✒ 禁じられた❌❌❌ 14
獅聖幻夢
「 ──御札が剥がれます。
開けても大丈夫ですよ 」
幻夢さんが言う通り、御札は箱から剥がれると、黒い炎に包まれながらチリチリと燃え尽きてしまった。
マオ
「 凄いな!
今、勝手に燃えちゃったよ! 」
獅聖幻夢
「 使い捨ての御札ですから。
紐を解いて開けますね 」
霄囹
「 僕なら燃えない様に作って、呪いを掛けた相手に返してやるんだけどな! 」
マオ
「 呪いを返すって言っても随分と古いじゃんか。
子孫が生きてるとは限らないんじゃないか?
身に覚えの無い大昔の先祖が掛けた呪いを受けるなんて、可哀想だしさ…… 」
霄囹
「 マオ、呪いは一族総出の連帯責任なんだ。
呪った一族の子孫として産まれたって事はだ、無関係じゃないって事だ。
同じ因縁を持ってるから、同じ因縁の一族の子供として産まれるんだよ。
雀は雀,烏は烏,蛇は蛇,鹿は鹿の伴侶を得るだろうが。
天地が引っくり返ったって雀には蛇の子供は産めないんだよ。
それが自然の摂理なんだ。
同じ因縁を背負った者同士が家族になるのは自然の流れなんだよ 」
マオ
「 他人に呪いを掛けた悪い先祖の子孫に産まれたのは、その悪い先祖と同じ因縁を持ってるから──、返って来た呪いに苦しむ事になっても甘んじて受け入れろって?
諦めて泣き寝入りしろって言うのか? 」
霄囹
「 そう言う事だ。
善を積むチャンスを無駄にして、功德を貯めなかった前世の自分に文句を言うんだな!
功德の貯金が無いと先祖の恩も受けられないんだ。
いやはや世知辛いねぇ…… 」
獅聖幻夢
「 霄囹、それはセロフィート殿からの受け売りでしょうに 」
霄囹
「 煩いなっ!
良いだろ、別に! 」
マオ
「 シュンシュン…… 」
霄囹
「 そんな目で僕を見るんじゃない! 」
シュンシュンは腕組みをして拗ねている。
姿に似合わず、子供だなぁ~~。
獅聖幻夢
「 ──上蓋を取りますね 」
マオ
「 何が入ってるんだろう?? 」
霄囹
「 宝箱みたいにワクワクするだろ? 」
マオ
「 …………認めたくないけど、怖いもの見たさは否定出来ないな…… 」
幻夢さんは小汚ない箱の上蓋を外して開けてくれる。
箱の中に入っていたのは────。
マオ
「 ………………何これ??
何か動いてないか?? 」
獅聖幻夢
「 これは──、小動物の脳ミソでしょうか。
針が沢山刺されていますね 」
霄囹
「 良い趣味してるじゃないか。
脳ミソと針を使うなんて、余っ程憎い相手だったんだろうな 」
マオ
「 悪趣味の間違いだろ…… 」
獅聖幻夢
「 この針には文字が書かれていますね。
1本1本、丁寧に書かれている様です。
見事な物です 」
霄囹
「 抜いても大丈夫なんだろ? 」
とか言いつつシュンシュンは幻夢さんが言葉を発する前に脳ミソに刺さっている針を素手で抜き始めている。
マオ
「 シュンシュン、素手で触って大丈夫なのかよ? 」
霄囹
「 問題ない。
呪いは僕の専門分野だぞ!
──確かに見事な呪紋だな。
こんな細い針に呪紋を書くなんて、明らかに正気じゃないな 」
獅聖幻夢
「 霄囹、1人占めは良くないですよ。
均等に分けましょう 」
霄囹
「 分かったよ! 」
幻夢さんも針が欲しいんだ?
シュンシュンは仕方無さそうに針を分けている。
小動物の脳ミソに刺してあった針が欲しいなんて、2人も正気の沙汰じゃないと思うけど、言わないでおこう。
獅聖幻夢
「 私ならもっと高品質な呪具を作れます 」
幻夢さんは針をマジマジと見ながら笑顔で言ってくれるけど、オレは何て言い返したら良いんだろうな?
霄囹
「 マオが引いてるぞぉ~~ 」
マオ
「 ちょっ──、シュンシュン!! 」
獅聖幻夢
「 どうやら今回の呪具も外れの様ですね 」
なんて言いながら幻夢さんは小動物の脳ミソを素手で触って持ち上げる。
マオ
「 げ…幻夢さん──!?
