第一章 1-9 「ごめんなさい」
俺は病室に戻った。
「すみません、落ち着きました。先程は助けてくれたのに酷いこと言ってごめんなさい。」
「構いませんよ。その気持ちがあるのなら十分です。」
ふとリリアンの手元を見ると、先程の女の子と同じような紋章の入った石が付いていた。
「リリアンさん、それって...」
「これは私のマギアです。属性は大地。主に植物を育てる能力です」
「マギアにも属性があるのですね」
庭にあった木々や畑はリリアンさんが育てたものだろうか。
「俺、魔物に襲われた時、王国フロートリアガーディアンの2人が助けてくれたんです。女性が呪文を唱えると辺りが炎に包まれて、魔物が次々と倒れていったんです。あればマギアを使った魔法ですよね」
「そうです。炎の魔術を操るのであれば、その女性魔術師はバレッタでしょう。」
「バレッタさんと言うのですね。
あと小柄な男性が俺と一緒に捕まっていた2人の手当をしてくれました。手をかざされて、傷が引いていったのが分かりました。あれも魔術ですか」
「そうですね、治癒魔術でしょう。生命力を活性化することができます。」
「俺、その人たちみたいに魔法が使えるようになりたいんです。強くなりたい。マギアを手に入れる方法を教えて貰えませんか。」
「辞めておいた方が良いと思いますよ、早死にします。」
リリアンは険しい顔をした。その瞳の奥では悲しみを感じる。
リリアンは俺のことを心配してくれているのだ。
元々傷跡もない、指先は綺麗で豆もない。異世界から来たという話は信じてないにせよ、死闘とはかけ離れた世界から来た事は察しているのだ。
だからこそ、力を持った時、過信した時、簡単に人が死ぬ事を知っているからこそ、辞めておいた方がいいと説得してくれているのだ。
リリアンの表情からは、そう受け取れた。
「...なら、俺の命を救ってくれたその2人にお礼したいです。会わせて貰えませんか?」
「....そうですね、彼らは忙しいと思いますが、聞いてみましょう」
「ありがとうございます。」