⭕ 呪霊退治 2
──*──*──*── 事務所
ドアを開けて事務所に入ると、陰陽師の狩衣に身を包んだ式妖魔の玄武さんと退魔師の衣装を着た弓弦さんが設置されている長いソファーの上に座っている。
玄武さん,弓弦さんも本職に戻って、依頼者の死神から依頼された化物退治に狩り出されていたんだ。
弓弦さんは事務所のスタッフが出したであろう和茶を飲んで寛いでいる。
玄武さんは弓弦さんが愛用している魔喰らいの弓に憑依しているから、飲食をしてない。
因みにシュンシュンが所長をしている事務所のスタッフは全員、セロが用意した戦闘用〈 器人形 〉ばかりだ。
キノコンは事務所の事務には一切関わらず、緊急時に対処する護衛とし待機している。
玄武さん,弓弦さんチームとシュンシュン,オレのチームに同行しているキノコンは事務所に待機しているキノコンの分身体だったりする。
玄武
「 戻った様だな 」
弓弦
「 2人共無事で何よりだ 」
マオ
「 ただいま、玄武さん,弓弦さん!
2人も無事で良かったよ 」
霄囹
「 玄武と弓弦は何体捕獲して来たんだ? 」
玄武
「 確か380体ぐらいか 」
弓弦
「 比較的に弱かったんだ。
2人の方も多いのか? 」
マオ
「 さ…380…………多いね…。
オレ達は20体ぐらいかな… 」
玄武
「 手こずる程強かったのか? 」
霄囹
「 いや、然程大した強さじゃなかったな。
元々出現数が少なかったんだ 」
マオ
「 シュンシュンの式神が殺気だってて怖かったよ… 」
霄囹
「 式神が弱らしてくれるから楽だったろ 」
マオ
「 オレも戦ってただろ! 」
玄武
「 息が合っているな。
漫才とやらを見ている様だ 」
霄囹
「 僕は玄武と組みたかったんだぞ!
今からでもチーム替えしよう! 」
玄武
「 却下だ。
シュンシュンに押し倒されるのは御免だ 」
弓弦
「 玄武の事を想うなら、気持ちを汲んでやってくれないか 」
マオ
「 シュンシュン、見境ないもんな~~ 」
霄囹
「 僕を発情期の猿みたいに言うな!
押し倒したりなんかしな……しな…………しな…………しないさ…… 」
玄武
「 欠片も信用は出来ぬな。
断固拒否する! 」
霄囹
「 玄武ぅ~~~~ 」
玄武
「 我に近付くな! 」
玄武さんは余程シュンシュンが苦手なのか、嫌悪感が半端ない。
まぁ、シュンシュンの自業自得だし、シュンシュンに同情は出来ないな。
玄武さんがシュンシュンを疎しく思うのは仕方無いと思うけど、「 シュンシュン 」って呼んでるって事は本気で嫌っている訳じゃないと思う。
マオ
「 シュンシュン、一定の距離感って大事だと思うぞ。
“ 親しき中にも礼儀あり ” って言葉もあるじゃんか。
オレだってセロに敬語使う時あるしさ! 」
霄囹
「 ……………………僕の方が年長者なんだが? 」
マオ
「 年長者なら尚更だろ。
合わせてやれよ。
オレの方がシュンシュンより年長者だし! 」
霄囹
「 …………………………分かったよ。
今回は引いてやる。
──化物話をしようか 」
シュンシュンの声色と顔付きが変わった。
ビジネスモードに変わる前にシュンシュンは必ず髪を掻き上げる。
某アニメのセーラー◯ラヌスっていうイケメン戦士に影響されたみたいだ。
シュンシュンは何故か美少女アニメにハマっているみたいで、元々の変態趣味に磨きと拍車が掛かっている。
霄囹
「 死神からの依頼で知る事になった正体不明の化物だが──、コイツ等は人間だけじゃなく、異形,怪異まで喰らう化物だ。
コイツ等の討伐に向かった死神の仲間達が実に呆気なく何十体もコイツ等に喰われている。
要は、死神の天敵って奴だ。
戦闘能力に長けてる死神が無惨に喰われるぐらいコイツ等は強いって事だ。
死神が敵わない相手に他の異形や怪異が敵う訳がない。
異形は其処等辺を弁えてキノコンの保護下に入りつつあるが──、怪異に関しては言うまでもない 」
マオ
「 キノコンの保護下に入る事を拒んでるんだよな。
自分達で化物を倒すんだって意固地になってる。
セロは『 保護を求めて逃れて来た怪異に限り助ける様に── 』ってキノコン達には伝わってる。
『 保護下に入る事を拒む怪異は放っときなさい 』って事も伝わってるよ 」
玄武
「 弓弦と我が到着した時には、化物に惨敗した怪異が喰われている最中であったな 」
弓弦
「 一網打尽に出来たのは、化物達が食事に夢中だったからだろう。
そうでなければどうなっていた事か 」
霄囹
「 転身すれば良いだろ。
キノコンが居るんだ。
暴走して自我を失ってもキノコンが止めてくれるだろ 」
玄武
「 力の制御が出来ない間は転身しない方が良いな。
化物の正体も不明であるし。
仮に、あの化物を生み出した者達が居り、何処かで高見の見物していると考えた場合、奥の手は見せぬ方が良いだろう 」
マオ
「 そうか!
