✒ 少年陰陽師★平安幻想異聞録 63
毘周さんは3日後に目を覚ました。
美螽と一体化した事で、頭の中に掛かっていた霧が晴れた様に記憶が戻ったみたいだ。
毘周さん曰く、超古代人の生き残りだって事は事実らしい。
ただ、研究員達に連れ戻されて、色んな実験をされたり改造をされたりして、人間では無くなってしまったみたいだ。
研究員達に連れ戻された後、研究室の中で言葉では語りきれない想像を絶する様なおぞましい目に遭わされたんだろう。
気分が悪くなるから毘周さんが遭わされた非道徳で非人道的な実験や改造の話しは割愛したい。
亡くなってしまった2人の息子達も研究員達からすれば絶好の被験体だったに違いない。
胸糞悪い話だ。
毘周さんが千颯── 当時は “ 矢薙 ” と名乗っていたみたいだ ──と出会ったのは研究所の中だったらしい。
矢薙は元居た世界で散歩がてら昼寝をしていたらしい。
宙に浮いて昼寝をしていた矢薙は突如と現れた見慣れない黒い穴に吸い込まれて、知らない世界へ来てしまったんだとか。
異世界召喚みたいな展開だな~~。
流石はゲームだ!
矢薙は見た事の無い場所、見た事の無い人間達、聞き慣れない言葉に戸惑っていたらしい。
何が何だか訳も分からずキョロキョロしていたら、人間達に取り囲まれて捕まりそうになったらしい。
知らない場所でいきなり敵意を剥き出しにされて襲われ掛けたら抵抗するのは当然の事だと思う。
矢薙は自分を捕まえ様として来た人間達を皆殺しにして逃げたしたらしい。
流石に皆殺しは、やり過ぎだと思うけど、これはゲームの回想だからな。
突っ込まないでおこうと思う。
研究所の中を破壊しながら出口を探している途中に幼い毘周さんを見付けたらしい。
傷だらけで泣いていた毘周さんに「 助けて! 」と声を掛けられて、逃げる序でに連れ去ったらしい。
誘拐しちゃったって事だよな?
犯罪者だ……。
毘周さんの案内で研究所から無事に出られた矢薙は、毘周を連れて研究所から遠い山の方へ向かったそうだ。
それからは森の奥で、洞窟を掘って自給自足の生活を始めたらしい。
毘周の為に小屋を作って移り住んだり、狩りの仕方,捌き方,調理法,薬草や山菜,食べれる茸や木の実の選別なんかも毘周に教えながら過ごしていたらしい。
幼い毘周にとって、当時の矢薙は逞しくて心強いヒーローみたいな存在だったんじゃないかって思う。
頼れる身近な大人は矢薙だけだったし、生き抜く為の方法を教えてくれたのも矢薙しか居なかった訳だしな。
毘周さんも矢薙は “ 憧れの対象 ” だったらしい。
オレにとってのセロみたいな感じかな?
毘周さんの中で憧れは何時しか恋心に変わって、矢薙を異性として見る様になったのは11歳ぐらいの時で、異性として意識する様になったのは12歳を迎えてからみたいだ。
長生きしている矢薙からすれば毘周さんは子供だし、恋愛対象にすら入って無かったみたいだ。
子孫が必要ないぐらい長生きする鬼人族には子作りして子孫を残す──って発想は薄かったのかも知れないな。
矢薙の伴侶になりたくても、全く相手にされなかった毘周さんは、色々と涙ぐましい努力をしたみたいだ。
矢薙は恋愛云々に関しては超絶鈍かったらしい。
鬼人族は “ 力こそ全て ” みたいな種族だから、自分より弱い輩は相手にしないらしい。
人間の毘周さんは鬼人族からすると、ひ弱な人種だから余計に対象外だったのかも知れない。
龍とピヨピヨ鳴く雛みたいな組合わせかな??
