第一章 1-10 「フロートリアの墓場」
7人の命を失った。
目の前で、救えたかもしれない2人の命を失った。
「間に合わなくて、すまない」
バレッタは名前のない墓石の前で手を合わせていた。
そして花を添えた。フロートリアの国花であるホワイトローゼという白い薔薇だ。
フロートリアでは死者にホワイトローゼを捧げる。フロートリアは草木、花に囲まれた自然豊かな土地である。逞しく生きた魂をホワイトローゼに乗せて、国に還帰り新たな命となるために行う儀式だ。
バレッタの周りには数えきれない墓石が置かれていた。
「やっぱりここに居たのね」
後ろから声が聞こえてくる。
「....リリアンか」
バレッタの隣にリリアンが並んだ。
同じように手を合わせ、ホワイトローゼを捧げる。
「....7人の命を失った。」
「気を落とさないで。救えた命もあるじゃない。」
救えた命か。
今回の遠征で若者を1人救えた。傷は浅く、命に別状は無かっただろう。だだ、混乱しているようで会話がほとんど出来ない状態だった。
「そうだな、あいつは目を覚ましたか?」
「ええ、はじめは動揺していたけれど、今はだいぶ落ち着いたみたい」
「そうか。助けた時から混乱しているようだった。目の前で、経験したことのない残虐な光景を見たのかもな」
「そうだったのね。可愛そうに。彼、かなり混乱していたわ。記憶が曖昧でフロートリアもマギアを知らないし、異世界から来たなんて言い始めて...」
「....異世界?」
「そう、混乱しているだけかと思うけど、地球とか日本とか言っていたわね。あ、お礼をしたいから会いたいって話していたけど、どうかしら?忙しいならそう伝えるけど」
地球、日本、、この単語、、まさか!
たしかに、あいつの格好は異様だった。服装も瞳の色も肌の質感もフロートリアの人間ではない。そして、私が知る限り、この世界の特徴とも一致しない。
まさか、本当に?
「....あいつは、危険かもしれない。
今すぐ捕らえるぞ」