第一章 1-7 「マギア」
俺は病室を出てみた。
石畳みの廊下が続き、突き当たりに庭に出る扉があった。
庭は広く、庭全体を柵で囲われていた。
果物が成った木々が並び、花や野菜が成った畑があった。
病院自体は少し高台にあるらしく、下に多くの建物と人が行き交っているのが見えた。建物の様式はフィレンツェのそれに近い。赤いオレンジベースの石造だ。
異世界と言っても、街並みは元の世界とそこまで変わらないんだな...日本ではないけど。
右上を見ると、大きなお城が見えた。きっとあれが王様の住む城なのだと分かる。城壁がかなり高い。
これは異世界感が強い。こんな大きな城、見たことない。
「大きいお城でしょ?」
急に女の子が話しかけてきた。
小学生低学年くらいの歳の子だ。
「あたしも王様を守る騎士になりたいんだぁ」
「キミはなんで騎士になりたいの?」
「前にパパと魔物に襲われた時に、助けてくれたんだぁ。すごく強くて、かっこよかったの!
パパも魔術師なんだけど、全然倒せなくて、それでもあたしを守ってくれたんだけど、でも、フロートリアガーディアンの人があっという間に倒してくれたの!」
「そうなんだ。でもそのフロートリアガーディアンになったら魔物と戦わなきゃいけないんだよね。怖くないの...?」
「怖くないよ!あたしも強くなって、困っている人を助けたいの!」
「すごいね、僕には出来ないよ…」
こんな小さな女の子もあんな魔物と戦おうとしているんだ。一歩間違えたら殺されてしまうのに。
「おにいちゃんは、何に困ってるの?あたしが助けてあげる!」
困ってるか、、帰り方が分からないこと。この世界がわからないこと。そして、
「どうやったら強くなれるの?」
まずは、この世界で生きていく術を身につけないと。みんなを守るなんて、たいそうな事は出来ない。するつもりもない。
だけど、元の世界に戻る方法を探すには、この世界で生きぬいて、強くなるしかない!
「強くなりたいなら、マギアを鍛えないと!」
「マギア?」