色んな苦労を乗り越えて、毘周さんは自分の気持ちを矢薙に伝えて求婚した。
矢薙は自分より弱い相手と子孫を残すつもりは微塵も無かったみたいだけど、毘周さんの事は幼い頃から知っているし、情や愛着も湧いていたのかも知れない。
元の世界に戻れる手掛かりを探していたらしいけど、それらしい手掛かりも見付からない。
少しの間ぐらいなら──って思ったのかも知れない。
ひ弱で短命な人間の一生なんて、長命な鬼人族にとっては、瞬き程の時間かも知れないから、毘周さんの想いを汲み取ったのは矢薙なりの優しさだったのかも知れない。
で──、式は挙げてないけど夫婦になった毘周さんと矢薙は、それなりに充実していたみたいだ。
夜な夜な子作りする意外は変わらない生活を過ごす訳だしな~~。
第1子の了敬と第2子の一心を授かって、幸せな暮らしが続くと思っていたけど、そうはならなかったみたいだ。
矢薙は定期的に≪ 町 ≫へ行っては、人間の姿── どうやら大人の姿にもなれるらしい ──で生活に必要な物を買ったり、収入を得る為に品を売ったりしていた。
その日、自宅に帰ると物気の空で誰も居なかった。
抵抗したのか荒らされてた室内を見て、矢薙は尋常ではない事が起きたのだと気付く。
其処から矢薙は何者かに連れ去られてしまった夫と子供達を探し回る事になった訳だ。
一方、矢薙が≪ 町 ≫へ買い出しへ行く日は、毘周が子供の相手をする事になっていた。
子供の相手と言っても簡単な掃除とか畑仕事の手伝いをさせたりとかだろうけど。
昼食を終えて寛いでいた時に奴等──研究員達が現れたらしい。
不思議な力か術を使われて身動きを封じられた3人は、研究員達に捕まると離れ離れにされて別々に連れて行かれたそうだ。
あまりの手際の良さに反発も抵抗も出来ないまま、2人の息子と引き離された毘周さんは、息子達が連れて行かれた先を知らないまま、意識を失ったらしい。
毘周さんは「 何も出来ず不甲斐ない父親でした…… 」と無力だった自分を千颯の前で嘆いて謝っていた。
千早は毘周さんを責めないで、ぎゅっと抱きしめて毘周さんを宥めていた。
惠茜さんの厚意で、毘周さんが元気になったら、愿縲さんに住まわせている屋敷の部屋を貸し出すから、好きなだけ暮らせば良いという流れになった。
「 移動が楽になる様に 」と愿縲さんと主人公が協力して、愿縲さんの屋敷と獅東屋敷を繋ぐ転移陣を屋敷内に設ける事にもなった。
獅東屋敷が本宅で愿縲さんの屋敷は別荘扱いになる感じかな。
愿縲さんは主人公が1人で無茶しない様に見張る為、引き続き獅東屋敷で暮らすみたいだ。
だから、あっちの屋敷に代わりに住んでくれる人が居ると愿縲さんも助かるらしい。
千颯の世話をする必要が無くなった事で、惠茜さんも自分の屋敷に戻って暮らす事にしたみたいだ。
賑やかだった獅東屋敷も静かになりそうだな。
毘周さんと千颯のイベントが無事に終わり、日付が切り替わった。
主人公は弓嘉さん,愿縲さんの監視下に置かれた状態で、各地区の退魔仲介所で依頼を受けては報酬を貰うの繰り返し。
中々妖魔王の情報が入って来ないから、貧乏揺すりをしながらイライラしていた。
3人で受ける依頼が無くなって、パーティが4人にならないと受けられない依頼ばかりになった頃、とあるイベントが始まった。
盲目の退魔師が仲間になるイベントが発生したんだ。
イージーモードやノーマルモードでは、もっと早い段階で起きていたイベントが遅い段階で始まった。
この盲目の退魔師のモデルは挧氤さんで、名前は “ 厦竸挧氤 ” だ。
“ ういん ” は平安時代の名前に合わないと思う!
そんな事は兎も角、厦竸挧氤もLVを上げれば戦力になる!
法術で剣を操って戦う技は何れもカッコイイんだよな!!
是非とも仲間にしたい!
柄の悪い退魔師達に絡まれている厦竸挧氤を助ける。
主人公は未成年だから、柄の悪い退魔師達から当然 “ 生意気呼ばわり ” されて次の標的にされる事になるんだけど、今回は退魔師で有名な弓嘉さんと愿縲さんが左右に居て睨みを効かせてくれているから絡まれずに済んだ。
柄の悪い退魔師達を追い払った後、後先考えず勝手に揉め事に首を突っ込む無謀な主人公に対して、弓嘉さんと愿縲さんから厳しい御叱りを受ける羽目になった。
正座をさせられそうな勢いだ。
2人共、主人公を心配してくれているのが分かる。
それだけ “ 愛されてる ” って事なんだろうな。
厦竸挧氤を助けた事で、受付人から1つの依頼を頼まれる事になった。
4人パーティになって初めての依頼だ!
オレは依頼の内容を知ってるし、解決の仕方も知っている。
楽勝な依頼だ!
この依頼を無事に解決させる事が出来れば、厦竸挧氤は確実に仲間になるんだ!
それに獅東屋敷で暮らす事にもなって、また賑やかになる。
マオ
「 よぉ~~し、今回の依頼も甲評価で解決させるぞ!! 」
オレは厦竸挧氤を仲間にする為に、気合を入れて依頼を受ける事にした。