⭕ 憑いて来た!
◎ サブタイトルを変更しました。
──*──*──*── 裏野ハイツ
──*──*──*── 101号室
──*──*──*── 1階・居間
春舂霄囹
「 ──おい、こらぁ!
玄武,弓弦ぅ!
外に変な奴が立ってたぞ!
何処から連れて来やがった?! 」
絲腥玄武
「 霄囹!
祓ってくれたのか 」
厳蒔弓弦
「 玄武が話してくれた青白い足か? 」
春舂霄囹
「 青白い足だぁ?
馬鹿を言うな!
何処が “ 青白い足 ” だよ!
とんでもない化け物だったぞ!
全く……。
碁打ちに行ってたんじゃないのかよ? 」
絲腥玄武
「 実体化していると法力が使えないのは不便だ 」
厳蒔弓弦
「 玄武の憑依化を解けるのはセロだけだったな 」
春舂霄囹
「 法力が使えない玄武は兎も角、弓弦は何で魔喰らいの弓を使わなかった!
矢を射れば滅っせた筈だぞ! 」
厳蒔弓弦
「 魔喰らいの弓はセロが持っている。
手元に無いから何も出来ない 」
春舂霄囹
「 全く、肝心な時に使えない退魔師だな!
後で僕がセロフィートから魔喰らいの弓を取り返してやる! 」
厳蒔弓弦
「 穏便に頼む 」
絲腥玄武
「 然し、我には “ 青白い足 ” に見えたものが、シュンシュンには “ 化け物 ” に見えたとはな……。
何故だ? 」
春舂霄囹
「 裏野ハイツの澱みに当てられたんだろ!
それだけ裏野ハイツは “ ヤバい ” って事だ。
連れて戻って来るなよ… 」
絲腥玄武
「 済まない事をした。
まさか追って来たとは思わなくてな… 」
春舂霄囹
「 法力が使えない分、鈍ったのかよ…。
〈 器人形 〉とやらに憑依している副作用か? 」
絲腥玄武
「 碁会所の中には8体程の黒い靄が憑いていてな、青白い足は外に立っていたんだ 」
春舂霄囹
「 はぁ?
何だよ、碁会所は事故物件なのか? 」
厳蒔弓弦
「 事故物件かは分からないが、碁会所の下には人骨が最低でも8体は埋まっていると思う 」
春舂霄囹
「 流石は犯罪天国都市と呼ばれるだけはあるな。
確かに黒い靄の下には死体が埋まっているんだろう。
正しく供養して送り出してやらないと、澱みが濃くなり、空気も荒む。
良くない事が起こり易くなり、不運が続く場所になる。
事故が多発する名所なんて、大概そうだ。
間違いないだろう 」
絲腥玄武
「 何も出来ぬから放置してはいるが、“ 何とかしたい ” とも思う… 」
厳蒔弓弦
「 子供の言う事を大人がまともに取り合うとは思えない。
況してや黒い靄の見えない者達のばかりだ 」
春舂霄囹
「 碁会所の出口に立っていて付いて来たか…。
人混みの多い電車を使って帰って来たってのに此処まで追って来た──か。
良し、明日の配信場所は碁会所だ。
キノコン、心霊検証の準備をしといてくれ 」
キノコン
「 畏まりましたエリ 」
絲腥玄武
「 シュンシュン、来てくれるのか 」
春舂霄囹
「 あぁ。
誰かが碁会所の前に置いて行ったいった可能性もあるからな。
玄武が見た “ 青白い足 ” が立っていた場所を見れば、そいつが何処から来たのか分かるさ 」
厳蒔弓弦
「 良かったな、玄武 」
絲腥玄武
「 そうだな。
シュンシュン、明日は頼む 」
春舂霄囹
「 フン!
僕は配信動画を撮る為に行くんだけさ。
勘違いするな 」
キノコン
「 霄囹ちゃま、照れてますエリ 」
春舂霄囹
「 照れてない!
