⭕ 呪物クリアランス 2
◎ 訂正しました。
そろそろ助けぇ~~~~ ─→ そろそろ助けてぇ~~~~
幻夢さんさんも相当だよな……。─→ 幻夢さんも相当だよな……。
春麗
「 さてと──、これだけの呪箱を全部確認するのは流石に骨が折れるな 」
マオ
「 ………………何か気分が悪くなって来たな……。
──ん?
シュンシュン、これも呪物なのか?
他のと違う感じがするんだけど── 」
春麗
「 あぁ……それは、呪物の一種だな 」
マオ
「 じゅもつ??
呪物と何が違うんだ? 」
春麗
「 呪物は捧げ物──供物みたいなもんさ。
呪いの成就を願い祈願する場合に、お供えする品──供物を “ 呪物 ” と呼んで区別しているんだ。
呪いの成就を祈願する為に呪物を捧げる相手は、神佛じゃなくて、災厄を招くと言われている鬼神や悪鬼,魑魅魍魎の類いだからな 」
マオ
「 へ…へぇ……。
じゃあ、この呪物は鬼神や悪鬼,魑魅魍魎の類いに供えられてたんだな……。
そんなのを持って来て、大丈夫なのか?
祟られたりしないのかな? 」
春麗
「 セロフィートが “ 祟りは無い ” って言ってただろ。
“ 祟り ” って言葉は人間の都合で勝手に付けられた呼び名だ。
“ 呪い ” だって同じさ。
それっぽい名前を付ければ、イメージもし易いからな。
それに “ 祟り ” や “ 呪い ” って呼ばれる現象ってのは、ボロ儲けするのに利用し易いんだ。
稼ぐには実に都合の良い言葉なんだぞ 」
マオ
「 オカルト業界って確かに儲かってるし、潤ってるもんな 」
春麗
「 異形の類い,怪異の類い,霊的存在の類いが事件,事故っていう不可思議な問題を起こして、人間の不安感を煽ってくれてるお蔭さ!
持ちつ持たれつな関係ってヤツだな 」
マオ
「 …………人間は何でも儲けられる商売と結び付けたがるもんな。
逞しいよ… 」
春麗
「 金に目が眩み易くて欲深いだけさ。
生き残る為には多少がめつくないと難しいのさ。
生存本能の一種だよ 」
マオ
「 上手い事、言うなぁ~~ 」
春麗
「 さて──、手始めに先ずは大した事のなさそうな呪箱から片付けて行くとするか 」
マオ
「 “ 大した事のないの ” って、どうやって分かるんだ?
調べ方でも有るのか? 」
春麗
「 マオ──。
何度も言ってるが、僕は凄い陰陽師なんだ。
問題無い。
黙って見とけよ 」
シュンシュンは悪戯っ子の様な顔でニッと笑うと人の形をした紙を取り出した。
マオ
「 シュンシュン、それは?
御札とは違うんだな 」
春麗
「 これは “ 形代 ” と呼ばれている人の形を模した人形さ。
作るのが面倒だから、あまり使いたくはないんだが──。
この形代をマオの身代わりとして使う 」
マオ
「 オレの身代わり?? 」
春麗
「 そうさ。
マオ、形代に血を付けるんだ。
全部にだぞ 」
マオ
「 えぇ゛っ?!
オレの血が要るのか? 」
春麗
「 形代ってのは、そうゆうもんなんだよ。
ほら、ナイフは貸してやるから指でも切って血を付けてくれ 」
マオ
「 …………………………シュンシュンの血じゃ駄目かな? 」
春麗
「 駄目に決まってるだろが!
マオに憑いてるソイツを祓う為にやってるんだぞ。
僕の血を使ってどうする 」
気が進まないけど、オレはシュンシュンの言う通りにする事にした。
シュンシュンから折り畳み式の果物ナイフを借りて、人差し指を軽く切る。
シュンシュンが出してくれた真っ白い形代の胸元辺りに血が出ている人差し指を押し付けて、血を付けて行く。
マオ
「 ふぅ…………。
やっと終わったな。
傷が直ぐ治るから何度も切らないといけないのが大変だな…… 」
春麗
「 これで形代はマオと繋がり、身代わりとなった。
次に1枚ずつ呪箱に張り付けて行く──。
ほら、ボサッと見てないでマオも手伝えよ 」
マオ
「 お、おぅ── 」
オレはシュンシュンと一緒に呪箱の上に形代を貼る作業を手伝った。
「 黙って見とけよ 」って言ったクセに手伝わせるんだもんな~~。
大した性格してるよ!
