⭕ リンフォン 11
キノコン
「 霄囹ちゃま、肉や臓器の類いは肥料や微生物の力で分解されて土に溶かす事は出来ますエリ。
人骨は簡単には土に溶けませんエリ。
数十年は掛かりますエリ。
どうやって短い期間で人骨を分解させて土に溶かせましたエリ? 」
霄囹
「 そんなの僕が知る訳ないだろ。
僕は陰陽師であって殺害犯じゃないんだぞ。
肉や臓器の類いが分解されて土に溶けた後、人骨だけは粉砕して土に混ざり易くしたんだろ?
花壇にバラ撒かれた粉末状の骨と一緒さ。
調べれば、もっと手っ取り早くて効率の良い方法もあるだろが、何せ経験の無いド素人のする事だ。
専門家のプロがする訳じゃないんだから、粗は多いだろうねぇ 」
キノコン
「 分解されて土に溶けてけてしまった死体を復元しちゃったら、警察署からバンバン依頼が舞い込んで来ちゃいますエリ 」
霄囹
「 警察からの依頼だろうと、マネージャーを通してもらうさ。
僕には直接、誰かの依頼を受ける権利なんて無いんだからな。
それに僕は本業と副業で多忙なんだ。
例え警察からの依頼でも本業と副業を蔑ろには出来やしないさ 」
キノコン
「 警察から依頼された事件を解決させたら、配信動画は益々バズりますエリ~~ 」
霄囹
「 僕の身体が持たないだろ!
リンフォンの宣伝も出来たし、今夜は部屋で寛ぐぞぉ~~ 」
キノコン
「 霄囹ちゃま~~。
ボクもリンフォンで遊んでみたいですエリ~~ 」
霄囹
「 良いぞ。
好きなだけ遊べば良いさ!
飽きたら僕に返すんだぞ。
コレクションに加えるんだからな! 」
キノコン
「 はいですエリ 」
僕はセロフィートから貰った土産のリンフォンをキノコンに手渡してやる。
キノコンは嬉しそうにリンフォンを崇めている。
霄囹
「 キノコン、宿泊室に着いてから好きなだけ眺めろよ。
リンフォンは逃げないんだからな 」
キノコン
「 はいですエリ♥️
セロフィート様と間接タッチしちゃってますエリぃ~~♥️♥️♥️ 」
霄囹
「 それは良かったな… 」
キノコンって奴は、どんだけセロフィートが好きなんだか。
──*──*──*── 宿泊室
宿泊旅館の若女将が新しく用意してくれた宿泊室に入る。
窓からは中庭が見える。
中庭は22時までライトアップされて、綺麗な中庭を眺めて楽しむ事が出来るみたいだ。
霄囹
「 良い部屋じゃないか。
若女将、奮発してくれたんだな 」
キノコン
「 霄囹ちゃまは、《 セロッタ商会 》の総帥・セロフィート様の異母弟として世間に知られてますエリ。
無下には扱わたりしませんエリ 」
霄囹
「 そっか。
異母弟でもセロフィートの恩恵を受けれる訳か 」
キノコン
「 霄囹ちゃまの個人スポンサーは《 セロッタ商会 》の総帥・セロフィート様、企業スポンサーは《 セロッタ商会 》ですエリ。
霄囹ちゃまの後ろにはBiGな相手が控えてますエリ。
《 セロッタ商会 》の力を持ってすれば、この旅館を閉館へ追い込む事は簡単ですエリ 」
霄囹
「 おぃおぃ、旅館を閉館させるだって?
穏やかじゃないねぇ 」
キノコン
「 セロフィート様なら、其処迄されますエリ。
家族として過ごしている霄囹ちゃまの為に、セロフィート様は行動されますエリ 」
霄囹
「 ………………庇護されている立場として、悪い事は出来ないって事か… 」
キノコン
「 霄囹ちゃま、悪い事したらセロフィート様に消されちゃいますエリ 」
霄囹
「 そうだな…。
僕は温泉に入って来るよ 」
キノコン
「 行ってらっしゃいませエリ!
