⭕ 青白い足を辿れば 1
◎ サブタイトルを変更しました。
──*──*──*── 土曜日
──*──*──*── 裏野ハイツ
──*──*──*── 101号室
──*──*──*── 1階・居間
春舂霄囹
「 ──よし。
じゃあ、出掛けるか!
玄武と弓弦は大人の姿で行くんだろ? 」
絲腥玄武
「 うむ、そうだな。
子供の姿で歩くと補導とやらをされるらしいからな 」
厳蒔弓弦
「 子供の姿と大人の姿では髪型も違う。
碁会所へ訪れてもバレはしないだろう 」
春舂霄囹
「 式神に乗って行くぞ。
その方が早いからな! 」
玄関に置いてある靴を持って裏庭に出る。
──*──*──*── 裏庭
春舂霄囹
「 キノコン、カメラを回せ 」
キノコン
「 はいですエリ 」
キノコンは配信動画専用の高性能小型カメラを持つと、カメラを回し始める。
靴を履いた僕は持っているハンカチを依り代にして、空を飛んで移動の出来る式神を召喚した。
春舂霄囹
「 背中に乗れ。
連れてってやる 」
玄武と弓弦を式神の背中に乗せ、僕は式神に指示を出す。
目指すは5駅先にある碁会所だ!
──*──*──*── 碁会所
春舂霄囹
「 ──此処が碁会所か 」
地面に降り立った式神から降りた僕は、式神をハンカチに戻す。
玄武の話を聞いて、青白い足が立っていた場所の近くに立つ。
春舂霄囹
「 此処に立っていたんだな? 」
絲腥玄武
「 そうだ。
シュンシュン、何をするんだ? 」
春舂霄囹
「 追跡術を使う。
青白い足が何処から来たのか辿るんだ。
辿った先に青白い足を碁会所の前に置いて去った犯人が居る 」
厳蒔弓弦
「 犯人を特定してたら、どうするんだ? 」
春舂霄囹
「 事情を聞くに決まってるだろ。
態々碁会所に化け物を置き去りにした奴だ。
それなりの事情が無ければ、こんな悪質な事はしないからねぇ 」
僕は袖から呪符を取り出すと法力を込める。
春舂霄囹
「 僕に道を示せ!
──来々! 」
法術が発動すると地面に足跡が浮き出た。
血のように赤い足跡だ。
春舂霄囹
「 よし、辿るぞ! 」
僕はカメラを回すキノコンを連れて赤い足跡の追跡を始めた。
絲腥玄武
「 ──何処まで続いているんだ? 」
春舂霄囹
「 さぁな。
僕が知るわけないだろ 」
厳蒔弓弦
「 足跡が途絶えたな 」
春舂霄囹
「 バス停だな。
此処でバスを降車したんだな。
この先の何処かのバスに足跡がある筈だ。
式神に乗って追跡を続けるぞ 」
僕はハンカチを依り代に使い、式神を召喚する。
キノコン
「 霄囹ちゃま、歩道で式神を召喚すると通行人が吃驚しますエリ 」
春舂霄囹
「 僕は犯人を捜索してるんだぞ。
自重してたら時間が掛かる!
それに僕が陰陽師だって事は周知されている。
問題ないさ。
玄武,弓弦も早く乗れ! 」
玄武と弓弦を促し、式神の背中に乗せる。
式神は宙に浮き、歩道の上を飛びながら移動を始めた。
厳蒔弓弦
「 ──赤い足跡だ! 」
絲腥玄武
「 バス停だな 」
春舂霄囹
「 どうやら犯人は、このバス停からバスに乗車したようだな。
このまま足跡を辿るぞ! 」
式神に乗ったまま赤い足跡の追跡を続けると──、赤い足跡は高層マンションの中に続いていた。
春舂霄囹
「 随分と立派なマンションだな 」
絲腥玄武
「 たわまん…とか、おくしょん…と呼ばれる建物らしい 」
厳蒔弓弦
「 富裕層の人間が、この中で暮らしているそうだ 」
春舂霄囹
「 へぇ~~成金共がウジャウジャ居るわけか。
良い事を聞いたねぇ! 」
キノコン
「 霄囹ちゃま、めちゃんこ悪い顔されてますエリ 」
春舂霄囹
「 とっとと中に入って犯人を特定するぞ! 」
高層マンション近くに式神を下ろし、ハンカチに戻す。
絲腥玄武
「 此処は防犯せきゅりてい──なるもので簡単に入れなくなっているんじゃないのか? 」
春舂霄囹
「 おぃおぃ、僕は天下の陰陽師だぞ。
防犯セキュリティなんてもの、陰陽師の前では無きに等しい。
行くぞ! 」
キノコン
「 住居不法侵入罪になりますエリ 」
春舂霄囹
「 それがどうした!
