⭕ 禁じられた❌❌❌ 12
──*──*──*── 3月上旬
──*──*──*── 陰陽師4事務所
──*──*──*── 1階・ランチルーム
マオ
「 呪物ぅ??
呪具と何が違うんだ? 」
霄囹
「 呪具は道具だ。
呪術を施した道具な。
このスプーンに呪術を込めれば、呪具に早変わりだ 」
マオ
「 へぇ?
呪具ってのは案外と簡単に作れちゃうもんなんだな 」
獅聖幻夢
「 マオ殿、それは違います。
本来の呪具は1人では作れない危険物です。
呪術を何十にも重ね、慎重に作る物です。
私達は1人で簡単に作れてしまいますけど、人間が作るには、大勢の術者が関わる事になります。
目的に依っては呪いの強さも異なりますから調整も難しいのです 」
マオ
「 幻夢さん、詳しいね。
もしかして作った事が有るの? 」
獅聖幻夢
「 陰陽師なら誰でも1度は挑戦しますね。
陰陽師には好奇心の強い挑戦者が多いですから 」
マオ
「 そうなんだ…… 」
霄囹
「 僕も呪具なら小遣い稼ぎに作って売ってたな。
藁人形なんて、1番バカ売れしたよ。
大分稼がせてもらったんだぞ!
僕の作る藁人形は効果覿面だったからねぇ!! 」
マオ
「 シュンシュン…… 」
獅聖幻夢
「 確かに藁人形 は客受けが良かったですね。
私も資金集めに作っては売っていました 」
マオ
「 えぇ~~……幻夢さんも作ってたの?! 」
獅聖幻夢
「 藁人形は私が産まれる前から作られていました。
陰陽師ならば誰でも作れます。
藁を仕入れて人の型を模して作れば良いだけですから簡単に作れます。
最後に気持ち程度の “ おまじない ” をして完成です 」
マオ
「 おまじない? 」
霄囹
「 “ おまじない ” の効果は術者の法力に依って異なるんだ。
藁人形もピン ~ キリまで有ったんだぞ。
僕は “ 呪いが掛かり易い ” まじないを掛けていたんだ。
僕の作った藁人形は高額だったが、出世に目が眩んでた馬鹿な貴族が喜んで買ってくれてたんだよなぁ~~ 」
マオ
「 ………………そうなんだ…。
じゃあ、藁人形も呪具の一種なんだ? 」
獅聖幻夢
「 呪術を掛ければ、呪具となりますね。
“ おまじない ” は呪術とは違いますから、唯の藁人形として売買されていました。
人気のある陰陽師が作った藁人形は、効果が無くても売れていましたね 」
マオ
「 そ、そうなんだ…… 」
霄囹
「 呪具は高額だが、欲しがる輩は多かったんだぞ。
金を持ってる貴族は御得意様だったって訳だ 」
マオ
「 …………………………呪具の事は大体分かったけど、呪物は? 」
獅聖幻夢
「 呪物の中には呪具も入ります。
呪力を持った不可思議な物です。
人体の一部に呪いを掛けて直接呪いに使う場合も有ります 」
マオ
「 人体に呪いを掛ける? 」
霄囹
「 法力の高い術者の死体を調達して使うんだ。
髪の毛や目玉,指や爪とかに呪いを掛ける。
呪いの強さを上手く調整するのが難しいんだ。
出来上がった呪物を食わせたり、粉末にして飲ませたりすると姿を化け物に変える事だって出来るんだぞ 」
マオ
「 死体まで使うのかよ…… 」
獅聖幻夢
「 色んな陰陽師が居ましたからね。
本格的に呪物を専門にする陰陽師は、“ 呪物師 ” と呼ばれて区別されていましたね 」
マオ
「 そうなんだ…… 」
マオ
「 因みに死乃人も呪物の一種だからな!
