表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

99/207

第92羽 闘気燃焼

ブクマと評価、いいねありがとうございます!

 


 お母様の様子が変わりないことをチラリと確認して、遙か下方の地面に墜落していったドゥークを追うために翼を広げる。


 数多のエネルギーを種火の闘気に()べる事で転換、増加させる(わざ)、名は『闘気燃焼(エンコード)』。闘気の出力が爆発的に増えることは言うまでもないが、最低限の種火さえ維持できればひたすら増産出来るため、生命力の消耗が抑えられることが大きい。火力と持久力を両立できる強力な(わざ)です。

 弱点は混ぜ物をするために闘気の純度が下がることでしょうか。まあそれも『空の息吹』のおかげで魔素の割合が増えているので補えるレベルです。


 『闘気燃焼(エンコード)』のおかげで有り余る闘気を注ぎ込んで『氣装纏鎧(エンスタフト)』をさらに強化。翼で力強く空気を叩けば、その場から姿がかき消える。


「クソッ!! (いて)ェな!!」


「随分悠長ですね?」


「なッ!?」


 次の瞬間には起き上がって呻いていたドゥークの眼前に着地。

氣装纏武(エンハンスメント)』が常時発動した『無明金剛(シラズガナ)』エッジの部分で、驚いた表情のドゥークの横顔を強かに打ち付け、再び地面と熱い抱擁を交わさせた。


 戦撃なしだと打撃の方が有効ですね。

 ドゥークはすぐさま飛び起きて手を突き出し、不可視の攻撃を飛ばしてくる。まだまだ元気な様子。……よく見ればさっき付けた腹と脇腹の傷が塞がっている。

 再生能力でしょうか?硬い上に再生持ちなんて面倒ですね……。


 ……うん?……回避して受け流す上に再生持ち? なんの話ですか?


「死に晒せクソガキ!!」


「それはもう何度も見ました」


無明金剛(シラズガナ)』に生み出された斧の部分を虚空に向けて振り下ろせば、見えない何かを切り裂きかき消した。


「ンだと!? まさか見えるのか!?」


「いいえ。でも見えなくとも予測はできますよ?」


 不可視の攻撃は、腕を伸ばしてからその直線上に着弾する。着弾までの時間を計る機会は何度もあったので、攻撃の正確な速度を割り出すことが出来ました。

 軌道は直線で、速度は割れている。なら例え見えなかろうと対処するのは容易い。


「そんなもン、簡単にできてたまるか……!!」


「経験の成せる技です」


「ガキのクセに……!!」


 苛立ちを隠すことなく腕を突き出すドゥーク。連続で発射される不可視の攻撃を回り込みながら回避していく。


 攻撃の正体は衝撃波、正確には圧力でしょうか?

 ドゥークが切っていた大枝の切断面が押し広げられ、裂けるようになっていました。不可視の攻撃の着弾面も押しつぶされたようなもの。


 大剣に纏わされた圧力はぶつかった対象に大きな衝撃を与え、少しでも刃が食い込めばそこから切断面を押し広げていく。シンプルですがパワーでひたすら圧倒する、防ぎにくい強力な能力です。


 ですが私の『無明金剛(シラズガナ)』の前には敵ではありません。多少手は痺れますが、『氣装纏鎧(エンスタフト)』の強化で力負けはもうなく、武器が壊されることを気にする必要も無い。


 ソウルボードに『普人種』が復活したことで私自身の力も格段に上昇しています。技では元々勝っていました。このまま押し込みます。


 距離が近くなったところで攻勢に移る。

 不可視の攻撃を叩き切り、一気に肉薄。そこでドゥークが大剣を地面に突き刺し圧力を解放することで、砂埃を巻き上げた。


「なッ!?」


「これで見えねェだろ!!」


 ……へえ、目つぶしですか。今まで使ってこなかった手です。侮りを捨てたのでしょうか。しかし私には『空間把握』があります。


「見えなくても問題ありません」


 攻撃の軌道を感知。砂埃の中正確に振り下ろされた大剣を全身のバネを使い、力任せにカチあげる。どうやらドゥークにも見えていたようですね。


「くそがッ!!」


「【炸乱莫(さくらんぼ)】」


 吠えるドゥークに踏み込んで始動の方手突き。左右に2連続で薙ぎ払い、頭上から力強く叩きつけた。地面すれすれから両手で突きあげる。体が浮いたところにゴルフようなのフルスイングで吹き飛ばした。受け身も取れずに幾つも木々をなぎ倒して進んでいく。自然破壊もするなんて、さすがコアイマですね……。


「ぐう!? さっきからポンポンポンポン吹き飛ばしやがって……!!俺はお手玉じゃねェんだぞ!! それに自然をぶっ壊してんのはお前だろうがッ!!」


「うるさいですね……。【是空(ぜくう)】」


「!!?」


 ドゥークの体のど真ん中に『急降下』を併用した突きが叩き込まれる。ほぼ同時に顔面、右手、左手、右足、左足にも突きの衝撃が襲いかかった。

 超高速の同時六連突き。難易度も高く、闘気の消費も大きい。


 たまらずドゥークはお手玉のように吹っ飛んでいった。かなりのダメージを与えた手応えはありましたが、致命傷までには至っていません。硬さと再生力のせいで連撃では致命傷にはなりにくいと考え、単発の攻撃とほぼ変わらない【是空(ぜくう)】を選びましたが、もっと威力が必要なようですね。