けしからん犯人が居るんだぞ。
犯人を捕まえる為なら法すらも破るのが陰陽師だ!
不法侵入が怖くて犯人を確保出来るか! 」
キノコン
「 霄囹ちゃま、カッコイイですエリ!
痺れちゃいますエリ。
陰陽師の鏡ですエリ★ 」
春舂霄囹
「 アッハハハハハ!
そうだろう、そうだろう!
もっと褒めて良いぞ! 」
僕は法術を発動させて高層マンションの中へ入る。
玄武,弓弦,カメラを回すキノコンは僕の後ろを付いて来る。
──*──*──*── タワーマンション
厳蒔弓弦
「 足跡はエレベーターの方から出入り口に向かって来ているな 」
絲腥玄武
「 エレベーターに乗るのは良いが、何処の階で乗ったかが問題だな 」
春舂霄囹
「 式神を使うさ。
足跡を見付けたら合図が来る 」
僕は袖から出した小さな葉っぱを依り代にして、鳥形の式神を召喚した。
雀程の大きさだ。
式神は階段を目掛けて飛んで行く。
春舂霄囹
「 さてと──、式神が足跡を見付けるまで暇だな。
玄武と弓弦は犯人を捕まえたら、どうしたいんだ? 」
絲腥玄武
「 事情を聞くのではなかったのか? 」
春舂霄囹
「 そんなの建前に決まってるだろ~~。
僕は泣く子も黙って逆立ちする陰陽師だぞ!
事情を聞き出して終わるわけないだろう!
相応の罰は受けてもらうよ! 」
絲腥玄武
「 罰か…。
弓弦も我も被害に遭わなかった。
罰を与える必要は無いのではないか? 」
厳蒔弓弦
「 確かにな。
被害を受けていれば罰を与えても構わないと思うが…… 」
春舂霄囹
「 玄武も弓弦も甘いんだよ!
良いか、相手は犯罪者だぞ!
犯罪者に寛容になるんじゃない! 」
キノコン
「 犯人から犯罪者に昇格してますエリ 」
春舂霄囹
「 犯人 = 犯罪者だぞ、キノコン。
犯罪者に人権を与えるべきじゃないんだ。
何故だか分かるか、キノコン 」
キノコン
「 自ら善良な市民,国民である事を捨てた愚か者ですエリ。
罪人を裁くのに、人権は邪魔な権利ですエリ 」
春舂霄囹
「 その通りだよ、キノコン!
人権なんてモノが犯罪者を守るから、相応の刑罰を与えられないんだ!
陰陽師の僕は、人権なんて無視して犯罪者に相応の罰を与えられるし、呪い殺せる!
完全犯罪なんて陰陽師には朝飯前さ! 」
キノコン
「 霄囹ちゃま、めちゃんこ輝いてますエリ 」
春舂霄囹
「 アッハハハハハ!
もっと褒めたまえ! 」
絲腥玄武
「 このまま配信したら炎上とやらを起こしそうだな 」
厳蒔弓弦
「 確かにな… 」
春舂霄囹
「 ──おっ、式神が足跡を見付けたようだ。
32階に行くぞ 」
僕,玄武,弓弦,キノコンでエレベーターに乗り込んだ。