僕が如何に凄くて偉大な陰陽師か分かるだろ! 」
マオ
「 そだな…… 」
霄囹
「 もしかしたら、暗殺された後の玄武の死体も呪物の実験に使われたかも知れないな。
魂を碁盤に憑依させて放置してた理由は知らないが──、何せ帝の血を継いでいた次期帝になっていたかも知れない男だった訳だろ。
死体だけでも利用価値は十分に有りそうだ 」
マオ
「 自分を暗殺した奴等に魂が抜けた死体を切り刻まれて弄ばれるなんて、最悪じゃんか…… 」
霄囹
「 可能性の話だ。
絶対って訳じゃないぞ 」
獅聖幻夢
「 玄武殿には黙っていた方が良いでしょうね。
気持ちの良い話ではありませんから 」
マオ
「 うん…………そうだよな。
玄武さんが弓弦さんと外出してて良かったよ 」
獅聖幻夢
「 キノコン殿達が “ とある心霊スポット ” から持ち帰って来た箱ですけど、呪具で間違いないと思います 」
霄囹
「 箱の中には呪物が入れられてるかもな。
一般的には呪具の中に呪具を入れたりはしないからな 」
マオ
「 ………………で、どうやって開けるんだ?
特殊な開け方でも有るのか? 」
獅聖幻夢
「 鍵穴が付いていますから、箱に合う鍵が必要なのでしょうね 」
霄囹
「 鍵なんか必要ないね!
僕が開けてやるよ! 」
獅聖幻夢
「 霄囹──、呪物が入っているかも知れない呪具です。
慎重に進めるべきです。
セロフィート殿は居ないのですよ 」
霄囹
「 そんなのこの場に居ないセロフィートが悪いんだろ。
大丈夫だって!
マオの眷属になって不老不死になったんだぞ。
何が起きたって死にはしないさ! 」
獅聖幻夢
「 念の為に複製呪靈を呼び出しておきます。
マオ殿は私の背後に控えてください。
マオ殿の後ろは複製呪靈が守護ります 」
マオ
「 有り難う、幻夢さん 」
霄囹
「 なら──、遠慮なく力業で抉じ開けるぞ!
この呪具に掛けられてる呪術より邪悪で強力な呪術をぶつけてゴリゴリ押しだぁ!! 」
シュンシュンは楽しそうに悪い顔をする。
ガッチガチで開かない箱──呪具をブッ壊す気なんじゃないか??
オレは幻夢さんの後ろから顔を出して様子を見守る事しか出来ない。
霄囹
「 おっ──ヒビが入ったぞ!
もう少しで壊せるな! 」
マオ
「 シュンシュン──、呉々も呪具の破片が飛び散らない様にしてくれよ! 」
霄囹
「 分かってるよ。
まぁ、見てろって! 」
心配だなぁ~~。
シュンシュンだしなぁ~~。
信用…………出来ない……。
獅聖幻夢
「 破片が飛び散ったとしても私が盾になります。
安心してください、マオ殿 」
マオ
「 それだと幻夢さんが怪我しちゃうじゃんか。
駄目だよ、そんなの! 」
獅聖幻夢
「 主は眷族を盾にして身を守れば良いのです 」
マオ
「 えぇ~~…… 」
幻夢さんも過保護な人だった!?
オレ、幻夢さんより年長者だよ!!
忘れてる??
マオ
「 シュンシュンが気を付けてくれたら済む事だし…… 」
当のシュンシュンはと言うと、呪具に呪術をぶつけている最中な訳で──。
呪具の箱に掛けられてる呪術って強いのかな?
マオ
「 シュンシュン、楽しそうだな……。
幻夢さん、箱に掛けられてる呪術って、どんなのか分かる? 」
獅聖幻夢
「 中に入ている呪物を封じる為の呪術と見付からない様にする呪術が掛けられていると思われます。
見付けたキノコン殿は凄いと思います 」
マオ
「 呪術で隠されてた呪具を見付けて持ち帰って来るとか──、キノコンの能力って恐い… 」
霄囹
「 ──よし、開いたぞ! 」
マオ
「 開いた──って言うより壊したんだろ~~ 」
霄囹
「 今からでも破片を飛び散らせてやろうか? 」
マオ
「 シュンシュン!
