✒ 巻きますか? 巻きませんか? 1
◎ 今回は「 番外編 」を書いてみました。
書き方も昔風に戻してみました。
──*──*──*── 東京都米●市米●町米●横丁
──*──*──*── 犯罪天国都市・米●町
──*──*──*── 裏野ハイツ
──*──*──*── 102号室
──*──*──*── 1階・リビング
起床して1階の居間へ降りたら、見慣れないトランクが置かれていた。
かなり立派なトランクで、旅行用に使われる革製のトランクみたいだ。
昔の海外ドラマで使われてる様な革製のトランクって言えば分かるかな??
「 誰のだろう?
………………セロのかな? 」
気にはなるけど、セロの私物だったら触らないのが正解だ。
随分と前だけど、無断で旅行用バッグを開けたらセロのペット──〈 合成獣 〉が飛び出て来た事があって──、旅行用バッグの中に引き摺り込まれて大変な目に遇った事がある。
もしかしたら今回も革製のトランクの中が〈 創造主の館 〉の中庭と繋がっているかも知れない。
もし仮にもそうだとしたら、とんでもなくピンチで悲惨な目に遇う事になるって決まってる!!
〈 合成獣 〉達は可愛い。
オレと仲良くしてくれるし、親切だし、親しみも有るけど、元気過ぎてパワフル過ぎる。
一緒に遊んだりしたら、オレはズタボロなボロ雑巾に早変わりしてしまうんだ。
うん、近付かないのが吉!
触らないのが吉!
知らん顔するに限る!!
そう、居間には革製のトランク何て物は置かれていないし、存在すらしていないんだ!!
オレの視界には何も見えてないんだ!!
そんな訳で、知らん顔して革製のトランクの前を横切ろうとしたら、変なボタンが上から落ちて来た。
何で天井から変なボタンが落ちて来るんだよ??
どゆこと!?
ボタンは2つ付いていて、赤色と青色のボタンの上には文字が書かれている。
「 えぇと…………『 巻きますか? 巻きませんか? 』…………………………何だよ?
どゆことぉ?? 」
ボタンなんだから、『 押しますか? 押しませんか? 』じゃないのかよ??
分からーーーーんっ!!
ボタンの下には『 巻く 』と『 巻かない 』と書かれている。
取り敢えず、オレは無難な “ 巻かない ” を選んで青色のボタンをポチッと押した。
暫く待ってみたけど、何も起きないみたいだ。
「 良かった~~。
これで何か起きたら困るって! 」
オレはボタンを革製のトランクの上に置いた。
革製のトランクから離れ様としたら、ボタンから声が聞こえて来た。
[ 巻きますか? 巻きませんか? ]
…………………………喋るんかい!!
さっきボタンを押したからかな??
「 “ 巻かない ” に決まってるだろ~~ 」
オレはさっきと同様に青色ボタンを押した。
すると、ボタンから再度[ 巻きますか? 巻きませんか? ]と声がする。
どゆことだよ?!
青ボタンを押したのにボタンから声が出て来る!
オレは3度目となる青ボタンを押した。
すると、また[ 巻きますか? 巻きませんか? ]と声が出て来る。
3度も “ 巻かない ” の青ボタンを押したのに、どういう仕組み??
そんな訳で、オレは “ 巻く ” を選ぶ事なく、“ 巻かない ” の青ボタンを押しまくった。
[ 巻きますか? 巻きませんか? ]
「 もうぉ~~~~、何なんだよ!!
“ 巻かない ” って選んでるのにぃ!!
何だよぉ~~~~『 “ 巻く ” を選んで押せ 』って事かよ? 」
[ 正解です。とっとと赤ボタンを押してください ]
「 言葉が変わった!?
本当にどんな仕組みだよ?!
………………押したくないなぁ~~赤ボタン。
絶対に何か起きるに決まってるんだよ! 」
[ 早く赤ボタンを押してください。このチキン野郎 ]
「 罵り始めた!?
どうなってんだよ?! 」
[ 巻きますか? 巻きませんか? 巻きますか? 巻きませんか? 巻きますか? 巻きませんか? 巻きますか? 巻きませんか? 巻きますか? 巻きませんか? ]
「 あぁ~~~もぅ~~~しつこい!!
分かったよ!
“ 巻く ” を選べば良いんだろ!
赤ボタン、押すよ! 」
しつこい音声に根負けしたオレは、とうとう赤ボタンを押す事にした。
赤ボタンを押すと、パカッと上が開いた。
ボタンの中に入っていたのは、鍵──のつもりなのか、大きなゼンマイネジだ。
[ 鍵をトランクの鍵穴へ差し込んでください。右回りに巻いてください ]
「 鍵だった!
これをトランクの鍵穴に差し込んで巻く?
それで “ 巻く ” だったのかよ。
一々鍵穴に差す必要が有るなんて面倒だな…… 」
[ 鍵をトランクの鍵穴へ差し込んでください。右回りに巻いてください ]
「 催促してくるしぃ!
差すよ、差して回せば良いんだろ!
全く…… 」
オレはトランクの鍵穴に鍵を差し込んだ。
奥まで差し込むとカチャッて音がした。
引っ張ってみたら、抜けなくなっている。
そういう仕組みなのかな?
[ 鍵を右回りに巻いてください ]
「 はぁ……分かったよ!
ちゃんと巻くよ!
巻けば良いんだろ!
催促するなよ…… 」
一寸だけイライラしながら、オレは鍵を掴むと右回りに巻いた。
何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も──巻いてやったよ!!
「 どんだけ巻かせる気だよ!! 」
[ 後10回、巻いてください ]
「 未だ巻かせる気かよ…。
本当に10回で終わりなんだろうな? 」
[ 信じてください ]
「 ……………………はぁ……。
オレ…………その言葉に弱いんだよなぁ……。
………………セロじゃないよなぁ? 」
[ さっさと巻けよ、待たせんな ]
「 急に口調が変わった?!
セロじゃないんだ…… 」
オレは心の中で胸を撫で下ろして安堵した。
どうやらトランクはセロの私物ではないみたいだ。
良かったぁ~~(////)
鍵を10回、右回りに巻き終えるとトランクからオルゴールの音が流れて来た。