素手で触って大丈夫なの?? 」
獅聖幻夢
「 大丈夫ですよ。
呪いは専門分野ですから♪
脳ミソの割りに重いですね。
何かが中に入っている様です 」
マオ
「 脳ミソの中??
入れれるもんなの?? 」
獅聖幻夢
「 見ていてください 」
そう言いながら幻夢さんは、まるでパンを千切るかの様に脳ミソを半分に千切った。
半分に割れた脳ミソの中からは血塗れの小動物の死体が出て来た。
小動物の死体はテーブルの上に、ぼてっ──と落ちた。
霄囹
「 これは──鼠だ。
酷い事をするな。
見ろよ、腹に縫った痕が有るだろ。
臓器を抜いて何かを入れてるんだ 」
マオ
「 “ 何か ” って何だよ……?? 」
獅聖幻夢
「 鼠のサイズから考えれば──、子鼠か蟲でしょうね 」
マオ
「 ……………………小動物の脳ミソの中に鼠が入ってて、鼠の中にも “ 何か ” が入ってる…………。
これを作った人は誰を呪ったんだろう…… 」
霄囹
「 マオ、違うぞ。
呪物を依頼したんだよ。
こんな代物は知識の無い素人には作れないからな。
誰を呪ったのかは分からないが、身分の高い奴が依頼したって事は分かるぞ。
呪物は高額だからな 」
獅聖幻夢
「 その通りです。
この様に手の込んだ呪物は貴族しか買えません 」
マオ
「 貴族……。
手が込んでる──って、脳ミソの中に鼠が入ってたから? 」
霄囹
「 いや、使用してる針の数だよ。
20本も有るんだ。
僕と幻夢で10本ずつだからな! 」
獅聖幻夢
「 20本全ての針には丁寧に呪紋が書かれています。
これは相当、大変な苦労をしたと思います 」
マオ
「 呪物を作る人ってのは、やっぱり報酬の為に作るのか? 」
霄囹
「 当たり前だろ。
小遣い稼ぎのアルバイト──副業だって、教えた事が有るだろ?
呪具や呪物は簡単には作れないし、1人でも作れないから、何人か仲間を募って作るのが一般的なんだ。
報酬は当然、山分けな。
1人で余裕に作れる僕には、この呪物に複数の陰陽師が手を加えているのが分かるんだぞ。
先ずは、依頼主から使い道を聞いて、どんな呪物を作るべきかを陰陽師同士で相談し合いながら作るんだ 」
獅聖幻夢
「 ──とは言ってもあくまで私達の故郷での方法です。
≪ 日本国 ≫での方法は分かりません 」
霄囹
「 確かにな。
良し、鼠の腹を開けてみるか! 」
獅聖幻夢
「 そうですね!
何を入れているのか私も気になります♪ 」
シュンシュンと幻夢さんは、御互い呪いに関して詳しいから、呪具や呪物を前にすると不思議と気が合うらしい。
もう、師弟関係になっちゃえよ!!
仲良しさんめぇ!!
シュンシュンが狩衣の中から小道具を取り出す。
まるで持ち運び様の一寸した裁縫道具みたいな感じだ。
シュンシュンはメスみたいな鋭いナイフを取り出すと、鼠の腹を切り始めた。
鋭いナイフを器用に使って、鼠の腹の中に入っている “ 何か ” を丁寧に出している。
手慣れてるのは、実験中に何度も似たような事をしてるからかな?
獅聖幻夢
「 これは──、やはり蟲でしたか 」
マオ
「 ネチョネチョのグチョグチョじゃないか!
気持ち悪いっ!! 」
霄囹
「 へぇ~~。
色んな蟲を混ぜて入れたんだな。
面白い事を考えるじゃないか 」
獅聖幻夢
「 霄囹──、御札が入っている様です 」
霄囹
「 あぁ、コレだろ。
何かを御札で包んでるんだろ 」
マオ
「 未だ中に入ってるのかよ…… 」
霄囹
「 御札を広げるぞ。
その前にマオ──、幻夢の後ろに移動しろ。
両手が塞がってる僕じゃ、お前を守れないからな 」
マオ
「 分かったよ 」
オレは素直に幻夢さんの後ろに移動する。
オレが移動し終わるのを確認したシュンシュンは、“ 何か ” を包んでいる御札を開き始めた。
◎ 変更しました。
春舂霄囹 ─→ 霄囹