霄囹ちゃまの警護に分身体を同伴させますエリ 」
霄囹
「 有り難な 」
お風呂セットを持った僕は宿泊室を出ると、キノコンが分裂した2体の分身体に警護されながら温泉へ向かった。
霄囹を宿泊室から送り出したキノコンは、霄囹から借りたリンフォンを取り出す。
キノコンは暫くの間、「 エリエリ 」と発しながら頻りにリンフォンを頬擦りした。
キノコン
「 ──セロフィート様と間接タッチぃエリ~~♥️
セロフィート様を感じるエリ~~♥️
リンフォンの動画を撮ってアップするエリ~~ 」
キノコンは体の中から撮影用カメラと自分用のスマホ出す。
撮影用カメラをテーブルの上にセットし、電源を入れるとスマホの電源も入(い《れて、テーブルの上に置く。
キノコンは器用にリンフォンを両手で持つと、リンフォンを触り始めた。
両手を高速で動かしている様子が、撮影用カメラに録画され続ける。
リンフォンが動物の形に変わって行く。
「 あっ! 」と言う間に熊が出来上がる。
熊が出来上がるとキノコンのスマホに着信が入る。
非通知からだ。
キノコンはスマホが鳴っても気にしない。
非通知から着信が掛かって来た様子を撮影用カメラに撮す。
キノコン
「 次は鷹を作るエリ! 」
キノコンは器用に素早く両手を動かし、リンフォンの形を変えて行く。
リンフォンは次第に鷹の形に近付いて行く。
リンフォンの形が鷹に近付く度にキノコンのスマホの着信が激しく鳴り響く。
着信元は “ 非通知 ” からではなく、“ 彼方 ” と表示されている。
キノコンは着信が鳴り続いても気にしない。
彼方から着信が掛かって来ているスマホの着信画面を撮影用カメラに撮す。
高速でリンフォンは完成して行く。
鷹が出来上がると、宿泊室の電気がパカパカし始める。
消えたり点いたりを繰り返している。
スマホの着信は止まっている。
キノコン
「 次は魚エリ! 」
高速でリンフォンを動かし続けるキノコンは怪奇現象を気にしない。
カシャカシャカシャカシャ──と音を出しながら、リンフォンは魚の形に変えて行く。
キノコン
「 魚──完成エリ!
次は最後の動物──麒麟さんエリ! 」
キノコンが魚を完成させると窓の外側に真っ赤な手跡がベタベタと付き始め、ドンドンドンドン──と外側から激しく窓が叩かれ始めた。
スマホの着信も鳴り始め、着信元は “ 彼方 ” から “ 永久 ” に変わっていた。
キノコン
「 もう直ぐ、麒麟さんが完成するエリ~~ 」
宿泊室の中はスマホの着信が鳴り響き、電気がパカパカしながら、窓が強く叩かれ、窓ガラスには真っ赤な手跡がベッタリと付いている中々にカオスな状況になっている。
リンフォンが首の長い麒麟の形に完成すると、室内の電気がパッと消える。
室内の中は撮影用カメラとスマホの明かりだけとなった。
キノコン
「 麒麟さんの完成エリ~~。
セロフィート様に見せたいエリ 」
スマホの撮影機能を使い、キノコンは完成したリンフォンの画像をパシャパシャと撮る。
あらゆる角度から画像を撮ったキノコンは、セノコンとマオキノのスマホへ画像を送信する。
自慢気なコメントを付けてだ。
以降、キノコン達の間でマオのリンフォンを使い、最後の動物を如何に早く完成させ、何処迄タイムを縮められるのか──。
という “ リンフォン高速完成 ” なる新たな遊びが広まり、キノコン達の間でブームとなった。
因みに霄囹がキノコンに貸したリンフォンは元の状態に戻され、無事に霄囹の手元へ戻った。
霄囹の自室にあるコレクション棚の中にリンフォンが入れられ、飾られる事になった。