今からセロフィートに会いに行く! 」
僕は1階の居間に玄武,弓弦,キノコン達を残して窓から裏庭へ出た。
──*──*──*── 裏庭
裏庭に出るとセノコンが花壇を触っている
良い汗を掻きながら楽しそうに土いじりをしているみたいだ。
花壇の隅っこには、どう見てもヤバそうで物騒な色の茸が生えているけど、僕は敢えて見えないフリをする事にした。
庭いじりに熱中しているセノコンに声を掛ける事なく、僕は102号室の窓を開けて1階の居間へ入った。
──*──*──*── 102号室
──*──*──*── 1階・居間
マオキノ
「 霄囹ちゃま、どうされましたエリ 」
春舂霄囹
「 セロフィートに用があってな。
セロフィートは居るか? 」
マオキノ
「 セロ様は戻ってませんエリ。
今夜はマオ様と一緒にマックンナルドで夕食を済ませると仰ってましたエリ 」
春舂霄囹
「 マックンナルドか。
分かった。
有り難な! 」
マオキノに礼を言った僕は、2階へ続く階段を掛け上がる。
【 セロカ君の本屋 】と書かれたドアプレートが付いている202号室のドアを開けた。
──*──*──*── セロカ君の本屋
──*──*──*── 3階・居間
居間にはキッチンが付いている。
マオ曰く、LDKって言うらしい。
ソファーの前には、ドデカい薄型テレビが置かれている。
背凭れを自由に動かせる座り心地の良いソファーだ。
足を伸ばせるようにもなっていて、ソファーの上で寝る事だって出来る。
ソファーの近くにはマオ専用の冷蔵庫が置かれている。
マオが食べる為に買ったコンビニスイーツやスーパースイーツなんかが入っている。
僕は1階へ続く階段を掛け下り、勝手口から本屋を出た。
──*──*──*── 商店街
本屋を出ると商店街だ。
本屋の近くにマオが贔屓にしているマックンナルドと言うハンバーガー屋がある。
僕はセロフィートとマオが居るだろうマックンナルドへ向かって走った。
──*──*──*── マックンナルド
マックンナルドへ入店した僕は、セロフィートとマオの姿を探す。
春舂霄囹
「 ──彼奴等、何処に座ってるんだ? 」
店内を見回しながら歩いていると、長身の白髪と低身の黒髪を見付けた。
人目の付かない奥のテーブル席に座ってバーガーを食べている。
バーガーを食べてるのはマオだけだがな!
口の周りをソースでベトベトにしてバーガーを頬張って食べているマオは子供そのものだと思った。
春舂霄囹
「 ──見付けたぞ!
セロフィート,マオ! 」
マオ
「 ──シュンシュン!
久し振りだな~~。
2ヵ月振りだったかな? 」
春舂霄囹
「 3週間振りだ、馬鹿が!
ガキじゃあるまいし、口の周りを拭けよ! 」
マオ
「 いきなり来て喧嘩腰はないだろ! 」
セロフィート
「 霄囹さん、マオとのデートを邪魔しないでください 」
春舂霄囹
「 何がデートだよ!
自分に似せた〈 器人形 〉に店を丸投げしてデートなんて経営者が聞いて呆れるな! 」
セロフィート
「 経営者とはそういうものです 」
春舂霄囹
「 嘘吐くなよ! 」
マオ
「 シュンシュン、立ってないで座れよ 」
セロフィート
「 ワタシがマオの隣に座ります 」
セロフィートは椅子から腰を浮かせて立ち上がると、マオの隣に座り直した。
僕はセロフィートが座っていた席に腰を下ろして座る。
マオの前に置かれているバーガーに手を伸ばし、紙を剥がす。
マオ
「 ──ちょっ、シュンシュン!
オレのバーガー! 」
春舂霄囹
「 ケチ臭い事、言うな!
馬鹿みたいにあるだろうが!
どうせセロフィートが支払うんだろ!
僕も腹が減ってるんだ、食わせろ! 」
セロフィート
「 それで──、態々マオとワタシのデートを邪魔する程の用でもあります? 」
春舂霄囹
「 トゲトゲしい言い方だな~~。
弓弦に聞いたぞ。
魔喰らいの弓はセロフィートが持ってるらしいじゃないか。
弓弦に返せ 」
セロフィート
「 はあ?
