✒ 呪霊退治 10
──*──*──*── 春舂霄囹side
霄囹
「 ──うん?
あれは──陰陽師か?
な~~~~んか、見覚えが有る様な……。
だが、髪と瞳の色が違う。
燃える様な赫色なんてしてなかった── 」
特級呪靈:赫髪
「 怨めしい奴が居たな。
春舂霄囹よ──。
妖魔を喰らい “ 人間を捨てた ” と風の噂で聞いてはいたが、よもや別世界で再会する羽目になるとは──、これも因果か 」
霄囹
「 ──お前、僕を知ってるのか?! 」
特級呪靈:赫髪
「 あぁ──、良く知っているさ。
お前は、私の弟を騙し、絶望させ、辱しめ、命を奪った奴だからな。
忘れる筈がないだろう 」
霄囹
「 弟──?? 」
特級呪靈:赫髪
「 私の弟を忘れたか。
お前にしてみれば、私の弟等その程度なのだな 」
霄囹
「 ……………………お前はまさか──、獅聖幻夢なのか?? 」
特級呪靈:赫髪
「 だったらどうする? 」
霄囹
「 有り得ない……。
獅聖幻夢は死んだんだ!
眞小呂の魂と共に輪廻の流れへ還った筈だ!
それに──お前は人間じゃないだろう!
呪靈じゃないか!! 」
特級呪靈:獅聖幻夢
「 私は眞小呂の魂を見送った後、予め用意していた器に魂を憑依させ、定着させたのだ。
今の私は人間の陰陽師ではなく、闇呪術で新たに誕生した呪靈の始祖だ 」
霄囹
「 呪囹の始祖だと!? 」
特級呪靈:獅聖幻夢
「 お前は私から闇呪術を奪い、闇呪術を極める為に人間を捨てたのだな。
実に愚かな事だ 」
霄囹
「 …………………………何故、輪廻の流れへ還らず呪靈になったんだ!?
僕に復讐する為か?! 」
特級呪靈:獅聖幻夢
「 復讐?
実にくだらないな。
お前が熱を上げて遊んでいた眞小呂も、濡れ衣を着せ捕らえた私も本体ではなかったのだぞ。
私からの “ 復讐を望む ” と言うなら叶えてやっても構わぬがな 」
霄囹
「 本体じゃなかった──だと!?
どういう事だ!
( 僕は何を相手に熱を上げていたって言うんだ?!)」
特級呪靈:獅聖幻夢
「 闇呪術の1つ、反魂の呪法を使い作った人形だ。
依り代に使ったのは昏睡状態にした人間だ。
生きた人間だからな、成長もする。
私の本体は幼い眞小呂の本体を連れ、人里から離れた屋敷で暮らしていた。
私と眞小呂の人形は試験的なモノだ。
見張りに付けていた式神には人形の様子を逐次報告させていたものだ 」
霄囹
「 あれが……人形だった──だと?! 」
特級呪靈:獅聖幻夢
「 眞小呂と私を本物だと思い接していたのだろう?
陰陽師が聞いて呆れる。
見る目がなかったな 」
霄囹
「 ………………あの眞小呂が本体じゃなかった??
本体は…………本物の眞小呂は、本体のお前と他所に居た……だと?
だが、法術を使っていたし、新しい陰陽術だって生み出していたじゃないか!
人形にそんな事が── 」
特級呪靈:獅聖幻夢
「 闇呪術を使えば容易だ。
私の人形から闇呪術を奪ったお前には、闇呪術の真の境地には至れるぬ。
人間を捨てたのに残念な事だ 」
霄囹
「 …………………… 」
特級呪靈:獅聖幻夢
「 試験的な人形ではあったが、随分な事をしてくれた礼は返さなくてはな。
お前が人形を壊してくれた所為で、人形の修復作業が大変だったからな。
当時のお前は、壊れた人形を可愛がってくれていた様だな 」
霄囹
「 ──っ……(////)」
特級呪靈:獅聖幻夢
「 年月は経ってしまったが、試験的な人形を壊してくれた礼だ。
受け取れ、春舂霄囹! 」
特級呪靈の獅聖幻夢は闇呪術を発動させると、宙に真っ黒で禍々しい法術陣が現れる。
法術陣から現れたのは、多くの呪靈だ。
結界内に閉じ込められている呪靈とは明らかにレベルが違う。
霄囹
「 なっ──?!
折角呪靈を減らしたのに増やすな!! 」
特級呪靈:獅聖幻夢
「 ははははっ!
この程度のザコ等、お前には物足りないだろうと思ってな。
特級呪靈を上回る呪靈獸だ。
自我を持ち、知能も特級呪靈以上に高い。
お前の遊び相手には丁度良いだろう?
精々楽しんでくれ 」
特級呪靈の獅聖幻夢は愉快そうに春舂霄囹へ向けて言うと数多くのおぞましい容姿をした呪靈獸を残して姿を消した。
春舂霄囹の元にヒラヒラと1枚の紙が落ちて来る。
其処には【 私の本体をガッカリさせないでくれよ 】と書かれていた。
霄囹
「 本体の獅聖幻夢は、何処かで高見の見物でもしているのか!?
余計な置き土産なんかを残して行きやがって!! 」
春舂霄囹は紙をグシャリと握り潰すと両手で髪を掻き毟った。
呪靈獸は予想外に強く、春舂霄囹が闇呪術で作った死乃人を引き千切っては数を減らし、闇呪術で呪靈化させた式隷を捕まえては喰らい、春舂霄囹が自慢する強力な式神達でさえも呪靈獸の前ではザコ同然だった。
霄囹
「 ………………嘘だろ………………僕の式神達でも太刀打ちが出来ないだと!?
