⭕ ヴァンプルの宴 3
マオキノが下調べをしてくれた美味しいパン屋を巡るデートを楽しむ筈だったのに、まさか吸血鬼が絡んでいるパン屋ばっかりだと判明して、かなりガッカリした。
頼むから普通のパン屋をチョイスしてほしかった。
それでもパンが美味しい事には間違いない。
パン好きがパン好きの為に発刊している美味しいパンを販売しているパン屋を掲載して紹介するパン雑誌に載るぐらいだからな。
もしかしたらマオキノはパン雑誌を参考にしてパン屋地図を作ってくれたのかも知れない。
確かにパンは文句無しに美味しい。
見た目でも楽しませてくれるし、パンの香りに食欲をそそられる。
雑誌に掲載されたり、ファンが付いて人気が出るのも納得もする。
だけど、オレが許せなくて文句を言いたいのは──、発酵前のパン生地の中に吸血鬼の精液を混ぜて練り込んでるって事だ。
通りでセロが一口も食べなかった筈だぁぁぁぁぁぁ!!
知っててオレに食べさせるとか、どんだけセロは鬼畜ドSだよ!!
吸血鬼の精液を盛られて作られたパンを食べた人間は、吸血鬼との相性が良かった場合には身体の何処かに痕印って言う吸血鬼にしか目に見えない目印みたいなものが浮かび出るらしい。
吸血鬼は目印の痕印を持った人間から夜な夜な生命力を吸っては寿命を延ばせるらしい。
生かさず殺さずで、寿命を迎える時迄、生命力を吸い続けるんだとか。
吸血鬼って知らず知らずの間に結構な事を人間にしてたんだな。
今迄、バレてないのが不思議なくらいだ。
生命力を吸われるくらいじゃ人間は吸血鬼化はしないみたいだ。
因みに現在では吸血鬼に血を吸われたぐらいじゃ人間が吸血鬼に変貌する事も無いみたいだ。
セロ曰く、世代交代を繰り返して行く中で、人間を吸血鬼に変貌させる特殊な細菌みたいなのが大幅に減少しているらしい。
時代と共に環境が変わって来ている事が原因みたいだ。
それでも細菌が死滅したり絶滅したりしないから、極めて稀に血を吸われた人間が吸血鬼に変貌する事例は有るみたいだ。
吸血鬼になったからって別に強くなる訳じゃなくて、体質が徐々に穏やかに変化していくらしい。
昔みたいに急変したり豹変したりして、理性を無くして無差別に襲い掛かっては血を求める──って事は無いみたいだ。
喉が無性に渇く事も少なくなったみたいだ。
全く、何だってセロはこんなにも吸血鬼の事に関して詳しいんだか──。
もしかして、オレが知らないってだけで、吸血鬼を生け捕りにして実験に使っていたのかも知れないな。
そんな事は横に置いといて────。
マオ
「 此処が地図に書かれてる最後のオススメのパン屋だな。
このパン屋で売られているパン生地にも吸血鬼の●●●●が練り込まれてるのか……。
食べたくないな~~。
とんだ罰ゲームだよな、セロ── 」
セロフィート
「 ワタシに内緒で “ いけないルート ” で遊んでいたマオには、丁度良い制裁でしょう? 」
マオ
「 オレが悪かったのは認めてるだろ?
ちゃんと土下座して謝ったよな?
オレ、誠心誠意,真心を込めてちゃんと詫びただろ? 」
セロフィート
「 マオ──、君はワタシに嘘を吐き、ワタシを謀り、騙し続けました。
その罪に対し、2度と同じ過ちを繰り返さない事を〈 久遠実成 〉へ誓いの懺悔をし、ワタシに謝罪をする事は罪を犯した者の当然の努めです。
例え相手に許されなくとも真心を込めて誠実な謝罪をする行為は当然の責務です。
どんなに小さく些細な罪も処罰はされます。
厳罰に処される事を甘んじて受け入れ、罪を償う為の贖罪を全うする事も責務です。
減刑等というあまっちょろい世迷い言な夢物語を見ない事です 」
マオ
「 ………………セロは全然オレを許してくれてないって事だな? 」
セロフィート
「 おや?
そう聞こえてしまいました?
気の所為です♪ 」
マオ
「 ………………吸血鬼の精液が練り込まれているパンを食べ続ける事が、オレに与える罰なんだな?
真相を知っても尚、食べ続けないといけない嫌がるオレの様子を見て楽しんでるんだな?
それだけセロはオレのした事に怒ってる──って事なんだよな? 」
セロフィート
「 マオが思いたいなら、そういう事にしときましょう 」
マオ
「 絶対にそうだろぉ!! 」
セロフィート
「 マオの気の所為です♪
仮にワタシが怒っているなら、マオとのデートは断ってます。
何よりも愛しいマオのする事に怒ったりしません 」
マオ
「 ………………そういう言い方をされると勘違いしちゃうんだけどな! 」
セロフィート
「 はて?