そんな事で来ました? 」
春舂霄囹
「 『 そんな事 』じゃない!
〈 器人形 〉に憑依している玄武は法力を使えないだろう!
化け物に襲われても法力が使えなければ身も守れないじゃないか!
せめて弓弦に魔喰らいの弓をだな── 」
セロフィート
「 それは出来ません 」
春舂霄囹
「 出来ない??
どうしてだ! 」
セロフィート
「 どうもこうもないです。
≪ 日本国 ≫では妖魔の類いの姿は見えません。
見える人間は少ないです。
何も居ない場所で弓弦さんが不気味な弓矢を射っていたら、御巡りさんに補導されるだけでは済みません。
事情聴取を受けて刑務所へ入れられます 」
春舂霄囹
「 はぁ?
弓弦は退魔師だろ!
弓使いの退魔師が弓矢を射って捕まるなんておかしいだろう! 」
セロフィート
「 弓弦さんは囲碁のプロ棋士になります。
≪ 日本国 ≫で必要な退魔師免許,ライセンスを持たない弓弦さんは魔喰らいの弓を所持する事は出来ません 」
春舂霄囹
「 僕はどうなんだよ!
陰陽師として活躍してるじゃないか! 」
セロフィート
「 霄囹さんには陰陽師免許,ライセンスを用意してます。
“ 陰陽師アイドル ” として売り出す時に必要でしたし 」
春舂霄囹
「 だったら!
弓弦のも用意しろよ! 」
セロフィート
「 弓弦さんはプロ棋士になるのですから必要ないです 」
春舂霄囹
「 融通の利かない奴だな!
魔喰らいの弓を使わなくても法力ぐらい使えるようにしてやれ! 」
セロフィート
「 霄囹さんは過保護ですね 」
春舂霄囹
「 違う!
僕は別に過保護じゃない!
玄武と弓弦が碁会所から化け物を連れて戻って来てたんだぞ!
法力を使えれば、途中で祓えたかも知れないだろう! 」
マオ
「 弓弦さんはさ、法力を使えなくても強いじゃんか。
玄武さんは〈 器人形 〉を依り代にしてるから、仮に妖魔の類いに襲われても平気じゃないのか? 」
春舂霄囹
「 マオ…お前は……暢気過ぎる…。
見えるだけじゃ身を守れないんだぞ!
米●町は物騒な町だ。
事件や事故が多いじゃないか!
多くの事件は人間が起こすが、事故の場合は大半が怪奇,心霊の類いが原因で起きているだろう!
せめて怪奇,心霊の類いが原因の事件,事故から身を守れるようにしてやれないのか──って言ってるんだ! 」
セロフィート
「 過保護ですね。
“ いざ ” という時には〈 器人形 〉が守ります 」
春舂霄囹
「 セロフィートぉ~~~~!!
こんのぉ、分からず屋がぁ!! 」
セロフィート
「 用が済んだなら帰ってくれません?
マオとスーパーへ寄り、買い物をしますから 」
マオ
「 スーパー?!
やったぁ!
コンビニスイーツが無くなりかけてたんだよ! 」
セロフィート
「 マオ、スーパーは逃げません。
急いで食べなくて良いです 」
セロフィートはソースでベトベトに汚れているマオの口元を清潔な布巾で拭いている。
チッ──、お母さんかよ。
僕は椅子から腰を浮かして立ち上がる。
僕は眼中に無いのか、セロフィートはマオしか見ていない。
春舂霄囹
「 デートとやらの邪魔をして悪かったな!
僕は帰るとするよ! 」
マオ
「 シュンシュン、気を付けてな 」
僕に声を掛けてくれたマオに手を振ると僕は、テーブル席を離れてマックンナルドを出た。
セロフィートは駄目だな。
話が通じない。
玄武と弓弦には僕の式神を護衛に付けてやるとするか。
気休めにしかならないだろうが、何も無いよりはマシだろう。
僕は【 セロカ君の本屋 】を目指して歩き出した。