 ならば……。



 ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ 



 地面を転がりながら木々をへし折り、ようやく起き上がったドゥークは追撃に備えて辺りを警戒する。そのまま数秒の時間が流れた。近くに何かが居る気配はない。


「来ねェのか……? クソッ!!」


 時間が出来れば考えるのは天帝の子供についてだった。


 最初は眼中にも無かった。弱体化した天帝のおまけ程度にしか考えていなかった。それが実際に戦ってみるとどうだ?


 技術では完全に負けていた。単純なスペックでゴリ押ししていたが、それも先ほど覆された。ガキといえども天帝の血を引くと言うことか……。


 だが、引くわけにはいかない。ここには仲間にも伝えず勝手に来ている。成果も出せずに逃げ帰ったなどと知られれば、どんな目を向けられるか……。


 ――――ブウゥゥゥゥゥゥン……。


 だが、天帝は傷ついている。折角のチャンスだ。クソガキさえ突破できれば天帝を殺せる……。そうすれば目的のものも手に入り、祈願成就につながる。あと一歩、後一歩なんだ。


 ――――ブウゥゥゥゥゥゥン……。


「うるせえな!人が真剣に考えて……。なンだ……こりゃ……」


 邪魔な音に釣られて上空を見上げれば、雲の下で巨大な蒼い何かがゆっくりと回転している。

 あれは……巨大な槍か? 槍が回転しているのか……?それに回転はゆっくりじゃ無い。そう見えているだけで、よく見れば信じられないほど高速で回転しているのがわかる。


 あれはあのガキの力なのか?でかすぎる……!!


 ――――ヒイィィィィィィン……。


 上空から聞こえる音が高くなった。回転速度がさらに上がったのだ。それに呼応して風が集まってきている。まるでサイクロンだ。ここからでも空気が引き寄せられているのがわかる。

 あんなの食らえばひとたまりも無い。体がいくら頑丈だといえど、耐えられはしない。


 こんなの、どうやって防げば……!!


 巨大な蒼のサイクロンが落下を開始。こちらに迫ってくる。呆然と見上げることしか出来ない。


 範囲が広すぎて逃げることなど不可能。まだ終われないねェのに……!!


「くそがァッ!!」



 ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □



 ドゥークを一撃で仕留めるため、大技の準備をする。そのため、大樹よりも上空に飛び上がった。

 眼下を見下ろせばドゥーク発見する。鳥の目はよく見えますね。『無明金剛(シラズガナ)』の蒼刃を引っ込め、一旦ただの棒に戻す。横に持って握りしめ。


「《緑陣:付加(ふか)》+《紫陣:連星》」


 五つに増えた魔術陣が一つに重なり、巨大な魔術陣を作り上げる。


「《緑嵐陣:呼応(こおう)》」


 風の力をまとった『無明金剛(シラズガナ)』。蒼刃をもう一度引き出せば、風の力が一層強化される。それを頭上に持って行き、回転。速度を上げていけば、風が呼び水となりさらに風の力が高まっていく。

 風は成長を続け、『無明金剛(シラズガナ)』に送り込まれていた莫大な闘気を解放すれば、上空に巨大な斧槍が出現した。風の力も比例するように大きくなり、もはやこれは天災のレベル。

 お母様と戦ったときの物より、二回りは大きい。


 周囲を警戒していたドゥークが流石にこちらに気づくがもう遅い。


「これで終わりです……!!【(ラン)――――】」


 蒼のサイクロンを背後に携え、ドゥークに向けて落下していく。逃がしはしない……!!

 渾身の力を込めて『無明金剛(シラズガナ)』を突きだした。


「【統槍(スロット)】ォッ!!!!!」


 風と同化した巨大な闘気の槍が伸びていく。迫る地上は闘気の蒼に染め上げられた。


 その範囲は極大。威力は絶大。逃れられるものなどなし。


「くそがァッ!!」


 吠えたドゥークが大剣を突き出す。全力の圧力がのったコアイマの一撃。込められた力は大剣の周囲の景色が歪んで見えるほど。

 だが天災の前には全てが小さすぎた。


「はあ……ッ!!はあ……ッ!!」


氣装纏武(エンハンスメント)』が解けた『無明金剛(シラズガナ)』を落とさないようにぶら下げ、肩で息をする。


 抗うことも逃げることも出来ずにドゥークはサイクロンに飲み込まれた。


 地上はむき出しの地面が見えるだけ。


 動く物はない。私の勝ちです。

 お母様の元に帰りましょう……。




人化は元々『普人種』解放のタイミングと被せるつもりだったんですが、今では北大陸で人化して良かったと思ってます。ここまで長過ぎ……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