マオ
「 ──シュンシュン、貼り終わったけど、どうするんだ? 」
春麗
「 呪箱に纏わり憑いてる呪いを形代へ移行させるんだ。
呪いが移行し終わると形代は燃えて塵と化す。
始めるぞ 」
シュンシュンは顔の前に指を出すと、陰陽師が呪文みないなのを唱える時と同じポーズを取る。
一寸格好良かったりするんだよな。
オレも陰陽師のコスプレして、シュンシュンの真似でもしてみようかな?
今度は女装じゃなくてな!
シュンシュンは指を動かして印を切ったりはしない。
シュンシュンくらいの凄い陰陽師になると、一々印を切る様な仕草は必要無くなるらしい。
呪文(?)を唱えているシュンシュンは真剣で、ちゃんとした陰陽師に見える。
普段の姿からは想像も付かない。
シュンシュンが呪文(?)を唱え終えると呪箱に貼っていた形代が淡く光始めた。
マオ
「 ──いたっ?!
急にどうしたんだ?? 」
──と同時に、オレは針を刺される様な痛みを感じ始めた。
まるで全身をチクチクと鋭い針で刺される様な感覚だ。
マオ
「 いたたたたたっ?!
ちょっ──シュンシュン!
これはどういう事だよ!
何で急に身体に痛みが── 」
春麗
「 何言ってんだよ。
マオの身代わりとして使ってるんぞ。
これだけの数が有るんだ、痛みを感じるのは当たり前だろ。
死なないんだから少しくらい我慢しろ 」
マオ
「 “ 痛みを感じる ” なんて一言も聞いてないんだけどぉ!
いだだだだだだ──!! 」
春麗
「 教えたら断ると思って黙ってたんだ。
安心しろよ、“ 痛みを感じてる ” って事はだ、ちゃんと “ 効果が出てる ” って事だからな。
確実に呪いは形代へと移行している証拠だ。
流石は僕だな! 」
マオ
「 ちゃんと言えよぉ!!
後出しはセロだけで十分だよ!!
痛い痛い痛い痛い痛いぃ~~~~!! 」
春麗
「 大丈夫だ、マオ。
痛みに慣れれば嘘みたいに心地好くなるもんさ。
形代が塵と化す迄、頑張れ! 」
マオ
「 シュンシュン!
後で覚えてろよぉ!
いだだだだだだっ!! 」
オレは徐々に増して来る痛みにひたすら耐えるしかなかった。
シュンシュンめぇ~~!!
後でセロにチクってやるんだからなぁ~~~~!!!!
春麗
「 おかしいな……。
1枚も塵と化さないぞ。
所詮は安物の形代か。
マオだからケチってみたけど、失敗だったな── 」
マオ
「 シュンシュン!
“ ケチった ” って、どゆことだよぉ!! 」
春麗
「 言葉のままだ。
形代は作るのに手間と時間が掛かるんだ。
その分、値段も高い。
無駄な出費を出したくなかったから安物──失敗作を使ってみたんだ 」
マオ
「 オレ、シュンシュンの主人だよな?
主人に失敗作の形代を使うのかよぉ!! 」
春麗
「 良いだろ別に。
お前と僕の仲じゃないか。
兄弟だろ、大目に見てくれよ、兄さん★ 」
マオ
「 くぅ~~~~!!
大目に見たくないぃ~~~~!! 」
春麗
「 どうだ、痛みが快感に変わって来てるだろ? 」
マオ
「 変わるかぁ~~~~!! 」
オレは更に痛みに耐え続けていた。
チクチクだった痛みがグサグサな痛みに増している。
早く痛みから解放されたい──。
マオ
「 ………………幻夢さん…………そろそろ助けてぇ~~~~ 」
春麗
「 コラ、マオ!
僕が居るのに幻夢を頼るのか!
全く、けしからん主人だな! 」
???
「 ── “ けしからん ” のは君の方でしょう、霄囹──。
これだから中途半端な闇呪術は── 」
マオ
「 げ…幻夢さぁん!!
シュンシュンの所為で身体中が痛いんだ──。
何とかならないかな? 」
獅聖幻夢
「 直ぐに痛みから解放して差し上げます、マオ殿 」
そう言った幻夢さんは、シュンシュンと同様に形代を袖の中から取り出すとシュンシュンの形代の上に貼って行く。
全身の痛みが少しずつ消えて行くのが分かった。
マオ
「 嘘みたいに痛みが消えた!?
何でだ?
シュンシュンと同じ形代を使ってるのに── 」
獅聖幻夢
「 同じ形代ではないですよ、マオ殿。
私は霄囹の様に失敗作の形代を使ったりしません 」
春麗
「 フン! 」
獅聖幻夢
「 私の使った形代には文字を書き入れています。
文字には犯罪者から抜き取った血液を使っています 」
マオ
「 犯罪者の血液??