そうだよな!
それだよ、玄武さん!
何等かの目的があって誰かがあの化物を “ 作った ” って線も有るよ!
オレはセロじゃないって信じたいけど…… 」
霄囹
「 セロフィートは完全に黒だろ。
合成獣やキノコンを作った彼奴なら簡単に作れるんじゃないのか? 」
キノコン:分身体A
「 霄囹ちゃま、セロフィート様を疑ったら駄目ですエリ! 」
キノコン:分身体B
「 セロフィート様を●イ●呼ばわりした霄囹ちゃまは、-6000点ですエリ 」
霄囹
「 いきなり8000点も削るなよ! 」
キノコン
「 聞き捨てられない言葉は厳しく査定しますエリ 」
霄囹
「 融通の利かないキノコンだな! 」
玄武
「 いや、セロフィートは化物とは無関係だ 」
マオ
「 玄武さん! 」
玄武
「 仮にセロフィートが化物を作ったとすれば、キノコン達が仲間意識を持つなら未だしも、敵意を抱き敵視するのはおかしい。
キノコンを見ても恐れもしないのは異常だ 」
弓弦
「 確かにそうだな。
キノコンが私達に友好的に接してくれるのは誰でもないセロとマオが味方で居てくれるからだ。
異形の類い,怪異の類いもキノコンを一目見ただけで必ず戦意を喪失する。
キノコンの末恐ろしさを本能で察知し、畏怖の念を抱いている。
にも関わらず、あの化物にはそれが無い 」
マオ
「 セロが可愛がってる合成獣達もキノコンには低姿勢で礼儀正しく接するもんな~~。
セロが生み出した生物の中で最上最強なのはキノコンだ。
キノコンに畏怖の念を感じないなんて、確かにおかしいよな…… 」
霄囹
「 セロフィートじゃないなら、どんな輩があんな化物を生み出しやがったって言うんだよ?
未だに反抗的な少数の異形共か? 」
玄武
「 異形も喰らう化物を態々作ると思うのか?
異形は人間程馬鹿ではないと思うが? 」
マオ
「 そだね……。
仮に異形が化物を作るなら、人間や怪異は襲っても異形だけは襲わない化物を作りそうかな? 」
霄囹
「 買い被り過ぎじゃないのか?
兎に角、化物の正体を明らかにするのが先決だな。
難なく倒せてる内は良いが…… 」
玄武
「 うむ、それは我も感じていた。
懸念するべきだな 」
弓弦
「 喰らった異形,怪異の強さを取り込み強化する化物に進化しなければ良いのだが…… 」
霄囹
「 いざという時はキノコンが何とかしてくれるんだろ? 」
キノコン:分身体A
「 はいですエリ。
デコピンで一撃ですエリ 」
キノコン:分身体B
「 キノコン砲の発射も出来ますエリ★ 」
マオ
「 あの化物をキノコン砲で倒せるのか? 」
キノコン:分身体A
「 はいですエリ。
捕獲した化物で試し撃ちは済んでますエリ 」
キノコン:分身体B
「 効果は抜群ですエリ★ 」
マオ
「 試し撃ちしたんだな…。
効果抜群なら心強いな! 」
霄囹
「 キノコン、捕獲した化物をセロフィートに届けてくれよ 」
事務員:器人形
「 所長──、依頼者の死神さんが来られました 」
霄囹
「 死神が?
何の用だよ? 」
事務員:器人形
「 応接室で所長を待ってます 」
霄囹
「 分かった。
マオ、お前も来い 」
マオ
「 えぇっ?!
オレも死神に会うのかよ? 」
霄囹
「 当たり前だろ!
何で僕1人で死神に会わないといけなんだ!
“ セロフィートの友達 ” だぞ!!
1人で会うなんて御免だ! 」
マオ
「 セロの友達かぁ……気になるぅ~~ 」
霄囹
「 行くぞ、マオ 」
マオ
「 セロの友達………… 」
オレはシュンシュンと一緒に所長室を出ると、依頼人を通す応接室へ向かった。