✒ お祓いの依頼 9
霄囹
「 陰陽師にも宗派があるからな。
学ぶ教えが違えば、解釈も違うのは当然だ。
本物を信じれば良いだけだ 」
マオ
「 皆自分が『 本物だ 』って主張するから悩むんじゃないかよ 」
霄囹
「 陰陽師には『 式神を出してみろ 』と言えば良い。
式神を1体も出せない陰陽師は偽者だから、警察に通報すれば良い。
詐欺罪で刑務所へしょっぴいてくれるさ 」
マオ
「 警察に通報される陰陽師って…… 」
霄囹
「 偽者が減れば、本物の僕に依頼が回って来るってもんだ。
有り難いじゃないか 」
マオ
「 ははは………… 」
旦那さんと奥さんは、友人夫婦から紹介された霊能力者から液体の入った小瓶を貰い、それを娘さんに飲ませたらしい。
初対面の霊能力者から謎の液体の入った小瓶って──、めちゃくちゃ怪しくないか??
それを娘さんに飲ませるなんて──。
当時の奥さんと旦那さんは正気じゃなかったのかな?
幾ら娘さんを助けたくて何とかしたかったからって謎の液体を飲ませるとか──。
何か色々とヤバい気がするぅ~~。
それでも奥さんが怪しい霊能力者を絶讚する理由は話を聞いて理解はした。
怪しい液体を飲んだ娘さんの容態が、その日の夜に急変して高熱を出して寝込んでしまったらしいけど、翌日には元気になったそうだ。
嘘みたいな話だけど、事実らしい。
小瓶の液体の効果は1週間しか続かないらしく、元気な生活を過ごしてほしいと考えた旦那さんと奥さんは、相談をして娘さんの為に霊能力者から毎月小瓶を買う事を決めたらしい。
とは言え、小瓶もタダではなく、商品だから買わないといけない。
旦那さんと奥さんは、大事な娘さんの為に霊能力者のファンクラブに入り、ファン割り引きで小瓶を買う事にしたらしい。
本来なら小瓶は1本10万円もする品らしく、1ヵ月に4本 ~ 5本は必要となる。
1ヵ月に40万 ~ 50万もの出費をする事になる訳だけど、ファン割り引きされると30万円で買う事が出来て、10万 ~ 20万を翌月分に回す事が出来たそうだ。
今では小瓶の液体を飲まなくても娘さんは元気に楽しい生活を過ごせているみたいだ。
娘さんの容態が改善した事で、霊能力者の能力を信じた旦那さんと奥さんは、困った事が起きたら何でも霊能力者を頼る事にしたらしい。
それからは霊能力者のファンとして布教──推し活とやらを夫婦で勤しんでいたらしい。
昔信じていた陰陽師から買った品や推し活していた霊能力者から買った品が2階の洋室に置かれているらしい。
マオ
「 ……………………霊能力者のやり口がシュンシュンと同じじゃないかよ。
シュンシュンも御札を高額で売り付けるもんな! 」
シュンシュンの場合は、1枚だけ自分で作って残りはセロの古代魔法で同じ御札を大量に出してもらってるんだよな。
それを元手タダの同然の御札を金持ちに高値で売り付けてはガッポリしてるんだから、悪質極まりない訳だけど──、効果は文句無しなんだよな~~。
霄囹
「 コラ!
勝手に僕と一緒にするな!
僕の御札は効果抜群,効果覿面の凄い御札なんだ!
ちゃんと適正価格で売ってるんだ 」
マオ
「 シュンシュンと同じくあこぎで悪どい売り方してるのに、金額が易いから良心的に感じちゃうな~~。
その効果抜群の液体を調べていみたいよな 」
霄囹
「 超自然能力──超能力,霊能力には使い手の特性も絡んで色んな効果が出るもんだ。
人に依っては、気功だとか念能力とか言われたりもする。
水の味を変えたり、水を酒に変えたり出来る奴も居る。
鍛練すれば、水の色を変色させ、別の飲み物に変えてしまえる奴も居るんだ。
娘さんの身体に合いそうな水に変える事が出来る能力者なのかも知れないな。
まぁ、人間の思い込みは時に医学者を驚かせる驚異だ。
唯のラムネでさえ『 食べ続ければ難病が治る新薬だ 』と信頼している医師から言われたら、助かりたいと思う一心と貪欲な生への執着で医師の言葉を猛信し、食べ続けるだろう。
医師が万歳した難病が嘘みたいに完治する実例も有る程だ。
人間の思い込みってのは、生きる為に懸命に動いている体内の細胞を活性化させる起爆剤なんだ。
娘さんの『 元気になって生きたい 』という貪欲で強い生への執着が、弱っていた細胞を活性化させる切っ掛けになったのかも知れないぞ。
謎の液体も小道具として一役買っていたのかも知れないな 」
マオ
「 じゃあさ、霊能力者は人体の不思議を上手く利用していた──って事になるのか? 」
霄囹
「 可能性が有るってだけだ。
違うかも知れないがな。
何はともあれ、陰陽師と霊能力者から買った品々を見せてもらいたい。
売り付けられた品々に小細工が仕込まれてる事は良く有るんだ 」
住人の女性
「 ………………分かりました。
案内致します。
付いて来てください 」
シュンシュンとオレは奥さんの案内で2階の一室へ案内される事になった。
先ずは出されたケーキを完食して、紅茶も飲む。
リビングから出ると廊下を歩いて2階へ続く階段を上がった。