どゆこと?? 」
獅聖幻夢
「 闇呪術で使う墨は、血液を混ぜて使うのです。
普通の墨を使うより、血液を混ぜた墨の方が効き目が高いんです。
因みに血液の主は既に死んでますから、マオ殿が痛みを感じる事は無くなります 」
マオ
「 更にどゆこと?!
でも何で犯罪者から血液を抜いてるの? 」
獅聖幻夢
「 善良な一般市民を使う事は、マオ殿が嫌うでしょう?
善良な一般市民から外れた犯罪者ならば良いかと思いまして。
いけませんでしたか? 」
マオ
「 ……………………善良な一般市民を拉致るよりは良いと思うよ? 」
獅聖幻夢
「 ではこれからも犯罪者から血液を抜き続けますね 」
幻夢さんは嬉しそうに微笑んでいる。
幻夢さんも相当だよな……。
人間に対して一切の慈悲心も容赦も無い。
流石はセロと肩を並べる程の危険人物なだけはあるぅ~~。
幻夢さんが貼り付けた形代には赤色で一文字が書かれている。
意味は分からない。
陰陽師が使う文字かな?
マオ
「 幻夢さん、形代に書いてある文字って何の意味が有るの? 」
獅聖幻夢
「 この文字には形代を丈夫にする効果と吸引力を高める効果が有ります。
呪箱の呪いを吸引していると色が黒く変色して来ます。
変色した後は燃えて無くなります 」
マオ
「 やっぱり燃えちゃうんだ?
吸引しきれない呪いはどうするの? 」
獅聖幻夢
「 同じ形代を貼ります。
呪いが完全に無くなる迄、吸引し続ける事になります 」
マオ
「 それって時間が掛かりそうだね 」
獅聖幻夢
「 そうでもないですよ。
大抵は1枚で済みます。
数枚使う必要のある呪箱には初めから御札を使います 」
マオ
「 そうなの?
形代より御札の方が上なんだ? 」
獅聖幻夢
「 私の使う形代と御札の場合になります──。
霄囹の場合に関しては分かりません 」
マオ
「 シュンシュンが “ ケチらなければ ” 似た様な効き目かも知れないよな? 」
春麗
「 僕は幻夢程、太っ腹じゃないからな。
ケチれる所はトコトンケチるぞ!
やり方を変える気は無い! 」
マオ
「 シュンシュンもブレないよな……。
芯が強いって言うか── 」
獅聖幻夢
「 テーブルの上に置かれている呪箱が今回の対象なのですね。
呪物も混同している様ですね。
先ずは仕分けましょう。
複製呪靈に作業をさせます。
マオ殿は呪箱に触れない様に気を付けてください 」
マオ
「 うん。
分かったよ 」
幻夢さんの影から、幻夢さんと瓜2つの容姿をした複製呪靈が現れた。
どうやら何処に居ても直ぐに呼び出せる様にしているみたいだ。
でも何で自分と同じ姿にしたんだろう??
複製呪靈がテキパキと動いてテーブルの上に置かれている呪箱を仕分けしてくれる。
仕分けられた呪箱は、シュンシュンと幻夢さんが手分けをして、形代や御札を貼っては呪いを吸引してくれている。
春麗
「 ──さて、問題なのは呪物だな。
呪物に纏わり憑いてる呪いを吸引するのは至難の業だぞ 」
マオ
「 何でだ? 」
春麗
「 呪物には、呪いの成就を願う強い想いが込められといるからだ。
供物だと教えただろ。
呪具,呪物なんてのは、依頼を受けた陰陽師がアルバイト感覚で作って渡すのが一般的だから、大して “ 想い ” なんてもんは入ってないんだ。
独学で作る強者も居るが、所詮は素人が見よう見真似で作った呪具,呪物の効力なんてたかが知れてる。
呪物は供えていた対象が居る分、厄介なんだ 」
獅聖幻夢
「 それも私達の故郷ではの話です。
此方でも通用するかは分かりません。
厄介である事は確かですし、扱いにも注意する必要が有ります。
時間の掛かる代物です 」
春麗
「 要は後回し──、保留って事だな。
先に式鬼に衛られていた呪箱に取り掛かろう 」
獅聖幻夢
「 式鬼に衛らせていた呪箱ですか。
それは中身も期待が出来そうですね 」
幻夢さんが嬉しそうにウキウキしてるぅ~~。
オレは何が入ってるのか不安で仕方無いのに……。
春麗
「 マオ、顔色が悪そうだな。
特等席で見せてやるから此方へ来いよ 」
マオ
「 労りの言葉がほしいんだけどな! 」
春麗
「 特等席だぞ。
十分に労ってるじゃないかよ 」
シュンシュンは首を傾げてオレを見ている。
シュンシュンの言う “ 労い ” は明らかにズレてるって事が分かった──。
◎ 変更しました。
春舂霄囹:春麗 ─→ 春麗