獅聖幻夢──やってくれたなぁぁぁぁぁ!!
クソッ──、本来の能力を封じられてなければ簡単に倒せるってのにぃぃぃぃぃぃ!!!! 」
春舂霄囹は鳥型の式神の背中の上で地団駄を踏んで悔しがる。
今の自分では呪靈獸を相手にしても勝てず、完膚無きまで敗北する事もセロフィートに “ 助けてもらうしかない ” という事も本能で理解していた。
春舂霄囹は、ありったけの高額で強力な御札を取り出すと、召喚する式神の依り代に使った。
少しでも呪靈獸の足止めをさせる為に、背に腹は変えられないと断腸を切る思いで惜しみ無く使う。
鳥型の式神に命令し、マオとセロフィートが居る場所を目指して敵前逃亡──否、戦略的撤退をするのだった。
──*──*──*── 絲腥玄武side
玄武
「 うん──?
あの特級呪靈は陰陽師か?? 」
キノコンA:本体
「 玄武様に似てますエリ~~ 」
玄武
「 うむ、髪の長い陰陽師は大体似ている様に見えるモノだぞ 」
キノコンA:本体
「 玄武様──、髪の色が燃える様に赫い陰陽師が居ますエリ? 」
玄武
「 いや、流石に髪の赫い陰陽師は見た事は無いが──。
あれは本当に特級呪靈なのか?? 」
キノコンA:本体
「 はいですエリ。
セロフィート様から頂いた呪靈レーダーにビンビン反応してますエリ!
あれは間違いなく呪靈ですエリ 」
特級呪靈:赫髪
「 ふむ、人間──では無さそうですね。
………………妙に懐かしい感じがします 」
玄武
「 ……………………何だと?!
どういう事だ?
何故奴から闇呪術を感じる!? 」
キノコンA:本体
「 玄武様、どうされましたエリ? 」
玄武
「 ……………………此方の≪ 島国 ≫には闇呪術は存在していない筈だ!
闇呪術を扱えるのはシュンシュンだけの筈だ。
特級呪靈が闇呪術を扱うだと!? 」
特級呪靈:赫髪
「 ふむ──、どうやら貴殿は闇呪術で生み出された式神に近い存在──の様な者ですね?
此方の世界でも闇呪術を使える者が居るとは── 」
玄武
「 如何にも、我は闇呪術により生み出された式妖魔だ。
生前は陰陽師で有り、暗殺された後は──、長い年月を碁盤に魂を憑依させられていた式神でもある 」
キノコンA:本体
「 玄武様──、正体を明かして大丈夫ですエリ? 」
玄武
「 問題ない。
相手は闇呪術の使い手だ。
黙っていても直に気付くだろう 」
特級呪靈:赫髪
「 闇呪術で生み出された式妖魔──。
どうやら闇呪術には未々様々な可能性が有る様ですね。
実に面白い── 」
玄武
「 お前は他の特級呪靈とは雰囲気が違うのだな。
自我と知能を持つ特級呪靈とやらは対話が可能なのか? 」
特級呪靈:赫髪
「 そうですね。
特級呪靈にも種類が有ります。
私も生前は貴殿と同様に陰陽師でした。
死後、私の肉体から離れた魂を弟が身に付けている数珠に憑依する様に闇呪術を掛けていました。
弟の数珠に魂を定着させてからは弟の式神として、弟と共に生きました 」
玄武
「 闇呪術で己の魂を物体に憑依させ、定着させた──だと?
それを死後に発動する様に自分で掛けていた──!?
そんな事が人間に出来るものか!! 」
特級呪靈:赫髪
「 人間には出来ない神技でしょうね。
生前の私は人間を装い生きていましたから 」
玄武
「 人間を装おって生きていた? 」
特級呪靈:赫髪
「 はい。
弟とは異父兄弟でしたから。
私の実父は人間ではなく妖魔でした。
人間の陰陽師では使えない失われた禁忌の闇呪術を使えたのは、私に妖魔の血が流れていたからです。
死後に闇呪術を発動発動させる事は容易でした 」
玄武
「 ………………………………お前は──生前、獅聖幻夢だったのか? 」
特級呪靈:赫髪
「 獅聖幻夢──ですか。
随分と懐かしい名ですね。
何故私の故郷ではない此方の世界で、私の生前の名を知っているのでしょう? 」
玄武
「 それは我も知りたいな。
何故、他所の≪ 島国 ≫の闇呪術使いが、此方の≪ 島国 ≫に居るのかをな!
弟の魂と共に輪廻の流れへと還ったのではなかったのか!
何故、特級呪靈となっている! 」
特級呪靈:獅聖幻夢
「 ふふふ……。
闇呪術を極めた私が大人しく輪廻の流れへ還ると?
人間である弟の魂が輪廻の流れへと還るのを見届けた私の魂は、生前秘かに用意していた器に憑依しました。
定着させるのに時間が掛かりましたけど、私は新たな肉体を得て “ 特級呪
玄武
「 ……………………お前が “ ラスボス ” とやらになるのか? 」
特級呪靈:獅聖幻夢
「 らすぼす??
らすぼす……とは何
私は唯
ふふふ……。
それに私は本体では有りません。
私は本体に生み出された複製呪
玄武
「 複製呪
特級呪靈:獅聖幻夢
「 はい。
お喋りは此
貴殿は私を倒せますか? 」
玄武
「 ──望む処
特級呪靈:獅聖幻夢
「 私をガッカリさせないでください 」
玄