⭕ 巻きますか? 巻きませんか? 2
「 オルゴール??
このトランクって、オルゴールなのか? 」
[ マフラーを巻いてくれて有り難う。トランクを開けてください ]
「 はっ?
マフラー??
マフラーなんて巻いてないけど?? 」
[ つべこべ言わず、トランクを開けてください ]
「 何かイラッとするぅ~~。
開ければ良いんだろ!
全く、色々と失礼な音声だな! 」
左右に付いている留め具を上に上げて──というか、留め具で開かない様にしてるのに態々鍵を差し込んで巻く意味が有ったのかよ?
分からん……。
何気無くトランクの上蓋を上に上げると、パァン──というクラッカーの音が響いた。
トランクの中からクラッカーのリボンが出て来たと思ったら、恐い顔をしたババァの顔が飛び出て来たぁ!!!!
「 うぎゃぁぁぁぁぁぁあああああ!!!! 」
驚いたオレは思わず悲鳴を上げてしまい、床に尻餅を付いてしまった。
トランクの中から出て来たババァは上下,左右に揺れている。
「 ど…………どゆことだよ!? 」
尻餅を付いた状態でオレは暫く放心状態だった。
「 引っ掛かったな、マオ! 」
「 その声は──、シュンシュン!!
どういう事だよ、『 引っ掛かった 』って、何だよ!? 」
「 フッフ~~ン!
どうだよ、中々迫力が有るだろ? 」
「 だから、何だよ!
説明てくれないと分からないだろ! 」
「 これはハロウィンに向けて販売する予定のビックリ箱──の試作品なんだ! 」
「 はぁぁぁぁあ!?
ビックリ箱ぉ??
トランクじゃないかよ! 」
「 そうさ!
革製の上質なトランク風のビックリ箱なのさ!
ちょいリッチなハロウィングッズだ 」
「 ハロウィングッズ…… 」
「 稀代の少年陰陽師・春舂霄囹完全監修のオカルトグッズの新商品!!
ハロウィン編ってヤツさ。
革製のトランクとボタンと鍵は何度でも使い回せる仕様にしてある。
クラッカーと中に設置する人形は付け替えが可能になってるんだ。
今回、使ったのは妖怪の砂かけババァだよ 」
「 砂かけババァ…………。
そ……そう言えば……見た事が有る様な…… 」
「 先月、“ ゲゲゲ◯鬼太郎 ” ってアニメを見せてやったろ。
コラボ作品さ! 」
「 あ、あぁ……確か “ 夢子ちゃん ” って名前のアニメオリジナルの子が出て来たアレかぁ!
最後の最後で鬼◯郎が人間を殴って、視聴者が大炎上したって言う── 」
「 お前、内容は忘れてるのに問題になった事は覚えてるんだな 」
「 夢子ちゃんに出したラブレターの返事は来たのか? 」
「 それは忘れろ!
抑ラブレターじゃない! 」
「 それにしても、良くコラボしてくれたな? 」
「 フフン!
僕の熱烈なラブコールが彼等の心を動かしたのさ! 」
「 やっぱラブレターじゃないかよ 」
「 ラブレターじゃない!
今年の5月から、コラボ映画のアフレコも始まるんだ。
キャラクターに命を吹き込む歴代の声優達と並んで僕もアフレコに参加するんだ!!
夢子ちゃんの声優さんにも会えるんだぞ! 」
「 ………………中の人は御年配の── 」
「 黙れ 」
「 だってさ、シュンシュンに見せてもらったのって40年以上も前の作品だろ?
当時、20代だったとしても60代 ~ 70代になってるじゃん。
声の似てる若い声優さんに交代してるかも知れないし? 」
「 言うな!
僕の楽しみに水を差すんじゃない! 」
「 コラボ映画かぁ……。
シュンシュンは当然、悪役の陰陽師として登場するんだよな? 」
「 お前は何で僕を悪役にしたがるんだよ!
まぁ……初めは敵役として出るけど…… 」
「 そうなんだ。
ハロウィングッズの作成にアフレコか。
相変わらず、忙しそうだな 」
「 まぁな!
