⭕ お祓いの依頼 10
──*──*──*── 2階
──*──*──*── 洋室
住人の女性
「 此方の部屋になります。
主人が棚を手作りしてくれて、並べて置いてあります 」
マオ
「 棚を作るなんて凄いね!
DIYが趣味なのかな? 」
霄囹
「 並べて飾ってるとはコレクターだな。
見易いのは大歓迎だ 」
奥さんが部屋のドアを開けてくれる。
室内には確かに棚が並んでいる。
手作りとは思えない出来に驚いた。
マオ
「 うわぁ…………買ってないんだよね?
此が全部手作りなんて凄いや…… 」
霄囹
「 埃避けに透明ケースに入れてあるな。
良い趣味だ 」
マオ
「 陰陽師と霊能力者のどっちから買ったのか分かる様に名前が書かれてるな。
年度,日付,曜日も書かれてる。
旦那さんは確りした人なんだね 」
霄囹
「 此処まで丁寧に保管されてると頭が下がるな 」
マオ
「 シュンシュン、何か気になる物は有るか? 」
霄囹
「 殆んどが無害で価値の無いガラクタだな。
持っていても問題は無い────いや、そうじゃないのも有るな 」
マオ
「 有るんだ?
どんなのだ? 」
霄囹
「 先ずは此だな。
陰陽師から買った数珠みたいだな。
この数珠に使われている玉が呪物だ 」
マオ
「 へぇ?
陰陽師って数珠を使うのか? 」
霄囹
「 使うな。
僕も人間だった頃は数珠を使っていた。
僕の数珠は特別製だったから、法力を込めて閉じ込めていたんだ。
必要な時に解放しては足りない法力を補っていた。
今は必要無いから使わないがな──。
見てみろよ、文字が彫られている。
高い数珠だったんだろうな。
数珠の間に小さな玉が有るだろ 」
マオ
「 本当だな。
その小さな玉がどうかしたのか? 」
霄囹
「 この小さな白い玉に呪術が込められているんだ。
この数珠は没収する 」
マオ
「 呪術を込めてた数珠を売ってたって事かよ?
商売と言えど、えげつないな…… 」
霄囹
「 次は藁人形だ。
高級素材で作られた高い藁人形だが、此もアウトだ。
骨組みに呪術が込められているんだ。
此も当然、没収する 」
マオ
「 藁人形に骨組みって必要か?
使わないで作るんじゃないのか? 」
霄囹
「 藁人形とは言えど、作り方は様々だ。
陰陽師に依って作り方が異なる。
基本の作り方は有るが、作り手が工夫したり、アレンジを加えて作るんだ。
個性的,独創的な藁人形が出来上がる場合も有る 」
マオ
「 へ、へぇ……。
個性的で独創的な藁人形ねぇ…… 」
霄囹
「 次は── 」
シュンシュンは次々とアウトな品々を棚から取り出して行く。
どうやら殆んどが陰陽師から買った品の様だ。
呪術を掛けた品を買わせていたなんて、とんでもない陰陽師だったみたいだ。
マオ
「 シュンシュン、此は? 」
霄囹
「 それか?
それは象牙で作られた印鑑だな。
今は象牙の売買が禁止されているから、買う事が出来ない品だ。
唯の印鑑だから害は無いな 」
マオ
「 ふぅん?
じゃあ、此は? 」
霄囹
「 それも害は無い。
唯の花瓶だ。
使っても問題は無いぞ 」
マオ
「 じゃあ、この地蔵の絵は? 」
霄囹
「 此も唯の絵──いや、待て!
マオ、額縁から絵を出せ! 」
マオ
「 お、おぅ…… 」
シュンシュンの声色が変わった。
シュンシュンが悪巧みをする悪者みたいな顔をして見ている。
…………………………ヤバい絵なのか??
額縁から地蔵が掛かれた絵を外すと後ろに何かが貼り付けられていた。
何だ??
マオ
「 シュンシュン、これって── 」
霄囹
「 あぁ──、とんでもない奴だな。
霊能力者と陰陽師が繋がったぞ! 」
マオ
「 繋がった?
どゆことだよ? 」
霄囹
「 陰陽師と霊能力者が同一人物──若しくはってグルって事だ。
陰陽師は死んでないぞ。
何処かで元気に生きている 」
マオ
「 それって、陰陽師としてやって行くのがヤバくなったから、死んだ事にして──霊能力者として再スタートしたとか? 」
霄囹
「 オカルト業界では転職なんか良く有る事だ。
何等珍しい事じゃない。
この絵に貼られている御札からは、此方の呪物と同様の邪気と呪気を感じる。
邪気と呪気ってヤツは術者に依って異なるんだ。
個性的で独創的な気だから、全く同じ邪気,呪気ってのは存在しない。
指紋と同じだ 」
マオ
「 じゃあ──、陰陽師と霊能力者は……同一人物………… 」
霄囹
「 あぁ、その可能性が高い。
クックックッ──。
良いねぇ~~~~。
この邪気,呪気を一纏めにして返還してやるとしよう。
面白くなるねぇ~~ 」
シュンシュンは楽しそうだ。
こういう所は何百年経とうが変わらないんだな……。
マオ
「 シュンシュン、程々にな?
でもさ、犯人が同一人物で良かったよな。
今も健在なら態々リホームをさせた理由も聞ける訳だし。
他には怪しい品物は無いのか? 」
霄囹
「 後の回収は式隷に任せる。
1階に降りるぞ 」
シュンシュンは部屋から出ると廊下を歩いて階段へ向かう。
オレもシュンシュンの後を追って部屋を出た。