勘違い…です? 」
マオ
「 “ 自惚れちゃうだろ ” って事だよ! 」
セロフィート
「 マオの代わり等誰にも出来ません。
誰かがマオになる事も出来ません。
ワタシだけのマオは君だけです。
大いに自惚れてください 」
マオ
「 ……………… 」
セロフィート
「 ふふふ…(////)
さぁ、パン屋さんへ入りましょう 」
マオ
「 お…おぅ…… 」
セロはオレの右手を握るとパン屋へ向かって歩く。
セロは良く手を握ってくれる。
こういう事をされると勘違いしちゃうんだ。
オレの存在はセロにとって玩具以上の価値が有るんじゃないか──って、勘違いして自惚れてしまうんだ。
セロは「 自惚れてください 」って言ってくれるけど……、真に受ける事は出来ないから辛いんだよな……。
──*──*──*── パン屋
マオ
「 ──あれ?
このパン屋は他のパン屋とは内装が違うな。
至って普通の昔ながらのパン屋じゃんか 」
セロフィート
「 昭和中期から続くパン屋さんを思わせますね 」
マオ
「 販売されているパンも田舎っぽいパンが多くて、オサレ感を感じない…… 」
セロフィート
「 マオ、“ オサレ感” とは何です? 」
マオ
「 “ お洒落過ぎぃ ” って言う褒め言葉なんだってさ。
シュンシュンがコレクションしてる死神代行になった青年が主人公の漫画が有るんだけど──、ファンの間で “ オサレ ” って言われてたんだってさ。
今から80年程前にブームになったら漫画らしいけど? 」
セロフィート
「 死神代行となった青年の物語──ですか。
人間風情が死神代行になるとは面白そうですね 」
マオ
「 面白いかは分からないな。
シュンシュンは気に入ってるみたいだけど──。
特に主人公と敵対する敵達が好きみたいだぞ。
ホ◯ウとか、ア◯ン◯ルとか、ク◯ン◯ーとか、バウ◯ドとか、ヴィザなんちゃら──とか。
兎に角さ、敵が多いみたいなんだ。
闇呪術を駆使して “ 作りたい ” って言ってたな~~ 」
セロフィート
「 ワタシも1度、読んでみるとしましょう 」
マオ
「 セロ──。
読むのは良いけどさ、漫画の内容に感化されて変なの作るなよぉ~~ 」
セロフィート
「 “ 変なの ” とは何ですか。
心外です。
ワタシは常に “ 面白いモノ ” を探求しているだけです 」
マオ
「 いや、限度ぉ~~ 」
セロフィート
「 内容に依っては死神さん達に協力していただく事になるかも知れません♪ 」
マオ
「 嬉しそうに言うな! 」
セロフィート
「 マオ──、パンを買いましょう。
この店でも店内で食べれるみたいですし 」
マオ
「 そだな。
う~~ん……、洋風なパンより和風なパンが多いんだな。
ダシパン??
ダシが生地に練り込まれてるんだ? 」
もしかして、“ ダシ ” って吸血鬼の精液だったりして??
…………………………食べたくないな……。
だけど……、これはオレに対する罰だから──、甘んじて受けないといけない……。
相応の罰を受けるのは加害者の責務だから。
精神的に辛い……。
並んでるパンを2個ずつ選んだら、セロがMBKで支払ってくれる。
空いている席に座って、運ばれて来たパンを食べるんだけど、セロは相変わらずパンには手を付けないし、一口も食べない。
やっぱり入ってるんだ……。
ちくしょう──!!
セロフィート
「 ふふふ…。
美味しいパンですね? 」
マオ
「 そ……そだな~~。
確かに美味いよ。
悔しいけど美味いよ!
昔ながらの懐かしい風味のパンも楽しめるしな。
{ でも1番の残念ポイントは──吸血鬼の●●●●が生地に “ 練り込まれてる ” って事だけどな! }」
セロフィート
「 そろそろ無くなりますね。
次のパンを頼みましょう 」
マオ
「 うわぁぁぁぁぁぁ!!!!
別の意味で生き地獄ぅ~~~~!! 」
オレが両手で髪を掻き毟っていると、パン屋の窓ガラスから「 パリッ 」と小さな音が聞こえた。
かと思えば、バリンッ──という音が鳴ったかと思うと窓ガラスがド派手に割れた。
マオ
「 へっ??