会員特典の第1弾として、セロカ会員が劇場版の前売り券を買うと非売品限定キーホルダーが貰えるんだ。
鬼◯郎と僕がペアのイラストが描かれたキーホルダーだぞ。
マオも前売り券を買えよ! 」
「 ちゃっかり宣伝してるしなぁ~~。
じゃあさ、砂かけババァ以外にも種類は有るんだ? 」
「 あぁ、用意してるよ。
劇場版が公開されるのはハロウィン明けの11月だからな、会員特典の第2弾でセロカ会員が新発売のハロウィングッズを買うと映画公開前日に無料クーポンが送信されるんだ。
非売品限定パッケージの容器に入ったポップコーンと飲み物を持って劇場版を楽しめるって訳だ。
何度でも使い回しが出来る容器だぞ 」
「 会員特典か…。
他には無いのか? 」
「 前売り券も新発売のハロウィングッズもセロカ会員向けだからな、非売品限定グッズが欲しければ、セロカ会員の登録をしないとだな。
前売り券と無料クーポンを入り口で見せると非売品限定の水に流せるポケットティッシュ6個入りも貰えるぞ。
ネ◯アの鼻セレブティッシュをとコラボした高級ポケットティッシュ仕様だ 」
「 水に流せる高級セレブティッシュ──。
なんか凄いな! 」
「 後は鬼◯郎の聖地で開催される囲碁大会だな。
初心者の参加も大歓迎で、囲碁大会に参加したセロカ会員には大会への参加特典として非売品の限定キーホルダーが貰える。
此方は鬼◯郎とキノコンがペアのイラストが描かれたキーホルダーだ。
囲碁大会への参加費は大人1.000円,子供500円だが──、セロカ会員だと大人500円,子供は無料で参加する事が出来るんだ 」
「 へ、へぇ……。
セロカ会員ファーストだな 」
「 会員を増やす為のイベントでも有るからな。
会員が増えれば、増える程、ガッポリ出来るんだ。
そりゃ増やすだろ 」
「 まぁ、そうだよな……。
特典でも付けないと会員なんて増えないよな、今の御時世は! 」
「 そうそう、囲碁大会には玄武,弓弦,幻夢が友情出演してイベントを盛り上げるんだと。
3人共プロより強いからさ、大会は大盛り上がりするんじゃないか? 」
「 えっ、オレは何にも聞いてないけど!? 」
「 マオは僕と一緒に子供を相手に指導碁を打つ事になってるぞ。
セロフィートの奴、前日か当日に教えてサプライズするつもりなんじゃないのか~~? 」
「 そうなのかな?
セロめぇ!!
会ったら問い質してやるぅ!! 」
「 対局した子供には非売品の記念ステッカーを渡す事になってるんだ。
鬼◯郎,セロカ君,僕とキノコンのイラストが描かれてるんだ。
好評だったら来年から町お越しイベントとして継続される予定だってさ。
劇場版も人気があれば、アニメ化の復活もするかも知れないぞ 」
「 アニメ化の復活ぅ?
そう言えば、夢子ちゃんが登場した “ ゲゲゲ◯鬼太郎 ” が最終回した後も、何回か再リメイクされてアニメ化してたんだっけ? 」
「 そうなんだ!
僕は夢子の出ない鬼◯郎を見るつもりはないが、猫娘が可愛くなってる鬼◯郎は見ても良いと思ってるんだ 」
「 へぇ~~~~。
夢子ちゃんを呼び捨てといて、可愛くなった猫娘に鞍替えするんだ?
流石シュンシュンだな。
手癖の悪い浮気者だな~~ 」
「 浮気じゃない!
断じて浮気じゃないぞ! 」
「 えぇ~~認めないのかよ…… 」
「 ──兎に角だ、トランクの中に設置するビックリ人形の種類は豊富に取り揃えられているんだ。
ハロウィンに登場するキャラクターだけじゃなく、ホラー映画に登場したジ◯イソン,フレデ◯,イ◯トのピエロとか──、選びたい放題だぞ!
セロカ会員限定のネット販売になるけどな 」
「 そう言えば、《 セロッタ商会 》の本部って何処に在るんだろうな?
オレ、全然知らないんだよな 」
「 何言ってるんだよ。
裏野ハイツの地下室が《 セロッタ商会 》の本部になってるじゃないかよ。
何で知らないのか逆に不思議だよ…… 」
「 えっ、マジで!?
セロから何も聞いてないんだけどぉ! 」
「 いや、先ずはマオから聞く様にしろ。
聞いたら普通に教えてくれるって。
聞かなくても親切に教える様な奴かよ、セロフィートが! 」
「 た、確かに……。
そうかも知れない…… 」
「 だろ?
次からは気になった事が有ったら遠慮せずに聞いた方が良いぞ 」
「 そ、そうだな。
次からそうするよ。
有り難なシュンシュン 」
「 良いって事よ!
因みにだ、居間にトランクを置いてからマオが驚く迄を動画に撮って有るからな。
それを編集して、《 セロッタ商会 》の公式HPでCM配信する予定だ。
マオの情けなくて笑える動画を全国のセロカ会員に視聴してもらえるぞ。
良かったな! 」
「 最低過ぎるぅ~~ 」
あの醜態を動画配信されて晒されるなんて最悪だぁ!!
「 動画配信を楽しみにしてろよ、マオ!
ア~~~ハッハッハッハッ!!!! 」
こうして、春舂霄囹の悪戯は大成功するのだった。