第一章 1-2 「捕獲」
うわああああああ
気づいたら俺は走っていた。
後方から黒い巨大なモンスター、魔物が迫ってくる。黒光りした甲殻類、クワガタとカブトムシとゴキブリを合わせたような触角とツノ。大きさは人間くらいありそうだ。背中には2mを越えそうな大きな羽が高速で動いていた。近づくほど、羽音は煩くなる。
捕まったら喰われるのだと直感で悟っていた。逃げなければ。でもこのままでは追いつかれる!
えっと、どうすれば、、
乃木坂工事中で与田っちょがやっていた、イノシシを避ける方法で逃げてみる。
乃木オタだから偶にそういうネタを思い出してしまうのだ!許して。
敵の進行方向に対して直角に避ける。馬鹿なイノシシの場合は途中で進行方向を変えられない。その隙に逃げるんだ。あいつに有効か分からないが試してみる。
お、意外にいけるかも?
黒光りのモンスターは空中を旋回する為に大回りで動いている。あまり機動力は無さそうだ。
俺は運動神経は悪くない方だ!
しかし生命の弱肉強食の環を越えられる程は無い。
足元は自然の土、木々が邪魔をし、ツルのような草木。
陸上競技のような全速力は出せなかった。
そして、俺は魔物に捕らえられた。
宙を浮く。
俺は必死に抵抗する。
抜けられない!
魔物は俺を抱えてどんどん上空へ向かっていった。
下を見ると、かなり高い。
もう降りられない。
高いと思っていた木の上空を出る。
視界が開けた。
俺が居た場所はずっと森だった。森のど真ん中だ。
一瞬、遠くに僅かに開けた場所が見えた。
そのあと、魔物は再び下降していった。
魔物は巣に向かっていたのだ。
似たような魔物が20〜30匹ほど居た。
その中に1匹だけ他の魔物より1回り大きい奴がいた。あいつがボスだろう。
その巣には、粘液に塗れた他の人間も居た。
きっと同じように捕らえられたのだろう。
身体中が傷だらけで血溜まりが出来ている。。
脚の向きもおかしい。。
中には骨だけになっている人もいる。
恐怖と嫌悪感を感じた。
やっぱり、俺は殺されて食べられるんだ。
現実感が無くなる。そんな馬鹿な。
走馬灯が巡った。