冗談は良いから! 」
獅聖幻夢
「 何が入っていますか? 」
マオ
「 そうだよ、中身! 」
霄囹
「 慌てるなって!
えぇと──、髪の束だな。
眼球も入ってるぞ。
これは誰かを呪い殺すだけじゃないな。
その一族が絶える事を願って作られた呪物みたいだな 」
マオ
「 相当怨まれていたって事か? 」
霄囹
「 いや、そうとは限らない。
呪いを掛けられる相手が必ずしも悪人とは限らないもんだ。
善人が知らず知らずに勝手に妬まれて呪われるケースだってある 」
マオ
「 そうなんだ…… 」
霄囹
「 折角だ、呪いを掛けた張本人へ呪いを返してやろうぜ! 」
獅聖幻夢
「 呪詛返しですか。
本人は既に亡くなっているのではないですか? 」
霄囹
「 関係無いねぇ!
子孫が居るなら子孫が受けるだけさ 」
マオ
「 無関係な子孫がとばっちりを受けるなんて可哀想じゃないか? 」
霄囹
「 先祖が他人様を呪ったら、子孫が償う様になってんだよ。
子孫が多ければ、呪いは分散するから大した被害には遭わないさ 」
マオ
「 子孫が1人だったら? 」
霄囹
「 分散はしない。
これだけ強力な呪いだからな、死ぬかも知れないな 」
マオ
「 そんな…… 」
獅聖幻夢
「 因みに子孫が居ない場合は、兄姉弟妹の子孫へ分散されます。
兄姉弟妹が居なければ、両親の兄姉弟妹の子孫へ分散されます。
呪詛返しをした呪いは返る相手が見付かる迄遡ります 」
マオ
「 えっ?!
呪いを掛けた本人の子孫だけじゃなくて、兄姉弟妹の子孫や両親の兄姉弟妹の子孫に迄返っちゃうのか?
全然関わって無いのに…… 」
獅聖幻夢
「 本人が亡くなっていればの話です。
この呪いは相当昔のモノですから、誰に返るのか分かりません。
子孫が生き残っていれば良いですけど…… 」
マオ
「 呪いってのは気軽に手を出すもんじゃないんだな…… 」
霄囹
「 当たり前だろ。
人様に迷惑を掛ける罰当たりなもんだからな 」
マオ
「 当時の陰陽師は、それを知ってるくせに金を稼ぐ為に利用してたんだよな… 」
霄囹
「 商売ってのは罰当たりな事もするんだ。
何せ、儲けるのが目的なんだからな! 」
獅聖幻夢
「 “ 因果応報 ” とは口では言っていても、実際に信じている陰陽師は居ませんでしたね。
私も色々としていましたし── 」
シュンシュンと幻夢さんって、似てない様で似てるんだな……。
どっちも実験好きみたいだし、セロとも気が合いそうだ……。
霄囹
「 よし──、呪詛返しは済んだぞ。
この髪の束と眼球は処分して良いぞ 」
マオ
「 えっ?!
処分するのか?
何で!? 」
霄囹
「 何でって──、用無しだからだよ。
マオに憑いてる “ そいつ ” とは無関係だからだ。
キノコン──、コイツを焼却炉で燃やしてくれ 」
キノコン:本体
「 喰べちゃ駄目ですエリ? 」
霄囹
「 さっき迄呪われてたんだぞ。
……………………喰いたきゃ喰えば良いだろ 」
マオ
「 キノコン……取り敢えず、涎を拭こうな? 」
キノコン:本体
「 はいですエリ(////)」
斯くして元呪物だった髪の束と眼球は、キノコンの口に入ったのだった。
オレに憑いてる奴に関わる呪具や呪物は見付かるのかな……。
不安だぁ~~~~。
◎ 訂正しました。
眷属 ─→ 眷族