ただよわせる空間を作り、悪あっ氣きで充満させる為だったんだ。
生いき霊りょうを引き寄せる事で、住人が好このまず嫌いやがる霊障を起こさせ、住人が自分だけを頼る様ように仕向けたんだ。
悪意がギチギチに詰まった計画的犯行だ 」
マオ
「 じゃあ、引き寄せられる生いき霊りょうが家いえの中へ入はいって来これない様ように出来れば、生いき霊りょう問題も解決出来るって事だな! 」
霄囹
「 そうだが──、生いき霊りょうを敷地内へ入いれない事は出来ない。
今の僕に出来る事は心霊現象,怪奇現象を最小限に抑おさえ、被害を減少させるぐらいだ。
此でも十分過ぎるくらい凄い事なんだぞ。
生いき霊りょうを引き寄せる力を弱める事は出来ても、消す事は出来ないんだ。
家いえの中へ入はいって来くる生いき霊りょうを止とめる事は出来ないが、数かずを減らす事は出来る。
今の僕には此が精一杯なんだ。
僕はセロフィートじゃないからな、何なんでも彼かんでも完璧に0ゼロには出来やしない 」
マオ
「 シュンシュン……。
じゃあさ、能力ちからを封じられてない幻げん夢むさん,玄げん武ぶさん,弓ゆ弦づるさんなら出来ないか? 」
霄囹
「 弓ゆ弦づるは退治が専門だから論外だ。
毎回、弓ゆ弦づるに出張させて生いき霊りょうを退治されるのは効率が悪い。
抑そもそも、怪異妖怪絡がらみでない依頼を弓ゆ弦づるは引き受けないだろうしな 」
マオ
「 言えてる……。
弓ゆ弦づるさんは心霊系よりも怪異系寄りだもんな 」
霄囹
「 玄げん武ぶと幻げん夢むが手を組んだとしても難むずかしいだろうな。
玄げん武ぶは陰陽師としては折おり紙がみ付つきの腕だが、専門分野が異なる。
残念だが力ちから不ぶ足そくだ 」
マオ
「 玄げん武むさんも心霊系ってよりも怪異系だもんな。
嫌いやってるのか心霊系には関わりたくなさそうな雰囲気を出してるよな。
夏の風物詩的な心霊番組も見ないし…… 」
霄囹
「 幻げん夢むでも0ゼロには出来ないだろう。
幻げん夢むなら『 今の家いえを取り壊し、更地にしてから建て直なおせば解決します 』って言うだろうな。
金カネは掛かるがそ・れ・が・1番手てっ取とり早ばやい方法なんだ 」
マオ
「 家いえを取り壊して建て直なおすか──。
確たしかに言いそうかも??
取り壊す前には、滞とどこおりなく無事に解体作業を終わらせられる様ように供養しないとだろ?
更地にした後あとも建て直なおしする前には供養しないとだろ?
大おお掛がかりになるよな 」
霄囹
「 完全に生いき霊りょうを絶たちたいなら、神聖な仏ぶつ間まと仏ぶつ壇だんが必要になる。
立派な仏ぶつ壇だんでなくても構わない。
毎日、掃除をし易いシンプルな雛壇式の仏ぶつ壇だんで良いい。
先祖代だい々だいの位い牌はいか、先祖代だい々だいのルーツを辿たどれる過去帳を作る必要が有る。
子孫が手を合わせて心を向け、祈れる対象が必要だからな。
その対象が、自分と関係の有る身近な御先祖という存在だ。
1番肝心なのは、先祖の霊と生きた子孫を守ってくれる神諸天善神佛諸佛諸菩薩の御神霊御み霊たまを宿やどす為の御ご本ほん尊ぞんが必要だ。
家族が御ご本ほん尊ぞんに宿やどる神諸天善神佛諸佛諸菩薩に手を合わせ、先祖の冥福を祈る行為を続けていれば、神諸天善神佛諸佛諸菩薩の力ちからで守られる様ようになる。
そうなれば、家いえの前まえに見えないバリアが張られ、生いき霊りょうは家いえの敷地内へ入はいって来きれなくなるって訳だ。
額縁の裏に挟んだ御札とキノコンのヌイグルミを回収しても問題無くなる。
心霊現象,怪奇現象に悩まされる事も無くなる 」
マオ
「 だけど、0ゼロには出来ない…… 」
霄囹
「 その通とおりだ。
だからこその僕なんだ!
困った事が起きた時ときには【 セロッタ法律相談所 】を頼れば良いいし、僕にも依頼すれば良いい。
良いい値で依頼を受けてやる! 」
マオ
「 腐ってもシュンシュンって事か。
見み直なおして損した! 」
霄囹
「 あのなぁ──。
僕は “ 陰陽師 ” でお・ま・ん・ま・食くってるんだぞ!
商売として “ 陰陽師 ” で稼いでるんだ!! 」
マオ
「 まぁ、早い話はなしが詐欺師の霊能力者元陰陽師から、本物の陰陽師シュンシュンにバトンタッチするって事だな 」
霄囹
「 フン。
そういう事だ 」
シュンシュンとオレの会話を静かに聞いていた奥さんは、困惑しているのか複雑そうな表情をしている。
何なにはともあれ、単身赴任中ちゅうで県けん外がい暮ぐらしをしている旦那さんに相談してからになるだろうな。
娘むすめさんにも事情を話して納得してもらう必要が有るだろう。
この依頼を完全に解決させるには、前途多難かも知れないぞ。
◎ 訂正しました。
先祖を守も護もるのも、─→ 先祖を守ま護もるのも、
敷地内に入はいれない事は ─→ 敷地内に入いれない事は