何だ?? 」
店内の床には割れた窓ガラスが散らばっていて、窓ガラスが刺さって怪我をしている御客も居た。
女性客が多いのか「 キャーーー 」と甲高い悲鳴が聞こえて来て煩い。
残念な事に今日のオレはアミュレットを付けていないから怪我人に回復魔法を使う事が出来ない。
怪我人を避難させないと──って思ったオレは椅子から腰を上げた。
その直ぐ後ろに何かが物凄い速さで飛んで来て壁にぶつかったみたいだ。
左側に有る壁に目を向けると、血塗れの子供が壁の中にめり込んでいた。
マオ
「 な……何だよ、一体………… 」
壁にめり込んでいる血塗れの子供を目撃した女性客が更にキンキン声で悲鳴を上げる。
御客達を店内から逃がしてあげたくても入り口には近付けそうもない。
セロとオレが使っていたテーブルの上は血塗れの子供から流れ出ている大量の血液で赤く染まっている。
未だ手を付けないパンは食べれそうにない。
まぁ、別に良いんだけどな?
吸血鬼の精液が練り込まれてるパンなんて本当なら食べたくない代物だからな!
グッジョブ★
マオ
「 おい──、大丈夫かよ?
君ぃ!! 」
全然大丈夫そうに見えない子供に声を掛けるけど、子供はピクリとも反応しない。
此はもう死んでる??
確かに物凄い量の血が出ているし、未だ子供だし──、此で生きてる方がおかしいし、異常だろう。
少なくとも “ 人間じゃない ” って事になるじゃないか──。
マオ
「 セロ── 」
セロフィート
「 マオ、動かないでください。
そのまま、気配と殺気を消してください 」
マオ
「 アミュレットが有れば助けれたかも知れないのに……………… 」
セロフィート
「 犯人が御出座しです 」
マオ
「 犯……人…?? 」
セロが言うとパン屋の店内に誰か──違うな。
“ 何か ” が入って来た。
オレはセロに言われた通りに気配と殺気を消した。
此から何が起こるのか静かに見届ける事になるかも知れない。
ゾロゾロと店内に入って来たのは黒いロングコートを着こなした男達だ。
上質で高級そうなロングコートだ。
金持ちかな??
完全に怪しい……。
怪しさ1000%の男達を引き連れているのは、未だ幼そうな子供だった。
???
「 ──アベルっ!?
いやぁぁぁぁぁぁぁ!!!!
アベルぅぅぅぅぅ!!!! 」
腰まで伸ばしたストレートな赫髪の少女が真っ青な顔をして悲鳴に近い甲高い声で叫んでいる。
どうやら血塗れで壁にめり込んでいる少年は、赫髪の少女の知り合いらしい??
顔の整った美少女は黒ずくめの男達に捕まっているみたいで、少年に駆け寄る事が出来ないみたいだ。
ルビーを連想させる様なキラキラとした赤い瞳からは大粒の涙が溢れている。
赫髪の少女
「 どうして──、どうして──、こんな酷い事が出来るのぉぉぉぉぉ!!
アベルは貴方の弟なのよぉぉぉぉぉ!!
何も殺さなくたって── 」
???
「 リグイサリィ、君と結婚をするのはアノスベルドじゃない。
この僕──、カイリエンルだ。
君は僕の花嫁になるんだぞ。
アノスベルドが生きていたら、君は僕を選んでくれないじゃないか。
恋敵の息の根は確実に止めないと──だろ 」
リグイサリィ
「 カイン…………私は…………私は……貴方を選ばないわ!!
実の双子の弟を殺す様な人と結婚なんてしないわ!! 」
カイリエンル
「 リグイサリィ──、君には失望したよ。
始祖の末裔である唯一無二の僕を選ばないって言うのかい?
リグイサリィ、残念だよ── 」
そう言った蜂蜜色のサラサラな髪をした少年は、大粒の涙を流して訴える赫髪の少女の首を容赦なく飛ばした。
赫髪の少女の首が大量の血を流しながらコロコロと床に転がる。
嘘みたいに呆気なく殺しやがった。
結婚するとか花嫁にするとか自分の嫁にする──って言ってたのに、一切の躊躇いも無く……。
然も、少女の首から出ている血を美味そうに舐めている。
マオ
「 イカれてるな…… 」
カイリエンル
「 ──誰だ!? 」
やっば!!
つい声を上げちゃった!!
オレは直ぐに気配を消す。
カイリエンル
「 煩い人間が居るな。
おい──、店内に残っている人間共を片付けろ!
