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第85羽 vs天帝 その4 

すみません。とある理由でサボってました。

お詫びと言ってはなんですが、もう一つ出します。一時間後の予定です。

それではご照覧あれ。

 

 この際太陽光は無視します。

 隕石が落ちた場所の雲が消えて差し込んだ光です。光の量は少なく、雲の穴は蠢くようにしてすぐに塞がれる。お母様の力の影響でしょう。

 日が当たった場所がヒリヒリと痛みますがかなりひど目の日焼けみたいなもの。これくらい我慢です!!


 それよりも降りそそぐ隕石の対処をしなければ……!!


 残念なことに私の闘気では隕石は消せません。厳密には魔法としての効果は消せますが、熱々の岩が飛来する速度そのまま残ってしまいます。

 つまり小細工なしで避けるか破壊しなければ、隕石によって地面に挟まれササミサンドができあがるわけです。もちろん私は嫌です。


 ササミサンドにならない為にも翼をたわませ、空気を思いっきり叩く。あっという間に眼前まで迫ったいた最初の隕石。それを得られた推進力で急加速して回避した。

 次の隕石に目を向けつつ今避けた隕石の軌道について考えを巡らせる。

 今の……いやらしくジリジリと追尾(ホーミング)してきました。


 どうやらこれもお母様の羽の影響か軌道を変化できるようですね。避けた隕石は反転できずそのまま落ちて行って地面で巨大土煙を上げていたので水羽砲弾ほどの追尾性はないようですが安心はできません。まだまだ空には雨の如く存在しているのですから……!!


 微妙に軌道を変更しつつ迫り来る数多の隕石群の中を、熱気を帯びた体で全速力で飛翔する。

氣装纏鎧(エンスタフト)』はフル稼働。強化なくしては高速で飛来するこの隕石は回避できません。『風靡』、『強風の力』の力も使い飛行の挙動をもっとアクロバティックに。ソウルボードにセットした『吸血鬼』の能力、『空間把握』も補助に回して、私が抜けられる道なき道を見つけ出す。


 それだけやっても隕石群をかいくぐるので精一杯。まるで水羽砲弾の時の焼き増しの様にお母様に近づくことができない……!!


 呼気から熱を引きずって縦横無尽に大空を飛び回る。

 頬は紅くなり体から湯気が登っている。魔物の体だからこそまだ動けていますが、人の身だったらもう倒れているであろう熱量。魔物の体に感謝ですね。


 熱のせいか、状況のせいか、その両方か時間が引きのばされた様に感じる。左右から同時に飛来した隕石を、急制動を掛けることでフェイントし衝突させて、できたその隙間に体をねじ込むことで突破。速度の低下で前進を断念。一旦軌道を左右に振って回避に努める。


 足りない……!!全然ダメです……!!

 お母様の足下にも及んでいない。私は強くないといけないのに……!!


 お母様に本物の娘だと認めて貰わないといけないのに……!!

 私のことを強いと言ってくれたフレイさんの言葉に恥じないような姿でないといけないのに……!!

 アモーレちゃんの手を引いて飛び出せるような覚悟を持ってないといけないのに……!!


 朦朧とした意識のせいか定まらない思考がつらつらとあふれ出す。


 だからでしょうか。夢見心地な思考の中、半ば自動的に判断を下していた進行経路を選択ミスしてしまったのは。


「あ……」


 気づいた時には既に回避は不可能だった。

 あと二回ほど使える多重陣魔術は悠長に準備している時間なんてない。通常の魔術では焼け石に水。

 戦撃も今から発動が間に合うものではしのぎ切れない。


 これをまともに食らっても吸血鬼の『高速再生』で立て直せるだろうか。時間が引き延ばされゆっくりとした全てがスローに見える中、様々な可能性を思い浮かべて行くも必ず行き止まりにたどり着く。


 詰んだ。そう思った時、さっきのお母様の言葉がフラッシュバックする。


 ―――そのまま逃げ続けるのか?


 その言葉が脳裏に浮かんだ瞬間、体とは正反対に冷え切っていた思考に熱が宿る。また、私は諦めるところでした。


 アモーレちゃんを連れ出せない自分の弱さが嫌だったのに。フレイさんに誇れない自分が嫌だったのに。まだお母様に認めて貰っていないのに。


 また、諦めるところだった。


 私はまだ生きている。なら―――諦めるには早すぎる。諦めるのは死んでからでも遅くはない。


 空を全て吸い込むほどの勢いで口を開く。生み出した闘気と熱で空間が歪んで見える。


 体の中心が赤熱するような感覚を覚えた。熱が邪魔をする。


 だから……なに……? 動けッ!! 私の体……!! こんなところで立ち止まる訳にはいかないんですよ……!!


 熱に浮かされたような感覚の中気づけば私は鳥の姿に戻っていた。なぜそうしたのかはわからない。ただ、わかるのはこれが必要な事だということ。


 体の中心が赤熱する。熱くて熱くてしょうがない。だからその熱を――――解き放った。


『【崩鬼星(ほうきぼし)】!!!!!!!』


 鬼気をまとった大彗星の一撃が眼前の隕石を悉く打ち砕き、無に帰していく。

 今までの私ではなしえなかった威力。その威力に驚きながらもどこか冷静に観察している自分がいた。

 不思議と熱にうなされるような感覚はもうない。


『お前、戦闘中に進化したのか……!!まさか踏破越到(リープオーバー)できるほどだとは……!!』


『進化? リープオーバー?』


 お母様の言っていることは良くわかりませんでしたけど、自分の体を見下ろせばいつの間にか進化をしていたことはわかりました。

 蒼い色はそのまま、体はまた少しだけ大きくなっているようです。

 なんと言っても特徴的なのは私の肩辺りから後ろに向けて伸びている二つの何か。これは……どうやら体内の余剰な熱を排出しているようですね。見た目はまるでバイクのマフラーのよう。

 私の熱が邪魔だという思いからこんな物ができてしまったのでしょうか。飛ぶとき邪魔そうなのですが……。体はかなり楽になりましたが。


 そして変化は外見だけではありません。体の中心にある赤熱するような感覚、それが残っています。悪いものではなく、逆に私の助けになってくれそうなものです。まるで炉心のように闘気の生成をサポートしてくれています。

 これまでの人生のどれでも感じたことがないほど素早く、多く、質の良い闘気を作り出せる。闘気を作ることに特化した臓器のようなもの。それが私の体の中に新しく生まれていた。


 次の手を打つために人化をすればこちらにも変化が。

 少しだけ体が大きくなっていたこととそれ以外の変化は一つだけ。


 首に羽毛のマフラーがくるりと巻かれたていたこと。

 かなり長めのマフラーで首で幾重にも巻かれた後、両端が背中側の腰辺りまで伸びて風にたなびいている。中が空洞になっていてそこを熱が通っていく感覚があります。


 どういう原理かはわかりませんがこれが鳥の姿の時に肩辺りから出ていた排熱機構なのでしょう。このマフラー、取り外し可能なのにどうやって体内から排熱しているのでしょうか……。


 自分にさえわからない不可解なことは一旦置いておけば、体調はびっくりするほど快適です。

 色々と楽になりすぎて、逆に今までが酷くキツい枷を着けられていたように感じます。

 これがリープオーバーなのでしょうか?

 良くわかりませんがわかるのは――――これなら行けそうだということだけ。


 一瞬の自己確認を終え、【崩鬼星(ほうきぼし)】で消せなかった迫り来る隕石群に手札を切ることに決めた。



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