厨房に居る吸血鬼も始末しろ! 」
蜂蜜色のサラサラな髪をした少年は、取り巻きの黒ずくめの男達に指示を出すと滅茶苦茶になったパン屋から1人で出て行った。
パン屋の店内では蜂蜜色のサラサラな髪をした少年が残して行った部下なのか手下なのかは分からないけど──、店内に居る御客や店員さんを襲い始めた。
黒ずくめの男達の一部は厨房の中へ入って行く。
厨房では派手な音が聞こえている。
厨房に居る吸血鬼達が交戦しているかも知れない。
御客や店員さんは黒ずくめの男達に噛まれて血を吸われている。
血を吸われている御客や店員さんは見る見る内に干からびて行く。
干からびるとミイラになって骨と皮だけに変わり果ててしまった。
血を吸うって事は吸血鬼かよ──。
黒ずくめの男達は用が済むと滅茶苦茶な店内から出て行った。
店内に残っているのは、元御客と元店員さんのカラッカラに干からびたミイラだけだ。
厨房を覗きに行こうか??
セロフィート
「 マオ、随分と上達しましたね。
集中力を途中で切らすのは良くなかったです 」
マオ
「 仕方無いだろ~~。
子供が目の前で嫁にするって言ってた女の子の首を飛ばしたんだぞ!!
然も、血を美味そうに啜ってた──。
感情的にもなるだろ!
それにしても、この惨状はどうするんだよ…… 」
セロフィート
「 〈 テフ 〉 へ変換してしまえば良
この土地は《 セロッタ商会 》が頂いてしまいましょう 」
マオ
「 ちゃっかりしてるな……。
でもさ、そんな事をしてさ
セロフィート
「 マオ、ワタシのキノコン達が吸血鬼
返り討ちです。
キノコン達の食糧として捕獲させても良
マオ
「 セロ……呉
セロフィート
「 はて?
そんな面白い事、キンコン達にさせたりしませんけど? 」
マオ
「 面白がったら駄目だろ……。
この敷地内に入
セロフィート
「 マオは注文が多いです。
まぁ、良
今回はマオに免
マオ
「 有
何
セロは滅茶苦茶にされたパン屋を〈 テ
更地になった場所に真
古代
マオ
「 スイーツ店か。
【 キノコン処
セロフィート
「 この店舗ではセノコン,マオキノがネット販売をしていた懐
新聞に広告を入
チラシを持参したセロカ会員には、開店記念品の紅白饅頭を渡します 」
マオ
「 会員向けのサービスかよ。
会員じゃない御客には登録してもらって、セロカ会員を増やすって魂胆か 」
セロフィート
「 会員費として毎月500円を自動徴収してますから、会員が多ければ多い程
どんどん増やして稼ぎましょう 」
マオ
「 そだな……。
でもさ、ネット通販でしか買えなかったスイーツが買える店舗が開店したら、行列も凄いだろうな 」
セロフィート
「 開店記念の1週間は5倍P
カード払
1万円単位で現金
現金
1スタンプのレシートを集め、スタンプギフトの中から好きな景品と交換する事が出来る様
マオ
「 スタンプギフトぉ??
また新しい企画を始めるのかよ? 」
セロフィート
「 来店された御客にスタンプギフトのパンフレットを渡します。
スタンプギフトに興味を持った御客にはスタンプギフトのカタログをP
マオ
「 カタログの中から欲しい商品を見付けてもらって、必要な枚数のスタンプレシートを集めてもらうのか 」
セロフィート
「 スタンプレシートは1枚で100円の価値が有ります。
年数が同じでなければ使えない様
マオ
「 年数が同じ?
どゆことだよ? 」
セロフィート
「 1枚100円のスタンプレシートを30枚集めてスタンプギフトを頼むとします。
30枚中29枚の年数が2105年でも1枚の年数が2104年ならば、応募しても無効となります。
2105年のスタンプレシートは、年内の2105年でしか使えません。
2106年に変わると2105年のスタンプレシートは1枚も使えなくなります 」
マオ
「 マジかよ……。
何
年内中に使わないとゴミになっちゃうなんて勿体無いんじゃないか? 」
セロフィート
「 使用期限の切れたスタンプレシートを店舗へ持参し、キャンペーン台紙へ貼り付けて専用の受付へ出すとキャンペーン企画のスイーツと交換出来るサービスも展開します 」
マオ
「 スタンプレシートはゴミにはならない訳か。
台紙の枚数で非売品の品
セロフィート
「 そうですね。
スイーツ店ですし、交換するスイーツの種類が変わります。
商品化前の試作品です。
人気の多い試作品なら商品化する可能性も有ります 」
マオ
「 一寸
セロフィート
「 この店舗はキノコンと戦闘用〈 器
マオはワタシとデートの続きです 」
マオ
「 デート……。
あんな衝撃的な事が起きた後
セロフィート
「 もっと褒めてください♪
行きましょう 」
マオ
「 お、おぅ…… 」
とは言え、最後のパン屋だったんだけどな~~。
セロは何